マイナビ「2014年度 就職戦線総括」を発表
~ 景況感改善から人材の不足感が強まり、企業の採用意欲はすべての業界で上昇。学生の活動も前倒しで進み内々定率は改善。しかし次年度の活動時期変更への課題は残る ~
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:中川信行)は、2015年春卒業予定学生を対象とする、企業の採用状況と学生の就職活動状況、内定状況、今後の見通しなどをまとめた「2014年度 就職戦線総括」を発表しました。概要は以下の通りです。
<調査結果の概要>
■【企業の採用活動状況】採用意欲が高まり、前年度より前倒しで活動
2015年卒の新卒採用において、企業の採用予定数は対前年度実績比15.1%増と大幅な増加となり、すべての業界で採用増となった。前年度実績(2014年卒)では対前々年度実績比で採用減だった「製造業(建設業を除く)」でも、理系を中心に12.1%増の採用を予定している。一方、採用基準や質・量の優先度では、ほぼ前年度並みの質を要求する傾向となったため、基準を満たす学生については激しい争奪戦の様相となった。それにより、採用環境が「厳しくなる(「非常に」を含む)」と予想する企業は前年度より大幅に増加し、文系の採用で54.6%(対前年度比16.2pt増)、理系の採用で62.2%(対前年度比20.9pt増)となった。そのような状況の中、企業の採用活動は前倒しのスケジュールで進み、選考活動を開始した直後の4月上旬に、大手企業の内々定出しはピークを迎えた。
■【企業規模別の内々定出し時期】規模が大きな企業ほど4月上旬・中旬に内々定を出した割合が高い
5月下旬までに内々定を獲得した学生に、内々定を獲得した時期と企業規模を聞いたところ、従業員規模の大きな企業ほど、4月上旬・中旬に内々定を出した割合が高いことが分かった。内々定を獲得した時期のピークは4月上旬で、全体では18.3%だが、従業員規模5,000人以上の企業では27.7%と集中度が高くなっている。従業員300人未満の企業では、4月下旬のピーク時でも17.0%で、3月下旬から5月下旬までの時期に比較的均等に分散する形となった。(※1)
■【選考辞退率と内々定辞退率】選考時期集中と複数内定保有者の増加で、選考辞退率・内々定辞退率は共に上昇
5月時点で面接の途中で選考を辞退した学生の割合は、選考時期が前年度より集中したことが影響で、前年度と比べて「上がった(大幅+やや)」と回答した企業が全体の35.2%に達し、「下がった(大幅+やや)」と回答した企業の割合の16.6%を18.6pt上回った。内々定を辞退した学生の割合も、前年度と比べて「上がった(大幅+やや)」と回答した企業が34.6%で、「下がった(大幅+やや)」の18.6%を16.0pt上回った。これは、採用予定数の増加と、採用の質を重視する企業の姿勢、そして複数内定保有者の割合の上昇が影響していると思われる。(※2)
■【学生の就職活動状況】活動は前倒して始まり、内々定率も改善
企業の旺盛な採用意欲を受けて学生はどう動いたのかを見てみると、エントリー平均社数は対前年度比18.3社増の92.4社だったが、個別企業セミナー平均参加社数は対前年度比1.6社減の24.7社となった。エントリーにより企業との接点は増えても、会場に足を運ぶという具体的な行動を伴う活動量は増えなかったようだ。エントリーシートの平均提出社数は横ばい(対前年度比0.3社減の16.8社)、前年度より通過率は上昇(対前年度比2.2pt増の60.1%)した。
1次面接のピークが1カ月前倒しの3月となり、最終面接も前倒しで進行した。平均選考受験社数は前年度並みで、内々定を受けた時期は4月上旬に集中し、対前年度比3.4pt増の26.6%となった。5月末の内々定率は対前年度比3.8pt増の52.8%と、2年連続全カテゴリーで前年度実績を上回り、過半数の学生が内々定を保有するまでになっている。複数内定保有者の割合は、この2年で6.0pt上昇した(2013年卒5月:32.1% → 2015年卒5月:38.1%)。採用環境の好転を受けて、4月から5月上旬にかけて学生の意思決定が遅れる様子も見られたが、5月末にはほぼ例年並みとなり、活動の収束が見られる。
■【内定率に影響のある学生の特徴】「コミュニケーション能力」を武器とする学生の内定率が高い結果に
就職活動において、どのような特徴のある学生が早期に内々定を獲得するのかを分析するため、「就職活動における最大の武器」「自分に欠けていると思うもの」という質問に対する回答選択肢別に内定率(4月末時点、調査対象学生人数1,487名における内定率は43.5%)を算出した。「就職活動における最大の武器」では、内定率が最も高かったのは「コミュニケーション能力」を選んだ学生で対全体比9.7pt増の53.2%となった。また、「自分に欠けていると思うもの」で、最も内定率が低くなったのも「コミュニケーション能力」を選んだ学生で、対全体比12.5pt減の31.0%だった。「コミュニケーション能力」は、それを最大の武器であると自己評価する場合にも、「自分に欠けている」と自己評価する場合にも、どちらも内定率に大きな影響があることが分かった。
■【学生の層による志向および行動の違い】エリア・属性によって大手志向や活動量に差
大手企業志向の違いを男女、大学種別、居住地域別に見てみると、国公立男子の場合、関東・関西地域で大手志向の割合は60%以上と高い。一方、女子学生は「私立文系」「関東・関西以外の地域」を中心に大手企業志向は30%台と低い傾向にある。(※3)
また、関東、関西、東海とその他地域に分けて活動量を見ると、合同企業説明会への参加回数については、「その他地域」が累計で一番多く、1月、2月に他地域よりも参加回数が多い。しかし、個別企業セミナーへの参加、選考受験社数やエントリーシートへの取り組みなど、個別の企業に対する活動は関東・関西の方が多い。また、就職活動にかかった費用については、「その他地域」が最も高くなっている。(※4)
■【採用活動時期変更の影響と課題】2016年卒は選考活動時期変更で採用活動に大きな変化が予測される
2013年(平成25年)4月19日の、首相による経済3団体への要請に端を発し、その要請を受けた日本経済団体連合会(経団連)がこれまでの「採用選考に関する企業の倫理憲章」を改め、同年9月13日に「採用選考に関する指針」を発表した。その結果、次年度(2016年卒)の採用活動より、「広報活動開始」は3月1日以降、「選考活動開始」は8月1日以降とされた。選考活動の開始時期が後ろ倒しされるのは十数年ぶりなため、その影響範囲は大きく、様々な課題も残されている。
■【影響予測①】2016年卒のインターンシップ実施企業の増加
2016年卒のインターンシップの実施予定企業は36.0%と、今年2月調査の29.3%よりやや増加した。「まだ決まっていないが、実施する可能性が高い」を含めると52.9%と半数を超えており、以前よりも関心は高まっている。夏期の実施割合が高いことに変わりないが、秋・冬期の実施割合も増加傾向にある。特に12月(21.3%)と2月(20.5%)は2割を超えた。また、例年のインターンシップからの変更点は、「開催時期を1カ月以上後ろ倒す」が4.1%に対し、「夏だけでなく新たに秋や冬などにも行う」は38.5%、「インターンシッププログラムの種類を増やす」は17.6%で、時期や種類を増やす企業が多いことが分かった。(※5)
■【影響予測②】個別企業セミナーのピークは4~5月で、面接開始は8月が最多
広報活動開始が3月になったことで「課題となりうること」は、「母集団の減少」と「採用活動期間の短期化」が共に66.4%で最も多かったが、最も憂慮する課題では「母集団の減少」が28.6%で最多となった。「採用活動期間の短期化」を課題とする企業は、学生との接触に充てられる期間が減ることを懸念していると考えられる。個別企業セミナーの開催時期は約半数(48.8%)の企業が3月の広報活動開始と同時に開始し、ピークは4~5月となる事が予想される。(※6)
選考活動開始は「8月1日以降を遵守する」が26.4%、「7月31日以前から実施」が21.5%と、やや遵守する企業の割合の方が多い。「まだ決まっていない」企業に「実施するならいつか」を確認すると、7月以前と8月以降で意見が半々に分かれている。「まだ決まっていない」企業も含む面接開始時期は8月(42.9%)が最も多く、次いで多いのが4月(12.8%)となった。遵守しない企業は3月の広報開始から1カ月程度経った4月頃(現行スケジュールと同様の時期)から面接を開始するケースが多そうだ。(※7)
■【課題】採用時期変更で想定される企業側の課題(番号前◎マーク付きの3つの課題は詳細解説あり)
◎①Uターン学生との接触機会減少 → 接触方法・接触時期の再検討
②序盤戦の活動集中と競争の激化 → 母集団形成・セミナー動員に影響
◎③公務員試験はひと月遅れの5月末実施 → 官公庁とのバッティング増加
◎④理系学生の卒業研究期間・院進学試験と重複 → 理系学生が就職活動に割く時間の減少
⑤一部の企業で7月以前に選考を開始 → 選考前に辞退(活動を終了)する学生の増加
⑥大手企業中心に8月から選考開始 → 特定の学生に内々定が集中し、辞退率の読みが困難に
⑦選考開始から内定式まで2カ月 → 追加募集の期間短縮
⑧既卒未就労者の増加を予想する企業が6割(63.3%) → 未就労者に対する対応
⑨企業の活動終了予定時期は年内で8割 → 新入社員の受入れ準備・翌年の広報活動と重複
◎【課題】Uターン就職学生との接触機会減少
2016年卒では地元企業がUターン志望学生の採用を行うにあたり、主に3つの要因により接触機会の減少が予想される。毎年、Uターンイベントは年末年始の帰省時期の実施が多かったが、2016年卒ではその時期は3月の広報活動開始より前となるので、接触できても、個人情報の収集が困難になりそうだ。「2015年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」で地元外に進学した学生が地元企業との接触を希望する割合が最も高い3月は、広報活動開始直後のため、都市圏の企業も含めた厳しい競争となる。夏季休暇期間中は選考活動の本番を迎えており、帰省する学生の減少が予想される。
◎【課題】公務員試験日程とのバッティング
2016年卒では地方を中心に、民間企業と公務員とのバッティング増加が予想される。政府要請等による2016年卒の就職活動時期変更に伴い、国家公務員総合職の試験日程が1カ月程後ろ倒しとなる。また、一般職試験(大卒程度)と専門職試験(大卒程度)の最終合格発表日も若干後ろ倒しと発表された。地方公務員の日程はまだ公表されていないが、国の動きに合わせ若干後ろ倒しとなると考えられる。受験者数が減少傾向であるとはいえ、公務員試験の申込者数は国家公務員(院卒者・大卒程度)で約9万人。地方公務員も都道府県の行政・事務系だけでも約3.6万人で、就職環境に与える影響は大きい。
◎【課題】理系学生の学業と就職活動との両立が困難に
理系の場合、学士・修士共に卒業年次の学業と就職活動との両立が困難な状況が予想される。また大学院の試験日程を確認すると、今期は例年通り7~9月に実施する大学が78.1%となっている。次年度も変更されないと仮定すると、最終学年の約4割にあたる6万人近い理系修士進学志願者は、就職活動を通じて得られる職業情報に触れることなく、就職か進学かの進路選択を迫られる事になりそうだ。(※8)
<本文内データ出所>
(※1)「2015年卒企業規模別内々定獲得時期」出所:2015年卒マイナビ内定者意識調査
(※2)「選考辞退率は前年度と比べて」「内々定辞退率は前年度と比べて」
出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※3)「区分別学生の大手企業志向の割合」出所:2015年卒マイナビ大学生就職意識調査
(※4)「セミナー参加社数と選考受験社数」「合同説明会参加回数」「エントリーシートについて」
「就職活動にかかった費用」出所:2015年卒マイナビ学生就職モニター調査
(※5)「インターンシップ開催可能性の高い時期」「インターンシップ・例年の実施方法から変更する点」
出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※6)「次年度の広報活動開始が3月とされたことで課題となりうるもの」
「個別企業セミナー開催の可能性が高い時期」出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※7)「選考開始時期8月への対応」「面接開始時期」出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※8)「理工系修士の試験開始月【2014年実施予定時期】」
出所:2014年度マイナビキャリア・教育支援の取組み調査
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※「2014年度 就職戦線総括」の詳細は『採用サポネット』(http://saponet.mynavi.jp)で公開しています
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◆ 本件に関するお問い合わせ先 ◆
株式会社マイナビ
就職情報事業本部 HRリサーチセンター
TEL.03-6267-4571 FAX. 03-6267-4015
e-mail:hrrc@mynavi.jp
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◆ 当社に関するお問い合わせ先 ◆
株式会社マイナビ
社長室 広報部
TEL.03-6267-4155 FAX.03-6267-4050
e-mail:koho@mynavi.jp
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■【企業の採用活動状況】採用意欲が高まり、前年度より前倒しで活動
2015年卒の新卒採用において、企業の採用予定数は対前年度実績比15.1%増と大幅な増加となり、すべての業界で採用増となった。前年度実績(2014年卒)では対前々年度実績比で採用減だった「製造業(建設業を除く)」でも、理系を中心に12.1%増の採用を予定している。一方、採用基準や質・量の優先度では、ほぼ前年度並みの質を要求する傾向となったため、基準を満たす学生については激しい争奪戦の様相となった。それにより、採用環境が「厳しくなる(「非常に」を含む)」と予想する企業は前年度より大幅に増加し、文系の採用で54.6%(対前年度比16.2pt増)、理系の採用で62.2%(対前年度比20.9pt増)となった。そのような状況の中、企業の採用活動は前倒しのスケジュールで進み、選考活動を開始した直後の4月上旬に、大手企業の内々定出しはピークを迎えた。
■【企業規模別の内々定出し時期】規模が大きな企業ほど4月上旬・中旬に内々定を出した割合が高い
5月下旬までに内々定を獲得した学生に、内々定を獲得した時期と企業規模を聞いたところ、従業員規模の大きな企業ほど、4月上旬・中旬に内々定を出した割合が高いことが分かった。内々定を獲得した時期のピークは4月上旬で、全体では18.3%だが、従業員規模5,000人以上の企業では27.7%と集中度が高くなっている。従業員300人未満の企業では、4月下旬のピーク時でも17.0%で、3月下旬から5月下旬までの時期に比較的均等に分散する形となった。(※1)
■【選考辞退率と内々定辞退率】選考時期集中と複数内定保有者の増加で、選考辞退率・内々定辞退率は共に上昇
5月時点で面接の途中で選考を辞退した学生の割合は、選考時期が前年度より集中したことが影響で、前年度と比べて「上がった(大幅+やや)」と回答した企業が全体の35.2%に達し、「下がった(大幅+やや)」と回答した企業の割合の16.6%を18.6pt上回った。内々定を辞退した学生の割合も、前年度と比べて「上がった(大幅+やや)」と回答した企業が34.6%で、「下がった(大幅+やや)」の18.6%を16.0pt上回った。これは、採用予定数の増加と、採用の質を重視する企業の姿勢、そして複数内定保有者の割合の上昇が影響していると思われる。(※2)
■【学生の就職活動状況】活動は前倒して始まり、内々定率も改善
企業の旺盛な採用意欲を受けて学生はどう動いたのかを見てみると、エントリー平均社数は対前年度比18.3社増の92.4社だったが、個別企業セミナー平均参加社数は対前年度比1.6社減の24.7社となった。エントリーにより企業との接点は増えても、会場に足を運ぶという具体的な行動を伴う活動量は増えなかったようだ。エントリーシートの平均提出社数は横ばい(対前年度比0.3社減の16.8社)、前年度より通過率は上昇(対前年度比2.2pt増の60.1%)した。
1次面接のピークが1カ月前倒しの3月となり、最終面接も前倒しで進行した。平均選考受験社数は前年度並みで、内々定を受けた時期は4月上旬に集中し、対前年度比3.4pt増の26.6%となった。5月末の内々定率は対前年度比3.8pt増の52.8%と、2年連続全カテゴリーで前年度実績を上回り、過半数の学生が内々定を保有するまでになっている。複数内定保有者の割合は、この2年で6.0pt上昇した(2013年卒5月:32.1% → 2015年卒5月:38.1%)。採用環境の好転を受けて、4月から5月上旬にかけて学生の意思決定が遅れる様子も見られたが、5月末にはほぼ例年並みとなり、活動の収束が見られる。
■【内定率に影響のある学生の特徴】「コミュニケーション能力」を武器とする学生の内定率が高い結果に
就職活動において、どのような特徴のある学生が早期に内々定を獲得するのかを分析するため、「就職活動における最大の武器」「自分に欠けていると思うもの」という質問に対する回答選択肢別に内定率(4月末時点、調査対象学生人数1,487名における内定率は43.5%)を算出した。「就職活動における最大の武器」では、内定率が最も高かったのは「コミュニケーション能力」を選んだ学生で対全体比9.7pt増の53.2%となった。また、「自分に欠けていると思うもの」で、最も内定率が低くなったのも「コミュニケーション能力」を選んだ学生で、対全体比12.5pt減の31.0%だった。「コミュニケーション能力」は、それを最大の武器であると自己評価する場合にも、「自分に欠けている」と自己評価する場合にも、どちらも内定率に大きな影響があることが分かった。
■【学生の層による志向および行動の違い】エリア・属性によって大手志向や活動量に差
大手企業志向の違いを男女、大学種別、居住地域別に見てみると、国公立男子の場合、関東・関西地域で大手志向の割合は60%以上と高い。一方、女子学生は「私立文系」「関東・関西以外の地域」を中心に大手企業志向は30%台と低い傾向にある。(※3)
また、関東、関西、東海とその他地域に分けて活動量を見ると、合同企業説明会への参加回数については、「その他地域」が累計で一番多く、1月、2月に他地域よりも参加回数が多い。しかし、個別企業セミナーへの参加、選考受験社数やエントリーシートへの取り組みなど、個別の企業に対する活動は関東・関西の方が多い。また、就職活動にかかった費用については、「その他地域」が最も高くなっている。(※4)
■【採用活動時期変更の影響と課題】2016年卒は選考活動時期変更で採用活動に大きな変化が予測される
2013年(平成25年)4月19日の、首相による経済3団体への要請に端を発し、その要請を受けた日本経済団体連合会(経団連)がこれまでの「採用選考に関する企業の倫理憲章」を改め、同年9月13日に「採用選考に関する指針」を発表した。その結果、次年度(2016年卒)の採用活動より、「広報活動開始」は3月1日以降、「選考活動開始」は8月1日以降とされた。選考活動の開始時期が後ろ倒しされるのは十数年ぶりなため、その影響範囲は大きく、様々な課題も残されている。
■【影響予測①】2016年卒のインターンシップ実施企業の増加
2016年卒のインターンシップの実施予定企業は36.0%と、今年2月調査の29.3%よりやや増加した。「まだ決まっていないが、実施する可能性が高い」を含めると52.9%と半数を超えており、以前よりも関心は高まっている。夏期の実施割合が高いことに変わりないが、秋・冬期の実施割合も増加傾向にある。特に12月(21.3%)と2月(20.5%)は2割を超えた。また、例年のインターンシップからの変更点は、「開催時期を1カ月以上後ろ倒す」が4.1%に対し、「夏だけでなく新たに秋や冬などにも行う」は38.5%、「インターンシッププログラムの種類を増やす」は17.6%で、時期や種類を増やす企業が多いことが分かった。(※5)
■【影響予測②】個別企業セミナーのピークは4~5月で、面接開始は8月が最多
広報活動開始が3月になったことで「課題となりうること」は、「母集団の減少」と「採用活動期間の短期化」が共に66.4%で最も多かったが、最も憂慮する課題では「母集団の減少」が28.6%で最多となった。「採用活動期間の短期化」を課題とする企業は、学生との接触に充てられる期間が減ることを懸念していると考えられる。個別企業セミナーの開催時期は約半数(48.8%)の企業が3月の広報活動開始と同時に開始し、ピークは4~5月となる事が予想される。(※6)
選考活動開始は「8月1日以降を遵守する」が26.4%、「7月31日以前から実施」が21.5%と、やや遵守する企業の割合の方が多い。「まだ決まっていない」企業に「実施するならいつか」を確認すると、7月以前と8月以降で意見が半々に分かれている。「まだ決まっていない」企業も含む面接開始時期は8月(42.9%)が最も多く、次いで多いのが4月(12.8%)となった。遵守しない企業は3月の広報開始から1カ月程度経った4月頃(現行スケジュールと同様の時期)から面接を開始するケースが多そうだ。(※7)
■【課題】採用時期変更で想定される企業側の課題(番号前◎マーク付きの3つの課題は詳細解説あり)
◎①Uターン学生との接触機会減少 → 接触方法・接触時期の再検討
②序盤戦の活動集中と競争の激化 → 母集団形成・セミナー動員に影響
◎③公務員試験はひと月遅れの5月末実施 → 官公庁とのバッティング増加
◎④理系学生の卒業研究期間・院進学試験と重複 → 理系学生が就職活動に割く時間の減少
⑤一部の企業で7月以前に選考を開始 → 選考前に辞退(活動を終了)する学生の増加
⑥大手企業中心に8月から選考開始 → 特定の学生に内々定が集中し、辞退率の読みが困難に
⑦選考開始から内定式まで2カ月 → 追加募集の期間短縮
⑧既卒未就労者の増加を予想する企業が6割(63.3%) → 未就労者に対する対応
⑨企業の活動終了予定時期は年内で8割 → 新入社員の受入れ準備・翌年の広報活動と重複
◎【課題】Uターン就職学生との接触機会減少
2016年卒では地元企業がUターン志望学生の採用を行うにあたり、主に3つの要因により接触機会の減少が予想される。毎年、Uターンイベントは年末年始の帰省時期の実施が多かったが、2016年卒ではその時期は3月の広報活動開始より前となるので、接触できても、個人情報の収集が困難になりそうだ。「2015年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」で地元外に進学した学生が地元企業との接触を希望する割合が最も高い3月は、広報活動開始直後のため、都市圏の企業も含めた厳しい競争となる。夏季休暇期間中は選考活動の本番を迎えており、帰省する学生の減少が予想される。
◎【課題】公務員試験日程とのバッティング
2016年卒では地方を中心に、民間企業と公務員とのバッティング増加が予想される。政府要請等による2016年卒の就職活動時期変更に伴い、国家公務員総合職の試験日程が1カ月程後ろ倒しとなる。また、一般職試験(大卒程度)と専門職試験(大卒程度)の最終合格発表日も若干後ろ倒しと発表された。地方公務員の日程はまだ公表されていないが、国の動きに合わせ若干後ろ倒しとなると考えられる。受験者数が減少傾向であるとはいえ、公務員試験の申込者数は国家公務員(院卒者・大卒程度)で約9万人。地方公務員も都道府県の行政・事務系だけでも約3.6万人で、就職環境に与える影響は大きい。
◎【課題】理系学生の学業と就職活動との両立が困難に
理系の場合、学士・修士共に卒業年次の学業と就職活動との両立が困難な状況が予想される。また大学院の試験日程を確認すると、今期は例年通り7~9月に実施する大学が78.1%となっている。次年度も変更されないと仮定すると、最終学年の約4割にあたる6万人近い理系修士進学志願者は、就職活動を通じて得られる職業情報に触れることなく、就職か進学かの進路選択を迫られる事になりそうだ。(※8)
<本文内データ出所>
(※1)「2015年卒企業規模別内々定獲得時期」出所:2015年卒マイナビ内定者意識調査
(※2)「選考辞退率は前年度と比べて」「内々定辞退率は前年度と比べて」
出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※3)「区分別学生の大手企業志向の割合」出所:2015年卒マイナビ大学生就職意識調査
(※4)「セミナー参加社数と選考受験社数」「合同説明会参加回数」「エントリーシートについて」
「就職活動にかかった費用」出所:2015年卒マイナビ学生就職モニター調査
(※5)「インターンシップ開催可能性の高い時期」「インターンシップ・例年の実施方法から変更する点」
出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※6)「次年度の広報活動開始が3月とされたことで課題となりうるもの」
「個別企業セミナー開催の可能性が高い時期」出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※7)「選考開始時期8月への対応」「面接開始時期」出所:マイナビ2016年卒採用等に関する企業調査
(※8)「理工系修士の試験開始月【2014年実施予定時期】」
出所:2014年度マイナビキャリア・教育支援の取組み調査
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