月経痛を主訴とした月経随伴症状に対する実態調査に基づく、受診勧奨評価指標の開発

自身の状態に向き合う― 月経随伴症状の「受診の目安」を示す新たな評価指標を開発―

ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、女性の健康と社会参加の基盤に関わる月経随伴症状に着目し、医療機関受診の判断を支援する新たな受診勧奨評価指標を開発しました。

当社はこれまで、妊娠検査薬の普及や妊活に関する啓発活動、フェムケア商品の提案などを通じて、女性のライフステージに寄り添った取り組みを続けてきました。しかしながら、月経痛をはじめとする月経随伴症状については、「月経痛はあって当然」「この程度で受診してよいのか分からない」といった社会的通念や心理的ハードルにより、適切な医療につながりにくい現状があります。

本成果は、女性が自らの健康状態を可視化し、適切な医療へアクセスするきっかけを生み出すことを目指すものです。だれもが自らの身体を正しく理解し、健やかに働き、活躍できる未来社会の実現に向けて、今後も科学的根拠に基づく研究と情報発信を続けてまいります。

本研究成果は「先端医療と健康美容 2025 Vol.12 No.4 (2025年11月14日付)」に掲載されました。

1.研究成果のポイント

月経随伴症状に関する受診判断を客観化することを目的に、症状や生活への影響を統合した受診勧奨評価指標を開発しました。

◆ 月経痛の程度、鎮痛薬服用頻度、日常生活への支障などを基に、統計学的手法により受診勧奨評価指標を構築

◆ ROC解析の結果、本指標は従来の月経困難症スコア(AUC=0.916)と比較して、より高い判別性能(AUC=0.970)を示した

◆ 本指標は疾患の有無を診断するものではないが、女性が自身の症状を客観的に把握し、適切な医療アクセスを検討するための判断材料となる可能性を示した

 

2.研究の背景 

月経困難症は、月経に随伴して生じる下腹部痛や腰痛を主症状とする病的症状を指し、子宮内膜症や子宮腺筋症などの疾患を伴った「器質性月経困難症」と、器質性疾患を認めない「機能性月経困難症」に分類されます1)。器質性月経困難症の場合、原因疾患の進行に伴い疼痛の慢性化や生殖機能への影響が生じる可能性があることから、早期診断と適切な治療介入が重要とされています。また、機能性月経困難症は主にプロスタグランジンの過剰産生による子宮収縮を原因とした強い痛みを伴い、学業や就労への支障に繋がることがあります。

月経のある女性の約7割が月経時に何らかの痛みを経験しているとされる2)一方で、自身の痛みの程度を他者と比較する機会は乏しく、「月経痛はあって当然」という社会的通念も根強く存在しています。医療機関を受診するか否かは依然として本人の主観的判断に委ねられており、受診率は必ずしも高いとはいえません。強い月経痛を放置することは女性のQOL低下を招くだけではなく、場合によっては疾患の進行に繋がる可能性が指摘されています。

現在、日常生活への支障度と鎮痛薬の使用頻度を基に重症度を評価する「月経困難症スコア」が月経困難症の簡易な指標として臨床現場で用いられています。月経困難症スコアは2問の項目に回答することで、簡易に評価することができるメリットがありますが、症状による日常生活への影響や困りごとを項目に加えることで、より判別性能が高い受診勧奨評価指標の開発が可能なのではないかと考えました。そこで本研究では、従来用いられている指標を参考にしつつ新たな評価項目を加えることで、より判別性能が高い受診勧奨評価指標の開発を目指しました。

 

3.方法

月経痛を有する女性を対象として観察研究を行いました。対象者に対し、月経随伴症状や日常生活への影響、鎮痛薬の使用状況等に関する詳細なアンケート調査(全項目数:37問)を行うとともに、経腟超音波断層法検査を実施し、子宮内膜症や子宮腺筋症を含む器質的所見の有無を評価しました。

月経困難症で医療機関を受診している群と、月経痛を有しながら医療機関を受診していない群の2群間でアンケート結果を比較し、両群間に有意差が認められたアンケート項目を抽出しました。抽出した項目をスコア化し、受診勧奨評価指標を作成しました。その上で、ROC解析(Receiver Operating Characteristic解析)を用いて、開発した受診勧奨評価指標と、従来用いられている「月経困難症スコア」についてROC解析を行い、両指標のAUCを比較することで、判別性能を比較しました。さらに、経腟超音波断層法検査の結果との比較により、本指標による器質性疾患予測の限界についても検討しました。

ROC解析(Receiver Operating Characteristic解析)とは?

ROC解析は、ある指標や検査が「どの程度うまく見分けられているか」を評価する統計手法です。スコアを用いて病者と健常者を判定する時、どこを基準値(カットオフ値)とするかによって、判定結果は変わります。基準を厳しくすれば、病者の見逃しは減りますが、誤って健常者を病者と判断してしまう頻度が増えます。逆に、基準を緩くすれば、健常者を病者と判断してしまう頻度は減りますが、病者を見逃しやすくなります。ROC解析では、「できるだけ見逃さずに、かつ誤判定を増やさない」というバランスを、基準を変えながら総合的に評価します。その結果を表したものがROC曲線です。また、ROC曲線の下の面積をAUC(Area Under the Curve)といい、判別性能を1つの数値で示します。AUCは1.0に近いほど精度が高く判別性能が高いことを、0.5は偶然と同程度であることを意味します。

 

4.結果

月経随伴症状に関するアンケート調査(全項目数:37問)において、月経困難症であり医療機関を受診している群と、月経痛を有しながら医療機関を受診していない群を比較した結果、日常生活への支障や鎮痛薬の使用状況、月経時の随伴症状などに関する11問のアンケート項目において、両者の間に有意な差が認められました。これらの有意差が認められたアンケート項目についてスコア化を行い、受診勧奨評価指標を作成しました(図1)。

ROC解析による評価の結果、本研究で作成した受診勧奨評価指標は、従来用いられている月経困難症スコアと比較して高いAUC値を示しました(本研究で開発した受診勧奨評価指標のAUC=0.970, 月経困難症スコアのAUC=0.916, 図2)。これは、本指標が医療機関受診の必要性が高い対象者を、より適切に識別できる可能性を示唆しています。

一方で、経腟超音波断層法検査で器質性所見がある方すべてを受診勧奨評価指標において受診勧奨対象と判断することはできておらず、本指標のみで器質性疾患の有無を正確に予測することには限界があることも明らかとなりました。疾患でないことを保証するものではないが、受診を後押しするものになることを期待します。

図1. 開発した受診勧奨評価指標

5.本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、月経痛をはじめとする月経随伴症状について、女性自身が「受診すべきかどうか」を客観的に判断できる新たな評価指標が示されました。本指標は、月経痛を我慢している状態を可視化し、適切な受診行動を促すことにより、生活の質の低下や疾患進行リスクの軽減に寄与することが期待されます。女性の悩みに寄り添った取り組みを行ってきたロート製薬は、本研究を通じて、女性が自らの身体を理解し、主体的にケアできる社会の実現に貢献していきたいと考えています。

 

<用語説明>

判別性能:

ある指標や検査が、対象となる2つの状態(例:疾患がある/ない、受診が必要/不要など)をどれだけ正しく見分けられるかを示す能力のこと。判別性能が高いほど、本来該当する人を見逃さず、かつ該当しない人を誤って判定する割合が少ないことを意味する。

子宮内膜症:

本来は子宮の内側にある子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所で増殖する病気。

子宮腺筋症:

本来は子宮の内側にある子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉の中(子宮筋層内)に入り込み、増殖する病気。

器質性疾患:

検査によって体の構造的な異常が確認できる病気のこと。月経痛の場合、子宮内膜症や子宮筋腫などが含まれる。

生殖機能:

妊娠・出産に関わる身体のはたらきのこと。女性では、卵子の成熟や排卵、受精、子宮内での妊娠の維持などがあり、これらが正常に働くことで妊娠・出産が可能となる。

プロスタグランジン:

体内でつくられる生理活性物質の一種で、痛みや炎症、発熱などに関与する物質。月経時には子宮内膜で産生され、子宮を収縮させて経血を排出する働きを担う。この作用が強くなりすぎると、子宮の過度な収縮を引き起こし、月経痛の原因となることがある。

経腟超音波断層法検査:

超音波の機器を腟から挿入し、子宮や卵巣の状態を詳しく観察する検査。婦人科疾患の有無を確認するために用いられる。

 

<参考文献>

1) 百枝幹雄. インフォームドコンセントのための図説シリーズ 月経困難症 月経痛とその関連疾患を知る


2) 財団法人女性労働協会.“ 月経痛 働く女性の健康に関する実態調査結果”. 働く女性の身体と心を考える委員会報告書. 働く女性の身体と心を考える委員会 編. 2004.

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医薬・製薬医療・病院
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会社概要

ロート製薬株式会社

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URL
https://www.rohto.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
大阪府大阪市生野区巽西1丁目 8番1号
電話番号
06-6758-1231
代表者名
瀬木英俊
上場
東証1部
資本金
64億4600万円
設立
1949年09月