日本企業「脱ロシア」の動き鈍化 ロシア事業停止4割、増加数は前月から半減 ロシアから「全面撤退」相次ぐ欧米企業との温度差鮮明に

日本企業の「ロシア進出」状況調査(5月)

株式会社帝国データバンク

<調査結果(要旨)>
  1. ロシア進出主要168社の4割でロシア事業停止も、増加ペースは鈍化
  2. ロシアから「全面撤退」相次ぐ欧米企業との温度差鮮明に

ロシア進出主要168社の4割でロシア事業停止も、増加ペースは鈍化

ロシアに進出している主要企業 ロシア事業停止・撤退状況ロシアに進出している主要企業 ロシア事業停止・撤退状況

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻からまもなく3カ月が過ぎるなか、ここに来てロシアでのビジネスから撤退=日本企業の「脱ロシア」の動きが鈍化している。2022年2月時点でロシアへの進出が判明した国内上場企業168社のうち、5月17日までにロシア事業の停止や制限・撤退を発表・公開した企業は、4割にあたる71社で判明した。4月時点では3社が発表した、ロシア現地事業からの完全撤退を明言した企業は5月時点ではゼロだった。ただ、ロシア事業は当面継続するものの、新規投資計画の打ち切りや事業所の閉鎖など、事実上のロシア市場撤退となる動きも複数みられた。一方、受注残といった理由や、ロシア国内での新規事業の投資負担から現地での事業を当面継続する企業も判明した。

ロシア事業の停止・撤退を巡っては、3月時点で全体に占める割合は22%だったものの、4月時点では36%に急増。3~4月にかけて、ロシアに進出する主要な日本企業でロシア事業の停止や撤退といった「脱ロシア」の動きが相次いだ。その後も脱ロシアの動きが加速するとみられたものの、5月時点でロシア事業の停止を表明した企業は前月から11社の増加にとどまり、4月時点の増加数(+23社)の半数以下と大幅に減少した。将来的な事業再開・撤退についても言明を避けるケースが多く、ロシア事業をめぐっては各社で温度差が見られる。

ロシアビジネス停止・撤退状況 内訳(5月17日時点)ロシアビジネス停止・撤退状況 内訳(5月17日時点)

  事業の停止や中断となった企業の内訳では、製品の出荷・受注などを含む「取引停止」が33社で最も多かったものの、4月(31社)からは2社の増加にとどまった。次いで現地工場の稼働停止など「生産停止」(14社)が続き、同3社増加。完成車メーカーを中心に、部品在庫の減少などからロシア工場の生産停止が相次いだ。店舗や、現地の販売活動などを含めた「営業停止」は10社で、前月から1社増加した。ロシアによる軍事侵攻に深い憂慮や懸念を表明する企業は増えているものの、ロシア事業の停止理由として物流停滞や部品調達難による、現地生産や商品の配送などサプライチェーン面の混乱を挙げる企業が多い。


ロシアから「全面撤退」相次ぐ欧米企業との温度差鮮明に

米エール大学の調査では、5月17日までに判明した、ロシアの軍事侵攻を受けてロシア事業を見直した企業は全世界で1000社に上った[飯島 大介1] 。このうち、ロシア事業を完全に撤退する企業は300社を超え、仏ルノーや米マクドナルドなどをはじめとした欧米企業でその姿勢が際立っている。

ロシア現地に工場や販売拠点を有する日本企業でも、工場の操業停止や同国との製品輸出入停止といった、ロシアと距離を置く動きが進む。ただ依然としてロシアビジネスへの決断に慎重姿勢を見せる企業が多いほか、事業を見直す企業でも、将来的な事業再開の可能性を含む取引の停止などにとどめるケースが多い。多額の損失を計上しつつもロシア事業からの「全面撤退」を表明する欧米企業との温度差が、ここに来てより鮮明となっている。

米欧各国をはじめとした対ロシア制裁の内容も厳しくなるなど国際的な対ロ非難が長期化するなか、ビジネス環境や収益機会が正常化する道筋も現時点で立っていない。こうした状況下では、特に海外シェアで多くを占める企業を中心に、レピュテーションリスク(社会的評判・ブランドイメージ棄損)の高まりによる信用低下を回避する観点から、ロシア事業の撤退といった判断を迫られるケースが今後増えるものとみられる。ただ、市場からの完全撤退は「市場再参入のハードルが高い」など課題も多く、事態の見極めとロシア事業の将来性を鑑みた難しい判断が求められる。
 
  • [注] 対象は、帝国データバンクが保有する企業データベースに加え、各社の開示情報を基に、工場や事業所、駐在員事務所などの設備・施設、直接出資などでロシア国内に関連会社を有するなどの形で、2022年2月時点に進出が判明した上場企業168社


 

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上場
未上場
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設立
1987年07月