ヤエヤマクロレラの摂取が、マイコトキシンの排出を促進することを示す研究結果を確認しました
※1 マイコトキシンとは、植物病原菌であるかびや貯蔵穀物などを汚染するかびが産生する化学物質で、人や家畜の健康に悪影響を及ぼす
※2 「日本マイコトキシン学会 第89回学術講演会」:https://www.jsmyco.org/conference/top.html
■研究の背景と目的
食品中のマイコトキシン汚染は、人間や家畜に健康被害を及ぼすことが報告されています。例えば、マイコトキシンの一種であるデオキシニバレノールは食欲不振や免疫毒性、オクラトキシンAは腎毒性や腎臓がんの原因物質として知られています。同じ食品中から複数のマイコトキシンが検出されるケースも多く、マイコトキシンの複合汚染による相乗的な毒性作用が危惧されており、汚染リスク管理と同時に解毒作用もしくは吸収を阻害する素材の探索が求められています。
これまでの研究において、微細藻類の一種であるクロレラの摂取が、鉛、メチル水銀、カドミウム等の重金属に対して、排出促進、解毒作用をもつことが報告されているほか、マイコトキシンの一種であるアフラトキシンに対しても吸収抑制作用があることが、ヒトやウズラの試験で示唆されています。今回は、ヤエヤマクロレラの摂取によるデオキシニバレノールおよびオクラトキシンAに対する毒素排出効果について検証を行いました。
■研究の内容と結果
①ヤエヤマクロレラの摂取が、血漿および尿中のマイコトキシンを排出することが示唆されました
マイコトキシンの一種であるデオキシニバレノール、オクラトキシンAとヤエヤマクロレラを混合した溶液をそれぞれ絶食後のマウスに摂取させ、投与後30分、2時間、24時間の血漿および尿を採取し、各種マイコトキシン濃度を測定しました。その結果、血漿中のデオキシニバレノール濃度がヤエヤマクロレラの混合により有意に減少しており、ヤエヤマクロレラがデオキシニバレノールの吸収および代謝を阻害している可能性が示唆されました(図1)。また、オクラトキシンAも同様に血漿中および尿中濃度がヤエヤマクロレラ投与群で有意に減少しており、ヤエヤマクロレラがオクラトキシンAの吸収阻害に有効であることが示唆されました(図2)。
図1 血漿中、尿中のデオキシニバレノールの濃度
** p<0.01 vs コントロール、Student’s t-test
図2 血漿中、尿中のオクラトキシンAの濃度
** p<0.01 vs コントロール、Student’s t-test
②ヤエヤマクロレラとマイコトキシンが結合することが確認されました
マイコトキシンの一種であるデオキシニバレノール、オクラトキシンAとヤエヤマクロレラをそれぞれ試験管内で一晩混合し、混合後に遠心分離し、上清中のマイコトキシン濃度をヤエヤマクロレラ非添加群と比較しました。その結果、デオキシニバレノールはヤエヤマクロレラ混合により顕著に上清中の濃度が減少し、デオキシニバレノールとヤエヤマクロレラの強い結合が示唆されました(図3)。オクラトキシンAにおいても上清中のオクラトキシンA濃度の減少傾向が認められました(図3)。
図3 上清中の各種マイコトキシンの濃度
以上のことから、ヤエヤマクロレラの摂取がマイコトキシンの直接的な吸着によって、吸収が阻害され、マイコトキシンの排出を促進することが示唆されました。今後もユーグレナ社は、ヤエヤマクロレラの機能性の解明を目指し、研究に取り組んでいきます。
<ヤエヤマクロレラについて>
クロレラは、淡水に自生する単細胞緑藻類の一種です。そのなかでもユーグレナ・グループの八重山殖産が手がけるヤエヤマクロレラは、石垣島の亜熱帯気候のもとで生産されています。葉緑素の高い含有量とバランスの良い栄養分が特徴で、世界30か国で愛用されています。ヤエヤマクロレラは、SDGsの目標14の達成に最も有効な方法の一つである「ASC-MSC 海藻(藻類)認証」を2019年1月に世界で初めて取得しています。
<株式会社ユーグレナについて>
2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品、化粧品等の開発・販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究、遺伝子解析サービスの提供を行っています。また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp
<麻布大学について>
麻布大学は、2025年に学園創立135周年を迎えます。動物学分野の研究に重点を置く私立大学として、トップクラスの実績を基盤に新たな人材育成に積極的に取り組んでいます。
獣医学部には獣医学科と動物応用科学科が設置されています。獣医学科では、全国共通のモデル・コア・カリキュラムと参加型臨床実習に対応した獣医学教育はもちろんのこと、臨床教育に適した施設・設備を整備して充実した教育を実践しています。さらに、多くの研究室において動物に関して多様な研究活動を行っています。
・麻布大学獣医学部: https://www.azabu-u.ac.jp/academic_graduate/veterinary/
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