新電力の倒産、過去最多の14件が発生 過去1年で累計31社が事業撤退 調達価格の高騰が打撃、供給1メガワット当たりの販売利益は9割超減
「新電力会社」倒産動向調査
帝国データバンクでは、新電力会社の倒産動向と今後の見通しについて調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
相次ぐ新電力の倒産、2021年度は過去最多の14件
2021年度に倒産した新電力の多くは自前の発電所を持たず、調達の多くを卸市場に依存していた。そのため、昨シーズン(2020-21年)冬の市場価格高騰で電力調達コストが大きく上昇し、採算性が悪化した。加えて莫大なインバランス分の支払い負担が重荷となり、F-Power(2021年3月会社更生法)をはじめ、巨額の負債を抱え経営破綻に至った。その後も、電力調達価格は下がらず、秋以降はエネルギー価格の高騰で卸電力価格が再度高騰。1度目のインバランス料金支払いで経営余力を削がれた新電力各社の経営を直撃しており、2022年3月にはホープエナジーが負債300億円を抱えて破産手続き開始決定を受けた。
1メガワット当たりの販売利益(推計)、2021年11月はわずか190円 ピークから9割超の急減に
一方で、電力の販売価格はほとんど変化が見られず、横ばい状態が続いている。電力・ガス取引監視等委員会のデータを基に帝国データバンクが推計したところ、新電力における2021年12月時点の電力販売価格平均は、供給1メガワット(MW)当たり約1万9000円。前年同月の約1万6000円から19%上昇したものの、同月における電力調達価格の上昇幅(約24%)を下回る。
この結果、新電力の販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、2021年11月はわずか190円で、直近ピークの2020年5月(約1万4600円/1MW)の1割にも満たないなど、電力調達価格の高騰で利益が急激かつ大幅に圧迫されている様子が鮮明になっている。実際の電力販売価格は供給する契約電圧によって異なり、特に家庭用の低圧電力に比べてより安値に設定されている事業者向け特高・高圧分野の電力供給では、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態になっている事業者も多いとされる。足元の3月ではスポットの調達価格が20円を超える日が続き、月間の市場価格は平均27円に上昇するなど、より厳しい経営を余儀なくされている。
エネルギー価格の高騰で電力の調達コストが膨らみ、新電力各社の収益を大きく圧迫している。2021年冬にも、電力市場価格は一時1キロワット当たり200円を超えるなど、現在よりも高値圏で推移していた時期があった。ただ、当時と異なるのは値上がりが長期間にわたり、かつ短期的には値下がりの材料が乏しい点で、新電力各社の経営は当時以上に厳しく、相次いで事業撤退や新規契約を凍結しているほか、経営破綻が多発する要因にもなっている。
今後も、ウクライナ危機を受けた原油・液化天然ガス(LNG)の相場高騰など、世界的なエネルギー需給のひっ迫が想定される。発電量の多くを火力で占める日本では、高値圏にある電気料金がさらに上がる可能性があり、新電力各社においても値上げに踏み切るなどの対応が求められる。ただ、これまで安値であることを理由に差別化を図り、顧客を獲得してきただけに十分な価格転嫁ができない可能性もあり、現状以上の市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が今後も発生する可能性が高い。
- 相次ぐ新電力の倒産、2021年度は過去最多の14件
- 1メガワット当たりの販売利益(推計)、2021年11月はわずか190円 ピークから9割超の急減に
相次ぐ新電力の倒産、2021年度は過去最多の14件
新電力会社の倒産が急増している。みなし小売電気事業者(旧・一般電気事業者)を除く「新電力会社」(登録小売電気事業者)の倒産は、2021年度(2021年4月~22年3月)に14件発生した。年度を通じて倒産が2ケタに達したのは初めてで、前年度の2件から急増、過去最多を大幅に更新した。また、電力小売事業からの撤退や新規申し込み停止も相次いでおり、2021年4月に営業が確認できた新電力約700社のうち、約4%に当たる31社が過去1年間で倒産や廃業、事業撤退などを行ったことが分かった。
2021年度に倒産した新電力の多くは自前の発電所を持たず、調達の多くを卸市場に依存していた。そのため、昨シーズン(2020-21年)冬の市場価格高騰で電力調達コストが大きく上昇し、採算性が悪化した。加えて莫大なインバランス分の支払い負担が重荷となり、F-Power(2021年3月会社更生法)をはじめ、巨額の負債を抱え経営破綻に至った。その後も、電力調達価格は下がらず、秋以降はエネルギー価格の高騰で卸電力価格が再度高騰。1度目のインバランス料金支払いで経営余力を削がれた新電力各社の経営を直撃しており、2022年3月にはホープエナジーが負債300億円を抱えて破産手続き開始決定を受けた。
1メガワット当たりの販売利益(推計)、2021年11月はわずか190円 ピークから9割超の急減に
新電力の経営を圧迫している卸電力価格は、実際にどのくらいのインパクトをもたらしているのか。日本卸電力取引所(JEPX)のデータを見ると、2021年1月のシステムプライスは1キロワット200円を超えるなど急騰。その後は、数円~10円程度で推移していたが、10月以降は燃料高を背景に再度上昇。2021年12月は月間平均で17円となり、前年同月から2割増加している。
一方で、電力の販売価格はほとんど変化が見られず、横ばい状態が続いている。電力・ガス取引監視等委員会のデータを基に帝国データバンクが推計したところ、新電力における2021年12月時点の電力販売価格平均は、供給1メガワット(MW)当たり約1万9000円。前年同月の約1万6000円から19%上昇したものの、同月における電力調達価格の上昇幅(約24%)を下回る。
この結果、新電力の販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、2021年11月はわずか190円で、直近ピークの2020年5月(約1万4600円/1MW)の1割にも満たないなど、電力調達価格の高騰で利益が急激かつ大幅に圧迫されている様子が鮮明になっている。実際の電力販売価格は供給する契約電圧によって異なり、特に家庭用の低圧電力に比べてより安値に設定されている事業者向け特高・高圧分野の電力供給では、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態になっている事業者も多いとされる。足元の3月ではスポットの調達価格が20円を超える日が続き、月間の市場価格は平均27円に上昇するなど、より厳しい経営を余儀なくされている。
エネルギー価格の高騰で電力の調達コストが膨らみ、新電力各社の収益を大きく圧迫している。2021年冬にも、電力市場価格は一時1キロワット当たり200円を超えるなど、現在よりも高値圏で推移していた時期があった。ただ、当時と異なるのは値上がりが長期間にわたり、かつ短期的には値下がりの材料が乏しい点で、新電力各社の経営は当時以上に厳しく、相次いで事業撤退や新規契約を凍結しているほか、経営破綻が多発する要因にもなっている。
今後も、ウクライナ危機を受けた原油・液化天然ガス(LNG)の相場高騰など、世界的なエネルギー需給のひっ迫が想定される。発電量の多くを火力で占める日本では、高値圏にある電気料金がさらに上がる可能性があり、新電力各社においても値上げに踏み切るなどの対応が求められる。ただ、これまで安値であることを理由に差別化を図り、顧客を獲得してきただけに十分な価格転嫁ができない可能性もあり、現状以上の市場価格上昇に耐えきれない事業者の倒産が今後も発生する可能性が高い。
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