東京科学大学とケミカルルーピング方式CO2還元反応モデルを構築し高速化に成功
CO2の資源化に向け、高効率なCCUシステムの社会実装に貢献

三菱電機株式会社は、国立大学法人東京科学大学(以下、Science Tokyo)環境・社会理工学院 融合理工学系 エネルギー・情報コース 大友 順一郎教授らと共同で、ケミカルルーピング方式におけるCO2還元反応モデルを構築し、反応の高速化に成功しました。ケミカルルーピング方式とは、酸素キャリア(※1)を介して二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に変換する還元(※2)反応と酸化反応を別々に繰り返し行う方式です。当社はScience Tokyoとともに、今回の成果を活用し、CO2を循環利用できる資源へと転換する、高効率なカーボンリサイクルを目指します。
近年、政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言の実現に向け、CO2を排出削減の対象とするだけでなく、回収して資源として再利用するCCU(※3)技術への期待が高まっています。このような中、当社とScience TokyoはCCUシステムの構築を目指し、2025年2月からケミカルルーピング方式によるCO2還元技術の実証試験(※4)を進めてきました。同方式では、酸素キャリア粒子に含まれる鉄などの金属がCO2と接触した際、酸素(O)を粒子中に取り込むことで、CO2をCOに還元します。しかし、従来の同方式では鉄などの金属表面が酸化して活性が低下することでCO2還元反応速度が遅くなるため、レアアースなどの高価な重要鉱物を担体(※5)に添加して反応速度の低下を補っていました。また、レアアースなどの使用がコスト増加や資源調達における地政学リスクにつながり、CCUシステムの社会実装を妨げる要因となっていました。
この課題に対して、当社とScience Tokyoは反応金属そのものではなく、担体が反応にどう関与するかに着目しました。Science Tokyoが保有する材料科学の知見を活用することで、イオンと電子の両方を運べる性質を持つ鉄置換チタン酸カルシウム(CTFO)を担体として適用した反応モデルを構築し、レアアースなどの重要鉱物を添加しなくても、反応温度800℃においてCO2還元反応速度を従来比1.8倍に向上させることに成功しました。高い反応速度は、単位時間あたりのCO2処理能力の増加につながるため、装置の小型化や設備コストの低減、運転効率の向上が期待できます。また、レアアースなど重要鉱物に依存しない材料設計は、コストだけでなく、資源による制約や地政学リスクの低減にもつながります。
当社は、Science Tokyoとともに今回の成果を活用してケミカルルーピング方式によるCO2還元などのCO2資源化技術の実証と改良を進め、エネルギー効率や時間当たりのCO2処理量などを反映した設計により、環境負荷が低く高効率なCCUシステムの社会実装を目指します。
なお、本成果は、論文誌「Chemical Engineering Journal」にオンラインにて先行公開され6月15日付のVolume 538に掲載予定です。
■開発の特長
1.鉄の担体にCTFOを適用し、酸素キャリアを介したCO2還元反応モデルを構築
・材料科学の知見に基づきCTFOに着目し、イオンと電子の両方を運べる性質を持つCTFOを鉄の担体として用いることで、担体内部の酸素空孔および電子の移動により、鉄・担体・CO2が接する三相界面でCO2から解離した酸素が酸素空孔へ移動する反応モデルを構築
2.レアアースなど重要鉱物を使用せず、CO2還元反応の高速化に成功
・CTFO中の鉄の組成比を制御することにより担体中の酸素空孔と電子濃度が増加し、高速にCO2をCOに還元
・レアアースであるイットリウムを用いた場合に比べて、反応温度800℃においてCO2還元反応速度が従来比1.8倍に向上
3.高い経済性と持続可能性を両立した高効率なCCUシステム構築の実現に寄与
・反応速度向上により反応ガスがCO2還元反応器を通過する時間を約半分に短縮できるため、装置の小型化や設備コストの低減に貢献
・反応モデルを応用することでCO2還元に限らず、メタノールなどの化学品・燃料生成など多様なCO2資源化システムに適用
・地政学リスクを伴う重要鉱物を使用しないことで、安価で安定した材料調達が可能。これらにより高い経済性と、製造・運用・廃棄に至るライフサイクル全体での環境負荷を低く抑え、持続可能で高効率なCCUシステム構築の実現に寄与

CTFO:鉄置換チタン酸カルシウム(開発品)
YSZ:イットリア安定化ジルコニア
(比較対象、イットリウムがレアアース)
CTO:チタン酸カルシウム(比較対象、鉄置換なし)
α-Al2O3:アルミナ(比較対象、絶縁体)

■今後の予定・将来展望
三菱電機とScience Tokyoは、実証試験を通して社会実装に向けた課題を明らかにするとともに、反応器の開発および酸素キャリア粒子のさらなる高性能化や大量合成技術を確立しつつ、メタノールなどの化学品や燃料生成などCO2の資源化に向けて他者との連携・共創に取り組みます。
これにより、CO2の回収から利用まで一貫して実現する高効率なCCUシステムを構築し、2029年度以降の社会実装を目指します。
■役割分担

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組織名称 |
担当内容 |
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三菱電機 |
CO2還元反応器(※6)の設計開発 |
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Science Tokyo |
CO2還元の原理検証、酸素キャリア粒子合成技術開発 |
■三菱電機グループについて
三菱電機グループは、「Our Philosophy」のもと、サステナビリティを経営の根幹に据え、社会・顧客・株主・従業員をはじめとしたステークホルダーからの信頼を重んじてまいります。また、「収益性」「資本効率」「成長性」を追求するとともに、顧客と繋がり続けて社会課題を解決する新たな価値を創出し、企業価値の持続的向上を図ります。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2025年度の連結売上高は5兆8,947億円でした。詳細は、オフィシャルウェブサイトをご覧ください。
※1 酸素を運ぶための媒体となる物質
※2 物質から酸素が奪われる化学反応
※3 Carbon dioxide Capture and Utilization。工場などから排出されたCO₂を回収して、燃料や化学品、建材などの製造に利用すること
※4 2025年2月19日広報発表 https://www.MitsubishiElectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/0219.pdf
※5 反応を助ける金属などの活性物質を均一に広げて、他の物質を固定する土台となる物質
※6 効率的かつ連続的な CO生成を可能にするためのガスの切り替えや、酸素キャリア粒子の温度制御を行うシステム
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
〒661-8661 兵庫県尼崎市塚口本町八丁目1番1号
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