「飼料ブランディング」でミルクの価値向上を実証
~サステナビリティ活動を顧客価値に転換する明治ホールディングスと明治大学商学部加藤拓巳准教授の共同研究成果~

一般に、サステナビリティ活動は企業のコストと捉えられがちですが、商品の価値を生み出すためには、良質な素材を得られる地球環境・丁寧な仕事を遂行できる職場環境・動物の健康を守れる飼育環境は、欠かせない“価値の源泉”になります。しかし、サステナビリティの主なテーマのうち、アニマルウェルフェアの配慮を価値に転換する取り組みは乏しい現状があります。実際、2015年9月の国連サミットで採択されたSustainable Development Goals (SDGs)ですら、環境と人間に関するトピックが中心であり、アニマルウェルフェアについては明確に言及されていません。そこで、本プロジェクトチームは、素材ブランディングの知見を酪農の飼料に適用し、動物の健康を考えた飼料へのこだわりと飼育環境がミルクの魅力に与える効果を実証しました。この結果は、消費者が素材の段階から含めて最終商品のおいしさを評価することを意味しています。この一連の研究成果は、明治大学商学部加藤拓巳准教授、明治ホールディングス株式会社、株式会社 明治、明治飼糧株式会社の共同研究として「2026 American Marketing Association Marketing and Public Policy Conference」と日本感性工学会主催の「International Symposium on Affective Science and Engineering」で発表され、日本経営システム学会の国際査読論文誌International Journal of Japan Association for Management Systemsに採択されました。
出典:
Kato, T., Nishida, M., Ikeshita, H., Aizawa, Y., Fujiwara, M., Yamagata, Y., Hashiguchi, K., Morita, R. (2026). The perceived value of milk created by ingredient branding of cattle feed. 2026 AMA Marketing and Public Policy Conference.
Kato, T., Nishida, M., Ikeshita, H., Aizawa, Y., Fujiwara, M., Yamagata, Y., Hashiguchi, K., Morita, R. (2026). Farmers’ Love vs. Comfortable Facilities –Comparing the Effects of Animal Welfare Claims on the Perceived Value of Milk–. International Symposium on Affective Science and Engineering, 1-4. https://doi.org/10.5057/isase.2026-C000005
Kato, T., Nishida, M., Ikeshita, H., Aizawa, Y., Fujiwara, M., Yamagata, Y., Hashiguchi, K., Morita, R. (2026). Ingredient branding for livestock feed: Proof of concept for translating animal welfare into consumer value. International Journal of Japan Association for Management Systems, 1-8.
本研究のポイント
-
日々深刻化する環境問題に直面して、グローバル企業はエシカル商品の開発に注力しています。特に食品業界は、持続可能性に注力している代表的な産業の一つです。消費者もその社会的背景をよく理解しているため、自身の購入行動の倫理的妥当性を考慮する姿勢を表しています。しかし、環境への関心の高まりは、エシカル消費市場の経済成長を伴っていません。その理由はシンプルです。調査環境では社会的望ましさバイアス※によってエシカル商品に肯定的な態度が引き出されますが、実際には社会的配慮を優先して顧客価値を損なう商品・サービスを好まないためです。よって、利他的動機ではなく、利己的動機に基づいて商品・サービスの価値を訴求する必要があります。そのためには、環境・人権・動物への配慮という特性を顧客価値に転換するコンセプトが重要な役割を果たします。
-
サステナビリティの主なテーマである地球環境、労働者、アニマルウェルフェアのうち、アニマルウェルフェアの議論は最も乏しい現状があります。実際、2015年9月の国連サミットで採択されたSustainable Development Goals (SDGs)ですら、環境と人間に関するトピックが中心であり、アニマルウェルフェアについては明確に言及されていません。また、企業の取り組みとしても、アニマルウェルフェアの訴求は他の側面に比べて少ないです。その理由としては、消費者が自分ごととして想像することの難しさがあります。環境問題は猛暑や災害などの異常気象、人権問題は職場の労働環境や賃金に影響するため、具体的な問題として見えやすく、自分ごととして考えやすいです。一方、アニマルウェルフェアは、消費者から実態が見えにくく、かつ自分への影響が不明瞭です。そのため、アニマルウェルフェアを消費者価値に転換する取り組みは、一層知見が乏しい現状です。
-
そこで、本プロジェクトチームは、飼料の素材ブランドと家畜の飼育環境の2つの面から、アニマルウェルフェアの商品価値の強化の可能性を検討しました。
-
まず、飼料に関しては、「牛の飼料に素材ブランディングを適用することで、消費者はミルクの価値を高く評価するか?」というリサーチクエスチョンを設定しました。オンライン調査環境でのランダム化比較試験を行った結果、「ミルクのみ」「環境・人権・動物への配慮活動(図1)とミルク」と比較して、「飼料のこだわり(図2)とミルク」に関する訴求をする方がミルクの魅力が高まることが明らかになりました(図3)。この結果は年齢を問わず共通でした。また、性別では、男性よりも女性の方が高く評価しました。
-
次に、飼育環境に関しては、「牛の家畜の飼育環境の訴求は、消費者のミルクの知覚価値を高くするか?」というリサーチクエスチョンを設定しました。素材ブランディングの効果を高めるには、商品品質への貢献が論理的に理解できることが重要です。特に、アニマルウェルフェアのような消費者から遠い領域こそ、商品価値につながる論理が明確でなければ、エシカル消費の態度と行動の乖離は埋められません。そこで、「酪農家による愛情」と「牛にとって快適な環境・設備」を対象として、ミルクの知覚価値への効果を比較しました。 オンライン調査環境でのランダム化比較試験を行った結果、「酪農家による愛情」よりも「牛にとって快適な環境・設備」(具体的には、藁でつくったふかふかなベッドのような環境・設備)の効果が有意に高くなりました。
-
最近のエネルギー費・人件費・原材料費の高騰を受けて、アニマルウェルフェアを充実させるコスト負担は企業にとって一層厳しくなっています。組織におけるコストセンターのままであれば、動物にとってはサステナブルでも、ビジネスとしてはサステナブルではありません。つまり、真の意味でサステナブルであるためには、環境・人権・動物への配慮が顧客価値につながり、ビジネスとして成立することが求められます。「エシカル消費を促進するなら、消費者にエシカルを訴求すべきではない」というエシカル消費のパラドックスに多くの企業が苦しんでいる中、本研究成果は、その課題に対する有効な一つのアプローチを示しています。



用語解説
※社会的望ましさバイアス:調査回答者が周囲からよく見られたい(良い人だと思われたい)という意識から、社会的に望ましいとされる回答を選び、本音や真実を偽る傾向。
この記事に関連するページ
明治ホールディングス株式会社 サステナビリティWebサイト:
https://www.meiji.com/sustainability/
明治飼糧株式会社Webサイト:https://www.meijifeed.co.jp/
加藤拓巳准教授Webサイト:https://takumi-kato.com/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
