ナウル共和国:活動停止命令に強く抗議ーー難民の即時退避を要求
国境なき医師団(MSF) は、10月5日にナウル共和国(以下「ナウル」)政府が突如下した活動停止命令に、強く抗議している。
太平洋南西部に位置するナウルには、115人の子どもを含む約900人の庇護希望者と難民が5年以上も勾留され、事態に進展や永住の見通しのないまま今日に至っている。MSFは、2017年11月から庇護希望者や難民、地元住民を対象に心理ケアと精神科診療を無償で担ってきた。ナウル政府は5日、MSFに対し、もはや診療の必要性はないとして24時間内の活動停止を命令。MSFは、難民の心の健康状態は絶望的な状況にあるとし、庇護希望者と難民全員を島から即時退避させるとともに、オーストラリア政府の国外勾留政策に終止符を打つよう求めている。
78人の患者、自殺願望や自傷行為を試みた経験
MSFは、過去11ヵ月にわたって数十人の患者を診療し、容態を安定させるよう治療を行ってきた。MSFの精神科医、ベス・オコーナー医師は、「ここ11ヵ月で私は、信じがたいほど多くの自殺未遂と自傷行為を目にしてきました。患者は、無期限で拘束されている自分たちの状況について、監獄にいるより、ずっとひどいと話しています」
MSFの診療を受けた患者のうち、少なくとも78人には自殺願望や自傷行為があったことが判明。実際に9歳の子どもが、ナウルで希望もないまま生きるより死んだほうがましだとMSFスタッフに語っている。
オコーナー医師は、「MSFでは、難民から庇護希望者、男性、女性、子どもたちまで診療しています。特にショックを受けたのは、大勢の子どもが心の傷によって退行症状を起こしていたことでした。ひどい場合は、食べたり飲んだりするどころか、トイレまで歩いていくことさえできなくなっていました」と話す。
オーストラリア政府は今すぐ国外勾留の中止を
MSFは、ナウルからの撤退により、命を落とす人も出るのではないかと懸念している。オーストラリア政府の政策は、難民の無期限国外勾留である。このため、ナウルの拘留者は困難な事態から立ち直る力と、安全な生活への全ての望みを絶たれている。
MSFオーストラリアの事務局長、ポール・マクファンは「期限を定めず、この島に希望も保護もないまま拘束し、唯一の例外は救急医療が必要なときだけというのは、残酷で、非人間的な扱いです。オーストラリア政府は国外勾留を“人道的な政策”と評していますが、ナウルという野外の監獄に閉じ込めたまま放置する政策は、人道的なものではありません」と述べている。
「こうした政策はすぐにやめるべきであり、いかなる政府によっても繰り返されるべきではありません。ナウルを去るべきなのは、MSFの精神科医や心理療法士ではなく、過去5年間身柄を拘束されていた、数百人もの庇護希望者と難民です」と訴えている。
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