世界トップレベルの微生物開発技術を有する神戸大学に「出光バイオものづくり共同研究部門」を設立
バイオものづくりバリューチェーン構築に向け、スマートセルの開発を加速
※スマートセル:遺伝子改変技術と情報解析との組み合わせにより、目的物生産量を最大化した生物・細胞
バイオものづくり(微生物を利用したものづくり)は、主にスマートセルを活用して有用物質を効率的に生産する技術です。現在はバイオマス等から得られた糖などを原料とするプロセスの実用化が目指されていますが、CO2を直接原料とする研究開発も進められており、いずれも持続可能な社会へ寄与できる技術として期待されています。
当社は、1970年代から微生物に関する技術開発に取り組み、世界トップレベルの微生物開発技術を有する神戸大学と2020年からバイオ農薬などに関する共同研究を実施してきました。このたび設立した「出光バイオものづくり共同研究部門」では、2026年を目途に特定の化合物(化粧品や将来エネルギー用途への展開の可能性がある油脂、農薬などに使用される生理活性物質など)を製造するための基盤となるスマートセルの開発を目指します。当部門にて開発されたスマートセルは、本年に当社が出資した最先端のスマートセル開発技術を保有する神戸大学発のベンチャー企業である株式会社バッカス・バイオイノベーションにおいて、更なる生産性向上とスケールアップについて検討します。
本取り組みによりバイオものづくり領域の技術開発を加速させ、将来的には、原料確保、スマートセル設計、スマートセルを活用した有用物質の製造まで一気通貫するバイオものづくりバリューチェーンを構築することを目指します。
日本政府は「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標としたバイオ戦略を推進しており、スマートセルの活用により有用物質の高効率な生産を実現する新しい「バイオものづくり」が注目されています。抗生物質や発酵食品が代表するように、微生物の力を利用したものづくりは昔から行われてきました。スマートセルを活用したバイオものづくりにおいては、医薬品や食品にとどまらない多様な有用物質の生産と、生産の高効率化の実現が望めます。また、化学品製造においてはスマートセルの活用により常温・常圧下の生産が可能となるため、高温・高圧下の石油化学プロセスと比べエネルギーとCO2排出を抑えることができます。
当社は高機能材事業の重点領域の一つとして「バイオ・ライフソリューション」を設定しており、その具体施策の一つが「バイオものづくり」です。バイオものづくりバリューチェーンの構築により、バイオエコノミー社会実現に貢献することを目指します。また、スマートセル開発によるバイオものづくり技術の確立に向け、微生物設計技術、研究開発におけるDX、石油事業におけるスケールアップ生産技術といった強みを活かしながら、アカデミア連携・スタートアップ投資といった外部との連携を強化します。
当社は2022年11月に発表した「中期経営計画(2023~2025年度)」において、下記3つの事業領域の社会実装を通じ、事業ポートフォリオ転換を推進することを表明しました。
本取り組みは当社が掲げる2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた3つの事業領域のうち「多様な省資源・資源循環ソリューション」の社会実装に向けた取り組みと位置付けています。
■参考
持続可能な社会の実現へ貢献するスマートセル開発に向け、神戸大学発のベンチャー バッカス・バイオイノベーションへ出資(2023年5月17日)
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