世界初!乳由来βラクトペプチドのアルツハイマー病予防・改善に繋がる新たな機能を解明
~ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いたミトコンドリア機能改善効果の確認~
キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典)R&D本部のキリン中央研究所(所長 矢島宏昭)は、乳由来βラクトペプチドの1つGTWYペプチド(以下、βラクトペプチド)※1が、アルツハイマー病の主要な病態のひとつであるミトコンドリア※2機能の低下を改善するという新しい機能を、ヒトiPS細胞由来の神経細胞を用いて、世界で初めて明らかにしました。当社はこの研究成果を2022年7月31日(日)から8月4日(木)に開催された世界最大のアルツハイマー病に関する学会である「国際アルツハイマー病学会2022年度大会」で発表しました。
※1 複数のアミノ酸が連結した化合物をペプチド、アミノ酸が4つ結合したものをテトラペプチドと呼ぶ。
※2 細胞内小器官の一つで、生命維持に必須なエネルギー物質「アデノシン三リン酸(ATP)」を生成する。
※1 複数のアミノ酸が連結した化合物をペプチド、アミノ酸が4つ結合したものをテトラペプチドと呼ぶ。
※2 細胞内小器官の一つで、生命維持に必須なエネルギー物質「アデノシン三リン酸(ATP)」を生成する。
●研究背景
超高齢社会を迎えた日本国は、アルツハイマー病をはじめとした認知症患者が増加しており、大きな社会問題となっています。近年、細胞のエネルギー産生工場として知られる「ミトコンドリア」の機能が低下することがアルツハイマー病の主要な病態の一つであることが明らかになり、脳の健康維持にはミトコンドリア機能の維持や改善が重要であると考えられています。また、認知症予防には食事などの日常生活の改善が重要で、最近の疫学研究で牛乳や乳製品の摂取が認知症リスクを低減する事が報告され、注目を集めています※3。
当社は東京大学や協和キリン株式会社と連携した長年の脳科学研究の成果として、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれる乳由来のペプチドとしてβラクトペプチドを発見し、ヒトの認知機能維持に役立つことを報告しています※4。また、βラクトペプチドが非臨床試験においてアルツハイマー病様の病態を予防することも報告しています※5
※3 Ozawa M, et al, Journal of the American Geriatrics Society, 2014, 62(7): 1224-1230
※4 Ano Y, Nakayama H, et al., Neurobiology of Aging, 2018, 72: 23-31
※5 Ano Y, et al., Journal of Alzheimer's Disease, 2020;73(4):1331-1342
●研究概要
当社はβラクトペプチドのアルツハイマー病の病態に対するさらなるメカニズムを解明するため、アルツハイマー病におけるミトコンドリア機能の低下に着目して研究を行いました。本研究ではヒトの病態に近い評価方法として、ヒトiPS細胞由来のアルツハイマー病モデル神経細胞を用いてβラクトペプチドの効果を検証しました。アルツハイマー病モデル神経細胞では、脳の老廃物でアルツハイマー病の原因物質の1つとして考えられるアミロイドβの蓄積により、ミトコンドリアの形態異常などの病態が誘導されています。このアルツハイマー病様の病態に対してβラクトペプチドは、ミトコンドリアの形態やエネルギー生産量などの機能を改善することが明らかになりました。これらの結果から、βラクトペプチドはアルツハイマー病におけるミトコンドリア機能低下を改善することで、アルツハイマー病の病態を予防・改善する可能性が明らかになりました(図)。今後本成果は、脳の健康維持・認知機能改善の取り組みへの応用が期待されます。
●今後の展開
キリングループは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※6先進企業になる」ことを目指しています。
その実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」の技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、育成を進めています。ヘルスサイエンス領域では、「免疫」、「脳機能」などを重点領域に定め、さまざまな研究開発を行っています。今後は、大学や自治体などと連携しながら「脳の健康」サポートが可能な社会の実現に向けた取り組みを進めます。
※6 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。
●「キリン脳研究」について
※7 内閣府 令和2年版高齢社会白書
※8 厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業.
日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究. 平成26年度総括・分担研究報告書. 2015.
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
-記-
1. 発表演題名 「β-Lactolin Improves Mitochondrial Dysfunction in Aβ-treated Mouse Hippocampal
Neuronal Cells and a Human iPSC-Derived Neuronal Cell Model of Alzheimer’s Disease」
2. 学会名 国際アルツハイマー病学会2022年度大会
3. 発表場所 San Diego Convention Center(アメリカ合衆国)
4. 学会会期 2022年7月31日(日)~8月4日(木)
5. 発表者 キリンホールディングス株式会社 R&D本部 キリン中央研究所 綾部達宏、髙橋千佳、
大屋怜奈、阿野泰久
超高齢社会を迎えた日本国は、アルツハイマー病をはじめとした認知症患者が増加しており、大きな社会問題となっています。近年、細胞のエネルギー産生工場として知られる「ミトコンドリア」の機能が低下することがアルツハイマー病の主要な病態の一つであることが明らかになり、脳の健康維持にはミトコンドリア機能の維持や改善が重要であると考えられています。また、認知症予防には食事などの日常生活の改善が重要で、最近の疫学研究で牛乳や乳製品の摂取が認知症リスクを低減する事が報告され、注目を集めています※3。
当社は東京大学や協和キリン株式会社と連携した長年の脳科学研究の成果として、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれる乳由来のペプチドとしてβラクトペプチドを発見し、ヒトの認知機能維持に役立つことを報告しています※4。また、βラクトペプチドが非臨床試験においてアルツハイマー病様の病態を予防することも報告しています※5
※3 Ozawa M, et al, Journal of the American Geriatrics Society, 2014, 62(7): 1224-1230
※4 Ano Y, Nakayama H, et al., Neurobiology of Aging, 2018, 72: 23-31
※5 Ano Y, et al., Journal of Alzheimer's Disease, 2020;73(4):1331-1342
●研究概要
当社はβラクトペプチドのアルツハイマー病の病態に対するさらなるメカニズムを解明するため、アルツハイマー病におけるミトコンドリア機能の低下に着目して研究を行いました。本研究ではヒトの病態に近い評価方法として、ヒトiPS細胞由来のアルツハイマー病モデル神経細胞を用いてβラクトペプチドの効果を検証しました。アルツハイマー病モデル神経細胞では、脳の老廃物でアルツハイマー病の原因物質の1つとして考えられるアミロイドβの蓄積により、ミトコンドリアの形態異常などの病態が誘導されています。このアルツハイマー病様の病態に対してβラクトペプチドは、ミトコンドリアの形態やエネルギー生産量などの機能を改善することが明らかになりました。これらの結果から、βラクトペプチドはアルツハイマー病におけるミトコンドリア機能低下を改善することで、アルツハイマー病の病態を予防・改善する可能性が明らかになりました(図)。今後本成果は、脳の健康維持・認知機能改善の取り組みへの応用が期待されます。
●今後の展開
キリングループは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※6先進企業になる」ことを目指しています。
その実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」の技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」(ヘルスサイエンス事業)の立ち上げ、育成を進めています。ヘルスサイエンス領域では、「免疫」、「脳機能」などを重点領域に定め、さまざまな研究開発を行っています。今後は、大学や自治体などと連携しながら「脳の健康」サポートが可能な社会の実現に向けた取り組みを進めます。
※6 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。
●「キリン脳研究」について
日本は4人に1人が高齢者※7の「超高齢社会」となっており、2025年には高齢者のうち5人に1人が認知症になる※8と推計されています。また、昨今の急激な社会環境変化もあり、脳や心の健康増進は大きな社会課題となっています。キリングループでは、脳科学研究を通じて「脳や心の健康」を守り、新たなよろこびを生み出す「キリン脳研究」を進めています。「キリン脳研究」は、キリンならではの発想と技術で脳の健康を守ることを通じ、社会課題の解決に向けて貢献するとともに、一人ひとりが社会の中で、自信や希望、そして気持ちのゆとりを感じながら暮らせるこころ豊かな社会の実現を目指していきます。
※7 内閣府 令和2年版高齢社会白書
※8 厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業.
日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究. 平成26年度総括・分担研究報告書. 2015.
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
-記-
1. 発表演題名 「β-Lactolin Improves Mitochondrial Dysfunction in Aβ-treated Mouse Hippocampal
Neuronal Cells and a Human iPSC-Derived Neuronal Cell Model of Alzheimer’s Disease」
2. 学会名 国際アルツハイマー病学会2022年度大会
3. 発表場所 San Diego Convention Center(アメリカ合衆国)
4. 学会会期 2022年7月31日(日)~8月4日(木)
5. 発表者 キリンホールディングス株式会社 R&D本部 キリン中央研究所 綾部達宏、髙橋千佳、
大屋怜奈、阿野泰久
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