相模原市のデジタル教科書と学習データの活用に関する共同研究成果を発表
学習成果等のデータ蓄積・可視化が授業や指導の支援となる可能性を確認
本共同研究の成果として、デジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが明らかになりました。また、児童生徒の思考時間が増え、考えを可視化することで意見の交流活動が活性化したこともわかりました。
*1 共同研究成果の詳細: https://kyouikucenter.sagamihara.andteacher.jp/modules/hp_jpage5/
【令和4年度共同研究の概要と目的】
2019年12月に閣議決定されたGIGAスクール構想により、1人1台のタブレットPCおよび学校の高速通信回線の整備が進んでいます。ICTツール等を活用した「教育現場におけるDX化」、「教育の情報化」が加速する中で、「デジタル教科書」が令和6年度に本格導入されます。これに先立ち、「相模原市教育委員会・ネットワンシステムズ株式会社・大日本印刷株式会社・光村図書出版株式会社・放送大学学園(中川一史研究室)による授業中のデジタル教科書の成果物・テスト結果等のデータを用いた指導と評価に関する授業実践共同研究」に、2022年4月から2023年3月まで取り組みました。デジタル教科書を活用した授業方法を開発し、相模原市の小・中学校で実証を行いました。
本共同研究の目的は、デジタル教科書や、授業支援ツール等を用いた授業を通じた、教員の授業・指導方法の開発や評価改善の研究です。加えて、収集した学習履歴データの活用や児童生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成につなげることも目的としました。
【令和4年度共同研究の成果】
本共同研究の成果として、デジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが明らかになりました。
黒板の内容をノートに書き取る時間が減ることで、授業中の児童生徒の思考時間が増えました。それにより、考えをデジタル教科書や授業支援ツール上で整理することができる時間も生まれ、その結果、お互いの意見を交流させる活動が活性化しました。また、デジタル教科書や「マイ黒板(本文抜き出し機能)」への書き込みが、デジタルデータとして残ることで、個人の学びの過程が可視化されました。この書き込みや「振り返りシート」を学習成果物と捉え、それらをデータとして蓄積・可視化することで、児童生徒が自ら学習を分析し、自己調整する能力の育成につながります。
実証授業に参加した中学生からのデジタル教科書への評価は高く、87%の生徒から、学習に取り組みやすくなったという回答がありました。
■相武台中学校の生徒(31名回答)のデジタル教科書の評価
Q1.本文への書き込みやマイ黒板を利用し学習に取り組みやすくなった。
・「そう言える」+「どちらかと言えばそう言える」:27人
・「変化はない」+「紙の教科書、ノートの方がそうだった」:4名
Q3.デジタル教科書を使用することで自分の考えを整理し、表現しやすくなった。
・「そう言える」+「どちらかと言えばそう言える」:25人
・「変化はない」+「紙の教科書、ノートの方がそうだった」:6人
加えて、教育現場におけるデジタル教科書をはじめとするICTツールを用いたデータの収集・活用には、安定した通信環境が必要不可欠であるため、教育現場でのネットワークインフラ基盤は重要な役割を担うと言えます。
【共同研究の手法(サマリー)】
1.デジタル教科書を活用した授業方法の開発
令和4年度の研究では、実証授業前に教員と研究メンバーで指導案を検討し、児童生徒の主体的な活動時間や対話を行う活動時間の確保を意識した指導案を作成しました。その上で、学習者用デジタル教科書の操作方法や活用方法について、教員と児童生徒間で学び合う時間を取って授業に臨みました。また、授業後の記録を基にした協議を経て、授業のあり方を記録に残しました。
2.学習活動の状況
学習者用デジタル教科書に書き込んだ内容や、「マイ黒板」によって可視化した考えを基に話し合いを行いました。紙のワークシートの運用やノートを取ることによる負担が減少し、児童生徒の思考する時間が確保され、意見交流の活動が活性化しました。
3.収集データの分析
中学校の生徒を対象に、自分の学びを客観的に振り返ることができる「振り返りシート」を作成し記入してもらいました。このツールの活用を通じて、毎時間の授業の内容を自分自身や他の生徒の言葉で記録し、単元の最後に授業全体の振り返りを行いました。さらに継続的に記録を蓄積することで、生徒の学習内容を分析することが可能となります。
■相模原市教育委員会 教育局学校教育部教育センター総括副主幹 表木 誕様からのコメント
今回の共同研究は、実践者である先生方の意欲とチャレンジに支えられ実施することができました。また、そこから得られた資料やデータを基に、共同研究に参加いただいた各者の強みを活かすことで、新たな可能性を見いだすことができました。先生の授業改善に向かう意識が大きく変化し、何より、児童生徒が自ら学びに向かう姿や、児童生徒の思考や表現が活性化したこと等の姿が見られたことは、今回の実証の大きな成果の一つです。また、デジタル教科書や採点システム等を活用し、そこから得られた教育データを効果的に利活用することにより、先生の見取りを視覚化・分析し、指導や授業の改善等がますます進んでいくと感じました。
このことを踏まえ、本市において、ICTの効果的な活用はもちろんのこと、児童生徒の資質・能力の育成に向けた教育活動全般においての教育データ利活用について、さらなる検討を進めていきます。実践者の先生方、共同研究に参加いただいた各者の皆様とともに研究を進めることができたことに感謝申し上げます。
【今後の展望】
DNPは、相模原市をはじめとした複数の自治体において、2023年度も学習データの活用に関連する共同研究を行っています。これらの実証の成果を基に、教員や児童生徒が学習データを活用できるシステムの開発を行い、2024年度内の本格的なサービス化を目指します。
【会社紹介】
○大日本印刷株式会社(DNP)について(https://www.dnp.co.jp/)
1876年の創業以来、幅広い事業分野で多様な製品・サービスを提供する世界最大規模の総合印刷会社です。独自の「P&I」(印刷と情報:Printing & Information)の強みを活かし、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に取り組んでいます。教育分野では、教員の働き方改革やデータを活用した指導の質の向上に寄与する「DNP学びのプラットフォーム『リアテンダント®』」*2を展開し、約240の自治体(学校)に採用されています。
○ネットワンシステムズ株式会社について(https://www.netone.co.jp/)
ネットワンシステムズ株式会社は、お客様が利用するビジネスアプリケーションを、ネットワーク技術を駆使し、プライベートクラウド/パブリッククラウドを包括してセキュアに支える「クラウドシステム」を提供する企業です。そのために、常に世界の最先端技術動向を見極め、その組み合わせを検証して具現化するとともに、実際に自社内で実践することで利活用ノウハウも併せてお届けしています。
○光村図書出版株式会社について(https://www.mitsumura-tosho.co.jp/)
1949(昭和24)年創⽴の検定教科書の発⾏を中⼼とした出版社です。⼩学校では国語・書写・⽣活・英語・道徳、中学校では国語・書写・美術・英語・道徳、⾼等学校では書道・美術の教科書を発⾏しており、総発⾏部数は、業界第2位のシェアを占めております。また、いち早くデジタル教科書の研究開発に取り組み、業界のリーダーとして教育の情報化を進めております。
*2 DNP学びのプラットフォーム リアテンダントについて → https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1192360_1567.html
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