人的資本管理に関するマネジメント規格の対訳版を発行
改訂で「ガイドライン」から「要求・推奨事項」へ変更
一般財団法人日本規格協会(本部:東京都港区、理事長:朝日弘)は、2025年10月15(水)に「ISO 30414:2025ヒューマンリソースマネジメント-人的資本のレポート及び開示の要求事項及び推奨事項」の邦訳(英・日対訳版)を発行いたしました。
近年、投資家は企業の中長期的な成長力を見極めるために、人的資本の情報の開示を求め始めています。これは投資先が成長するための付加価値を生み出せる人材を採用し、育成し、定着させられているかを見るためです。そのような中、人的資本の開示のガイドラインとして制定された規格が「ISO 30414」です。
―人的資本とはー
従業員を資本として捉える考え方のこと。具体的には、従業員が持つスキル・能力・資格のことを指します。人的資本への投資は生産力や経済活動への貢献に繋がると定義されています。
―ESG投資ー
ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字です。ESG投資は上記3項目を重要視している投資先への投資を指し、企業の持続的な成長に欠かせない項目として注目を集めています。人材は「S(社会)」に関連すると位置づけられています。
―「ISO 30414」が注目されている理由―
2020年8月にアメリカにおける証券取引を監督・監視する連邦政府機関、米国証券取引委員会(SEC)が、上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化しました。この流れを受け、日本国内でも人的資本の情報開示に関するガイドライン「ISO 30414」に対する関心が高まっています。
▼規格情報

ISO 30414:2025 ヒューマンリソースマネジメント-人的資本のレポート及び開示の要求事項及び推奨事項 Human resource management - Requirements and recommendations for human capital reporting and disclosure
《英語》 税込価格:41,591円 A4判・67ページ
《英・日対訳版》 税込価格: 74,855円 A4判・144ページ
※規格類は価格が変更される場合がございます。ご了承ください。
ISO 30414:2025は、2018年に発行された人的資本の情報開示に関する国際ガイドライン(第1版)の改訂版(第2版)であり、2025年8月に発行されました。この改訂版の最も大きな特徴は、単なる「ガイドライン(推奨)」から一歩進み、一部の指標を「要求事項(必須指標)」として明確に位置づけた点です。
―ISO 30414:2025の主な特徴―
1. 「必須指標(Requirement)」の設定
最も重要な変更点です。従来のガイドラインでは開示する指標の選択は企業に委ねられていましたが、2025年版では、全69指標のうち14指標が企業規模に関わらず開示を求める「必須指標」として設定されました。これにより、規格への準拠や認証を目指す上でのハードルが明確になりました。
2. 指標の拡充と現代的テーマの反映
社会情勢や経営環境の変化を反映し、指標が従来の58項目から69項目に増加しました。特に以下の領域が強化・追加されています。
持続可能性(サステナビリティ): 「人権」「労働関係」「倫理観」
従業員の幸福: 「健康・ウェルビーイング」
技術革新: AI時代に対応するスキルやデータプライバシーに関する観点
3. プライバシーとデータセキュリティの重視
人的資本データを「測定する」だけでなく、「守る」観点が強化されました。従業員のデータを扱う上でのプライバシー保護やデータセキュリティに関するガイドラインが明確にされています。
4. 対象組織の拡大と実用性の向上
中小企業への配慮: 中小企業向けのガイダンスや事例集が充実し、大企業だけでなく、より多くの組織が取り組みやすくなりました。
対象範囲の拡大: 営利組織だけでなく、非営利組織(NPO)や公共部門における開示ガイダンスも拡充されました。
定義の明確化: 各指標の計算方法がより詳細に定義され、比較可能性や透明性が高まりました。
連結開示の推奨: 単体ベースだけでなく、グループ全体(連結)での人的資本開示も推奨されるようになりました。
(担当部門:カスタマーサービス部 販売サービスチーム E-MAIL:csd@jsa.or.jp)

●日本規格協会(JSA)グループについて
1945年12月に、標準化および管理技術の開発、普及、啓発などを目的に設立された、一般財団法人日本規格協会を中核とするグループです。
我が国の総合的標準化機関として、当グループでは、JIS、国際規格(ISO・IEC規格)、JSA規格の開発、JIS規格票の発行と販売、国際規格・海外規格の頒布、多彩なセミナーの提供、ISO 9001やISO 14001をはじめとする各種マネジメントシステムの審査登録、各種サービスに関する認証、マネジメントシステム審査員などの資格登録、品質管理検定(QC検定)といった多様な事業に取り組んでおります。
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