<誹謗中傷の実態調査:政治家版>参院選での誹謗中傷、国会議員の85%が「深刻になる」と回答
弁護士ドットコム株式会社(東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO・弁護士:元榮 太一郎)は、「専門知」の新たな活用可能性を調査・発信するプロフェッショナルテック総研において、国会議員を対象に「誹謗中傷に対する政治家の意識調査」を実施しました。
■ 調査背景
ネットの誹謗中傷が社会問題になっています。政治分野においても2024年の兵庫県知事選などを契機に、民主主義を歪めかねないとしてメディアで注目を集めました。一方で、政治家への批判と誹謗中傷との線引きは難しく、同じく民主主義の根幹である表現の自由などの観点から規制を懸念する声もあります。
こうした中、当社は、2025年7月20日投開票の第27回参議院議員選挙を前に、誹謗中傷に対する政治家の意識調査を実施し、衆参両院の議員定数713名の1割を超える109名から回答が寄せられました。
■ 調査概要
調査機関:プロフェッショナルテック総研(弁護士ドットコム株式会社内)
調査方法:衆参両院の国会議員を対象にFAXアンケートを実施
調査対象:衆参両院の国会議員のうち回答が得られた109名
(内訳:男性議員81名、女性議員25人・性別無回答3名)
調査期間:2025年6月12日〜7月2日
■ 結果サマリ

2025参院選の展望 |
2025年の参院選での誹謗中傷、85%が「深刻になる」と回答 |
被害の性質 |
3割近くが「身の危険を感じた」経験あり、警察に警備を依頼した議員も存在 |
女性議員の被害 |
女性議員の9割が「侮辱的・人格攻撃的な内容」や「事実に基づかない内容」の誹謗中傷を経験。その他の被害も男性議員より高い割合 |
誹謗中傷への対応 |
誹謗中傷を経験した国会議員の半数はブロックやミュートで対応。法的措置を検討した議員も3割 |
<回答者の政党分布>
自民:21名(19.3%)
公明:8名(7.3%)
立民:35名(32.1%)
共産:12名(11.0%)
国民:10名(9.2%)
維新:7名(6.4%)
れいわ:3名(2.8%)
社民:3名(2.8%)
参政:1名(0.9%)
保守:1名(0.9%)
無所属:8名(7.3%)
※1:政治団体は「無所属」に分類しています
※2:「無回答」があるため設問対象者数と回答者数が一致しないことがあります
※3:小数点第2位を四捨五入しているため、構成比の数字は必ずしも100になりません
1. 国会議員の3割が誹謗中傷に「身の危険を感じている」
国会議員に「自身に対する正当な批判や論評の域を超えた誹謗中傷はどのくらいあるか」を項目別にたずねたところ、「事実に基づかない内容」の誹謗中傷について、77.8%が「ある」(「よくある」「ときどきある」の合計、以下同様)」と回答。「侮辱的・人格攻撃的な内容」についても72.3%にのぼりました。また、刑事事件化することもある「身の危険を感じる内容」も27.8%が「ある」と答えています。
【自由回答で寄せられた具体的な被害内容】
・選挙期間中に事実と異なることを投稿され、何度も繰り返されるため訂正が大変だった。
・自身への殺害予告と家族への危害予告があり、警視庁に警備してもらった。
・政党に対し、事実と異なるレッテルを貼られ続けている。
・ある法案への支持を表明したところ、反対派からの暴言を受けた。
・容姿なども含めたミソジニー(女性嫌悪)的な投稿をされた。
※4:本人や政党が特定できないよう、コメントには編集を施しています

2.女性議員が受けるSNS上の深刻な被害
誹謗中傷の経験について、男女別(男性81名・女性25名・性別無回答3名)に分析したところ、いずれの項目でも女性議員のほうが「ある」の割合が高くなりました。
特に「侮辱的・人格攻撃的な内容」が「ある」としたのが92.0%、「事実に基づかない内容」が「ある」としたのが88.0%で、女性議員のほうが負担を感じていることがわかりました。
男性議員との比較では、「セクハラなど性的な内容」で46.9ポイント、「家族についてのネガティブな内容」で38.2ポイント、女性議員のほうが「ある」の比率が高くなりました。


3.誹謗中傷の被害にあった媒体、「X(旧Twitter)」が8割超で突出
過去も含めて誹謗中傷を受けたことがある議員に、どんな媒体で誹謗中傷を受けたかをたずねたところ、「X(旧Twitter)」が82.6%で突出していました。次点は「ネット以外(手紙、FAX、電話など)」(39.4%)となり、以下Facebook、ニュースサイトのコメント欄、匿名掲示板などが続きました。

4.誹謗中傷受け、「ネット発信・活動の減少」も
過去も含めて誹謗中傷を受けたことがある議員に、誹謗中傷による影響をたずねたところ、「周囲からの心配」が58.3%と突出し、「ネット発信の減少」が28.1%、「屋外での政治活動の減少」が13.5%など、政治家としての活動を減らした議員もいました。中には「(自身の)体調不良」が10.4%、「家族の体調不良」が8.3%と深刻なケースもありました。一方で、「影響はなかった」は26.0%でした。

5.誹謗中傷の被害にあった議員の3割が「法的措置」を検討
なんらかの誹謗中傷を受けたことがある議員にどのような対応をとったかをたずねたところ、もっとも多かったのは、相手の投稿を見えなくする「ブロックやミュート」の46.9%でした。政治家による「ブロックやミュート」については、国民の声が届かなくなったり、国民から政治家の発信が見えなくなったりするため、賛否両論ありますが、実行している政治家も一定数いることがわかります。
続いて多かったのは「反論の発信」が37.5%、「弁護士」25.0%や「警察」20.8%に相談するケースもありました。
「弁護士」と「警察」への相談をまとめて「法的措置」と位置付けると、被害にあった国会議員の32.3%が法的措置を検討していることがわかりました(※5)。
※5:「弁護士」と「警察」両方の回答者は1でカウントしています

6.議員の9割が「ネット言論の過激化」を感じる
2025年7月3日に参院選が公示され、6年前の2019年参院選と比べて、ネットでの政治や政治家に対する表現の変遷についてたずねたところ、「過激になった」と「やや過激になった」の合計が91.6%となりました。一方で、「やや穏健になった」「穏健になった」はいずれも0%でした。

7.参院選での誹謗中傷、議員の8割超が「深刻化」と予想
誹謗中傷の観点から2025年参院選の展望をたずねたところ、過去の国政選挙以上に深刻化するかとの問いに、「そう思う」と「ややそう思う」の合計は85.1%となりました。一方で、「あまりそう思わない」「そう思わない」の合計は1.9%でした。

8.「政治家はネット投稿に寛容であるべきか」、国会議員の7割が否定
政治家は批判的な言論にも寛容であるべきだとする意見がありますが、誹謗中傷の場合はどうなのか。「政治家は一般人と比べて、侮辱的・人格攻撃的なネット投稿に寛容であるべきか」をたずねたところ、もっとも多かったのは「そう思わない」の44.3%でした。「どちらかと言えばそう思わない」の26.4%と合わせると、否定的な意見の合計は70.7%になりました。

■プロフェッショナルテック総研について
弁護士ドットコム株式会社がミッションとして掲げる「プロフェッショナル・テック」について調査・分析する研究機関です。弁護士にとどまらない、様々な専門家の知見・技術とテクノロジーの融合による、専門家領域のデジタル・トランスフォーメーション(DX)と、社会課題の解決のあり方を模索します。
◆弁護士ドットコム株式会社について: https://www.bengo4.com/corporate/
本社:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル
設立日:2005年7月4日
資本金:545百万円(2025年3月現在)
代表者: 代表取締役社長 兼 CEO・弁護士 元榮 太一郎
上場市場:東京証券取引所グロース市場
事業内容:「プロフェッショナル・テックで、次の常識をつくる。」をミッションとして、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」「BUSINESS LAWYERS」、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」を提供
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