~浅海域の地図を作る「海の地図PROJECT」緊急調査報告~ 能登半島地震後の海底隆起により新たな岩礁が出現

地域漁業復興に欠かせない海底地形データを取得

公益財団法人 日本財団

 日本財団(東京都港区、会長 笹川陽平)と日本水路協会(東京都品川区、理事長 加藤茂)は、

能登半島北部沿岸域における、地震・豪雨後の海底地形や堆積物の変化について調査内容を発表しました。本調査は、2022年より日本全国の海岸につづく浅海域を測量・地図化する「海の地図PROJECT」の一環として行われたもので、大きな隆起を伴う地震前後で沿岸浅海域での詳細な海底地形データ取得に成功したのは、本調査が世界初※1です。

 本調査では、海底全体の隆起のみならず、地震後に新たに岩礁が形成されたことが明らかとなり、魚類が生息する藻場を探す手掛かりともなります。地震により生態系にも壊滅的ダメージがあった能登半島北部は、豪雨による土砂流入の影響もあり海底の生態系が回復するにはある程度の時間を要するものの、今回調査の成果で、地元の漁業等の復興につながる一つの希望を示しました。

※1:2025年1月時点。日本水路協会調べ

■能登半島地震発生後の地形変化調査の概要

能登半島地震前(2022年9月)
能登半島地震後(2024年5月)

 能登半島北部において、2024年1月1日の地震が発生する前の2022年9、10月と発生後の2024年4、5月に調査を行い、海底における隆起量について、能登半島の外浦(羽咋郡志賀町~珠洲市三崎町)の沿岸総距離約225kmの海底(水深0mから20m)を測深したところ、最大約5.2m隆起していること、また最大4.3mが水平方向に動いていることが分かりました。

 また、海底の地形については、単に全体的に一様に隆起しただけでなく堆積物が大きく移動していることが確認され、これにより大きな地形の変化も確認できました。堆積物の移動については、津波、または地震後の水深の変化にともなう波浪の影響によって発生したと考えられ、新たな岩場が出現しているような場所もありました。

■調査成果活用への期待と今後の「海の地図PROJECT」

 今回の調査で、2024年1月の地震後に海底が単に隆起したのみならず、新たに岩礁が現れたこと、海底の堆積物が大きく移動していたこと等が確認されました。また、9月の豪雨後は、海底が広く泥に覆われ、一部の海底では陸から流出した土砂が厚く海底に堆積したことが確認された一方、ホンダワラ類等の海藻が生きていることも確認されました。岩礁は魚類が生息する藻場を探す手掛かりともなるため、新たな岩礁の出現を確認した本調査成果は、地震や豪雨により生態系に壊滅的ダメージがあった能登半島北部の漁業等の復興につながることが期待されます。

「海の地図PROJECT」は本来、浅海域(水深0~20m)海底地形を明らかにし、地図化することで生態系把握や水難事故防止など幅広い活用の形を目指したプロジェクトですが、能登での本調査の実施により、地震・豪雨による海底への影響が、単なる隆起だけではないことが明らかになりました。今回のノウハウを生かし、他地域でも震災等の影響の測量や、復興に向けての調査結果活用を目指すため、早期の全国の海岸線の測量完了・地図化の完了を目指し引き続き、事業を加速してまいります。

■関係者コメント(一部抜粋/敬称略)

日本水路協会 理事長 加藤茂:

令和6年1月に能登で発生した地震災害及び9月の豪雨災害を受けて、緊急で調査を行った。今回明らかとなった海底地形情報が、今後の沿岸漁業を含め地域の復興に寄与することを期待する。

 

日本財団 常務理事 海野光行:

当初様々な利活用方法を想定して手探り状態でスタートした本プロジェクトだが、3年目を迎え徐々に効率的な計測もできるようになってきた。今後、海の地図の整備を加速させるとともに本プロジェクトの成果である海底地形図の利活用方法や公開の手法について議論を進めていかなければならない。

 

神戸大学 海洋底探査センター客員教授 巽好幸:

プロジェクトを進める中で、大きな隆起を伴う地震前後の世界初となるデータが取得された。今後、地震前後の海底地形の比較を行うことで、地震発生のメカニズムが解明されることが期待できる。活断層は地形に現れることが多いので、本プロジェクトで整備されるシームレスかつ詳細な海底地形データは活断層の評価に繋がるとともに、地震・津波に対する減災に向けた取組も進むものと期待している。

東京大学 大気海洋研究所教授 木村伸吾:

詳細な海底地形図は沿岸生態系の理解に必須であり、今回のプロジェクトの成果の活用が進めば沿岸生態系の理解が各段に進むだろう。今回の成果は能登半島の外浦の水産資源復元のための貴重な基礎データとなる一方で、波浪などによって海底地形や底質がさらに変化していく可能性がある。そのため、磯根資源の回復状況を知るためにも継続してモニタリングすることは重要であると同時に、災害に対する科学的な知見も深めることができるだろう。

 

わじま海藻ラボ代表 石川竜子:

能登の沿岸域の漁業は地震による隆起と9月の大雨の影響で大打撃を受けた。現在は地元海女の協力を得て地道な漁業資源の基礎調査を始めたが海底の状況を示した地図がなく震災後の調査でも苦労している。漁師は頭の中に海底の地図が入っているが今回の災害でリセットされたため、このプロジェクトで整備される海の地図は海女の目から見るとまさに宝の地図だろう。さらに、新しい海藻漁場が形成される場所の目星もつけられるほか、獲り過ぎないよう資源管理にも利用できるため、地震・豪雨後の沿岸漁業復興が進むことが期待できる。

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03-6229-5131
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笹川陽平
上場
-
資本金
-
設立
1962年10月