2022年度の賃金動向、企業の54.6%で賃金改善を見込む 総人件費の「増加」を見込む企業は67.1%と前年から大幅増
2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査
厚生労働省が2月8日に発表した毎月勤労統計調査(令和3年分結果速報)によると、名目賃金にあたる平均現金給与総額は、前年比0.3%増と3年ぶりに増加に転じた。一方、原材料価格や原油の高騰が続くなか、物価変動の影響を取り除いて算出される実質賃金は前年から横ばいとなった。そうしたなか、1月17日の施政方針演説において岸田首相が賃上げなど人への投資の重要性を訴え、また政府は賃上げ促進税制で賃上げをバックアップする方針を示している。
そこで帝国データバンクは2022年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年1月調査とともに行った。
そこで帝国データバンクは2022年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年1月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
■本調査おける全国版データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している。
2022 年度、企業の 54.6%で賃金改善を見込む。ベースアップは過去最高の水準に
賃金改善の状況について企業規模別にみると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模全てで、前回調査の2021年度見込みから賃金改善見込みの割合が上昇していた。また、業界別にみると、『製造』(59.7%)が最も高く、『建設』(57.2%)や『サービス』(54.0%)が続いている。
賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が 46.4%(前年比 10.5 ポイント増)、「賞与(一時金)」が 27.7%(同 7.4 ポイント増)となり、それぞれ増加した。「ベースアップ」は 2019 年度の 45.6%を上回り、調査開始以降で最高の水準となった。
賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が最多。一方、原材料の高騰はマイナス材料
企業からの声では、「物価上昇にあわせて賃金を上げていくことは重要だと考えているが、産業構造が大きく変わっていくなか、原資を確保していけるように変化していかないといけない」(工業用ゴム製品製造、愛知県)と、物価の上昇にあわせて賃金改善へ前向きに取り組む企業もある。一方、「仕入価格が急上昇しているなかで利益が圧迫されている状況。売り上げも下降気味であり、賃金に振り分ける余裕もない」(一般貨物自動車運送、茨城県)、「賃金は上げていきたい。しかし、仕入価格の上昇、販売価格反映の拒否があり、困難な状況」(金型・同部分品・付属品製造、埼玉県)など、原材料価格の高騰がマイナス材料となり、賃上げを厳しくみている企業も多い。
2022 年度の総人件費、「増加」を見込む企業は 67.1%。2021 年度から一転し大幅増
依然として新型コロナウイルスの感染拡大や、燃料、原材料価格の高騰による影響が多くの企業で継続するなか、政府は賃上げ目標3%の達成に向けて、賃上げ促進税制など、企業をバックアップする姿勢を打ち出している。本調査の結果をみると2022年度に賃金改善を見込む企業は54.6%となり、2020年度見込み以来、2年ぶりに半数を上回った。総人件費も67.1%で上昇を見込み、2021年度から12.9ポイントの大幅な増加となった。一方、原材料価格の高騰など物価動向の影響を受けて、賃金改善に消極的な企業も散見された。特に、価格転嫁が進んでいない企業においては、賃金改善がある割合も低下する傾向がみられる。賃金改善が「ある」と見込む理由としては、依然として「労働力の定着・確保」が最も多い傾向に変わりはない。
企業の人手不足感が再び高まるなか、賃金改善の動向は今後の経済を見通す上でより重要な要素となってきている。加えて、2021年以降は原材料価格の高騰などで、企業の収益環境はより厳しさを増してきている。そうしたなか、今後の賃金改善を促進するためには、より企業の生産性を高めるための施策(DX投資、従業員へのリカレント教育など)へ注力する必要があろう。
2022 年度の賃金改善見込み
- 2022年度、企業の54.6%で賃金改善を見込む
- 賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が最多。一方、原材料の高騰はマイナス材料に
- 2022年度の総人件費、「増加」を見込む企業は67.1%、2021年度から一転し大幅増
■本調査おける全国版データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している。
2022 年度、企業の 54.6%で賃金改善を見込む。ベースアップは過去最高の水準に
賃金改善状況の推移
賃金改善の状況について企業規模別にみると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模全てで、前回調査の2021年度見込みから賃金改善見込みの割合が上昇していた。また、業界別にみると、『製造』(59.7%)が最も高く、『建設』(57.2%)や『サービス』(54.0%)が続いている。
賃金改善の 2021 年度見込みと 2022 年度見込みの比較
賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が 46.4%(前年比 10.5 ポイント増)、「賞与(一時金)」が 27.7%(同 7.4 ポイント増)となり、それぞれ増加した。「ベースアップ」は 2019 年度の 45.6%を上回り、調査開始以降で最高の水準となった。
賃金改善の具体的内容
賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が最多。一方、原材料の高騰はマイナス材料
賃金を改善する理由(複数回答)
賃金を改善しない理由(複数回答)
原材料不足や高騰の影響と価格転嫁の状況
賃金改善の有無〜価格転嫁の状況別〜
- (1)帝国データバンク「原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査」(2022 年 2 月 9 日発表)
企業からの声では、「物価上昇にあわせて賃金を上げていくことは重要だと考えているが、産業構造が大きく変わっていくなか、原資を確保していけるように変化していかないといけない」(工業用ゴム製品製造、愛知県)と、物価の上昇にあわせて賃金改善へ前向きに取り組む企業もある。一方、「仕入価格が急上昇しているなかで利益が圧迫されている状況。売り上げも下降気味であり、賃金に振り分ける余裕もない」(一般貨物自動車運送、茨城県)、「賃金は上げていきたい。しかし、仕入価格の上昇、販売価格反映の拒否があり、困難な状況」(金型・同部分品・付属品製造、埼玉県)など、原材料価格の高騰がマイナス材料となり、賃上げを厳しくみている企業も多い。
2022 年度の総人件費、「増加」を見込む企業は 67.1%。2021 年度から一転し大幅増
賃金改善の有無〜価格転嫁の状況別〜
- (2)経済産業省「税制について」(賃上げ促進税制について)
- (3)「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5%以上 10%未満増加(減少)」「3%以上 5%未満 増加(減少)」「1%以上 3%未満増加(減少)」の合計
- (4)総人件費の前年度からの増加率は、「10%以上増加(減少)」を 10%、「5%以上 10%未満増加(減 少)」を 7.5%、「3%以上 5%未満増加(減少)」を 4%、「1%以上 3%未満増加(減少)」を 2%、「変 わらない」を 0%として各選択肢の回答企業数で加重平均を取ることにより算出している
- (5)資本金 1 億円超の企業の母数は 988 社、資本金 1 億円以下の企業の母数は 10,993 社
依然として新型コロナウイルスの感染拡大や、燃料、原材料価格の高騰による影響が多くの企業で継続するなか、政府は賃上げ目標3%の達成に向けて、賃上げ促進税制など、企業をバックアップする姿勢を打ち出している。本調査の結果をみると2022年度に賃金改善を見込む企業は54.6%となり、2020年度見込み以来、2年ぶりに半数を上回った。総人件費も67.1%で上昇を見込み、2021年度から12.9ポイントの大幅な増加となった。一方、原材料価格の高騰など物価動向の影響を受けて、賃金改善に消極的な企業も散見された。特に、価格転嫁が進んでいない企業においては、賃金改善がある割合も低下する傾向がみられる。賃金改善が「ある」と見込む理由としては、依然として「労働力の定着・確保」が最も多い傾向に変わりはない。
企業の人手不足感が再び高まるなか、賃金改善の動向は今後の経済を見通す上でより重要な要素となってきている。加えて、2021年以降は原材料価格の高騰などで、企業の収益環境はより厳しさを増してきている。そうしたなか、今後の賃金改善を促進するためには、より企業の生産性を高めるための施策(DX投資、従業員へのリカレント教育など)へ注力する必要があろう。
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