日経「星新一賞」グランプリに「リンネウス」など3作
AIを利用した作品が初入選
理系的発想力を問う文学賞、日経「星新一賞」(主催:日本経済新聞社)の第9回受賞者13名が決定しました。グランプリには一般部門に関元聡氏の「リンネウス」、ジュニア部門に「カーテンコール」、学生部門に紺せまる氏「Love is free」が選ばれました。人工知能(AI)を一部利用した作品が初めて入選しました。今回は2021年6月1日から9月30日まで応募を受け付け、応募作品の総数は第8回の2,339より264編多い2,603編でした。AIによる創作と認められた作品は前回の14から114編に増えました。
一般部門のグランプリは賞金100万円。受賞作は2月下旬以降、電子版書籍サイト「honto」で配信予定です。(無料。利用登録が必要)
AIを使って一般部門優秀賞(図書カード賞)に入選したのは、葦沢かもめ氏の「あなたはそこにいますか?」です。作家であるAIの文章を校正するアルバイトの大学生が、AIへ送るテキストに質問を書き込む実験をして、AIには意識がないと確信。作家には意識が大事であると思い至るという内容です。
【一般部門グランプリ】
関元聡(せきもと・さとし)氏 「リンネウス」
〔あらすじ〕炭素原子に偽装したナノサイズの生態系探査機を使い、食物連鎖を通じてあらゆる生物の遺伝子を調査するプロジェクト――リンネウス計画。人工炭素の中で意識体として世界中を旅してきた俺は、ある日絶滅したニホンオオカミの体の一部となる。死期を察して山を登るオオカミは苦難の果てにとある巨木に出会い、そこで息絶える。木の中を通って果実となった俺はやがて宇宙へ旅立ち、その途中でかつて自分が何者であったかを思い出す。
【ジュニア部門グランプリ】
小林宗太(こばやし・そうた)氏 「カーテンコール」
〔あらすじ〕帰り道にそうぐうしたのは、弱った宇宙人だった。はだも内ぞうもスケて見えるスケスケ宇宙人だ。スケスケ宇宙人を保護したぼくは、地球観光を案内して回る。地球を観光しつくした宇宙人が思ったこと、おみやげに地球から持ち帰ったものとは……。
【学生部門グランプリ】
紺せまる(こんせまる)氏 「Love is free」
〔あらすじ〕同性婚が認められたことがきっかけで、恋愛至上主義に近い価値観が蔓延するようになった日本では、恋愛専用アンドロイド「PURE」が人気を博している。大学生の園子も「PURE」を購入した一人だったが、彼女の目的は恋愛をすることではなく、「恋愛をしない」ことだった。恋愛をしない園子と、恋愛をするためだけに生まれたアンドロイドのヨシヒコ。世間から見ればちぐはぐな関係の二人は、やがて既存の言葉に当てはまらない自分たちだけの関係性を見つけていく。
【一般部門優秀賞(東京エレクトロン賞)】武藤大貴(むとう・だいき)氏 「思い出は残り香に」
【一般部門優秀賞(アマダ賞)】Mouki(モウキ)氏 「味覚転送システムの未来について」
【一般部門優秀賞(旭化成ホームズ賞)】中村有理(なかむら・ゆうり)氏 「問われている。」
【一般部門優秀賞(図書カード賞)】葦沢かもめ(あしざわ・かもめ)氏 「あなたはそこにいますか?」
【ジュニア部門準グランプリ】中西俊介(なかにし・しゅんすけ)氏「紅(くれない)の追憶」
【ジュニア部門優秀賞】萩原杏奈(はぎはら・あんな)氏「二人は幼なじみだった」
【ジュニア部門優秀賞】髙向剛志(たかむく・つよし)氏「記憶」
【ジュニア部門優秀賞】宮尾昌志(みやお・まさし)氏「lost memory」
【学生部門準グランプリ】滝澤諒(たきざわ・りょう)氏「静けさや」
【学生部門優秀賞】中川朝子(なかがわ・あさこ)氏「マイコ」
【日経「星新一賞」について】
星新一氏が残した創造性あふれる作品は、現実の世界で科学に取り組む人たち、未来を創ろうとしている人たちを刺激してきました。日経「星新一賞」は形式やジャンルにとらわれない理系的な発想力、想像力を問う新しい文学賞として2013年に創設。SF作家・SF評論家による複数の予後審査の後、最終審査を経て、このたび受賞者を決定しました。第9回の最終審査員はヤマザキマリ氏(漫画家・随筆家)、梶尾真治氏(作家)、佐野幸恵氏(筑波大学 システム情報系 社会工学域 助教)、沖大幹氏(東京大学 総長特別参与・教授)、ムロツヨシ氏(俳優)、滝順一(日本経済新聞社編集委員)の6人。
※詳細は日経「星新一賞」公式ウェブサイト https://hoshiaward.nikkei.co.jp/
※第1回~8回受賞作品集も「honto」で無料配信中(利用登録が必要)
日本経済新聞社について
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