ハウス⾷品グループと北海道タマネギ農家が、タマネギの⽣産安定化と⾷卓での価値向上に共に取り組む⽣産者グループ「明⽇もタマネギ⽣産を続ける会(あすたま会)」発⾜

データを駆使した農業やタマネギの価値訴求などに注⼒

ハウス⾷品グループ本社株式会社は、北海道の13軒のタマネギ⽣産者と共にタマネギの⽣産安定化や⾷卓での価値を⾼める取り組みを実施する⽣産者グループ「明⽇もタマネギ⽣産を続ける会(あすたま会)」を、2025年6⽉20⽇に発⾜しました。

13軒のタマネギ⽣産者は、ハウス⾷品グループが開発した⾟みがほとんどなく⽣のままのおいしさを楽しめる「涙のでない、⾟みのないタマネギ『スマイルボール』」をはじめ、様々な品種のタマネギを⽣産しています。そうした中、2015年から「スマイルボール」の⽣産・販売を進める中で感じたタマネギ⽣産・販売を取り巻く課題への対策の必要性を強く感じ、バリューチェーン全体で取り組むため本会を設⽴することとなりました。

2025年6月 あすたま会 発足式
⽣産圃場の「スマイルボール」 左︓7⽉、右︓8⽉

■「明⽇もタマネギ⽣産を続ける会(あすたま会)」 発⾜について

①「あすたま会」発⾜の背景 

ハウス⾷品グループが開発した「涙のでない、⾟みのないタマネギ『スマイルボール』」は2015年から北海道の契約農家で⽣産し販売しています。「スマイルボール」の栽培の中で、昨今の気候変動による夏の集中豪⾬や酷暑がタマネギの⽣産に与える影響の⼤きさや農業⽣産⼈⼝の減少など様々な課題への対策が求められていることを強く感じていました。そこで、「スマイルボール」の⽣産を担う契約農家と⼀緒に、タマネギ⽣産を詳細にデータ化した「データ駆動型農業」※と品種開発を開始し活動を進めています。 

また、タマネギ⽣産を持続させるためには、実際にタマネギを召し上がるお客様に価値を感じていただくことが不可⽋です。そこで、バリューチェーンの出⼝となる⾷卓での価値向上に取り組むために、2023年に株式会社農業総合研究所とハウス⾷品グループ本社が資本業務提携を進め、野菜のブランディングにも着⼿してまいりました。 

これらの活動をより発展させていくことを⽬指し、⽣産安定化のための“農の場⾯”と消費者にタマネギの価値を届ける“⾷卓の場⾯”を活動の主領域とした⽣産者グループ「明⽇もタマネギ⽣産を続ける会(あすたま会)」を設⽴することとなりました。

※データや AI、最新の技術などを活⽤し、⽣産性の向上や効率化、品質を向上させる農業 

②活動内容と展望

「あすたま会」は、タマネギの⽣産安定化に向けた取り組みと、⾷卓での価値づくり・推進に向けた取り組みを活動の両輪としています。詳細な⽣産データ取得による「データ駆動型農業」を進め、タマネギ⽣産の注⼒点を⾒出し、⽣産安定に向けた⽣産の⼿順作りとともに、天候の変化に強い品種への改良や、もっとおいしいタマネギの開発などに取り組みます。 

また、⾷卓での価値づくりのために、タマネギのおいしさ訴求や野菜を知り、触り、⾷べるを⼀体とした⾷育に取り組みます。 

最終的には天候が不安定な昨今でも⼀定の質と量のタマネギを⽣産・出荷できることを⽬的に、中間業者から“選ばれる⽣産者グループ”になることを、そして、お客様の⾷卓でも話題に上るようなタマネギを提供し続けることを⽬指します。

■「明⽇もタマネギ⽣産を続ける会(あすたま会)」 概要

<参画団体⼀覧>

・ハウス⾷品グループ本社株式会社 アグリビジネス推進部 

・北海道 空知エリア(栗⼭町、由仁町、岩⾒沢市)タマネギ⽣産者 10 名 

・北海道 富良野エリア(富良野市) タマネギ⽣産者 3 名

<代表者コメント>

・ハウス⾷品グループ本社株式会社 アグリビジネス推進部 正村 典也

「涙のでない、⾟みのないタマネギ『スマイルボール』」の⽣産に取り組む中で、毎年の⽣育の違いやキーとなる⽣産ステップを明らかにするために「データ駆動型農業」を⽬指してきています。そして、これは「スマイルボール」の⽣産だけでなく、タマネギ⽣産全体への活⽤の可能性があると感じています。 

また、「スマイルボール」をお客様にお届けする中で、多くの野菜が⾷卓の脇役に留まっていると感じています。「野菜はもっと楽しいものだ︕」と感じてもらうことで野菜の需要が⾼まり、⽣産の持続性にもつながると考えています。

野菜の⽣産から消費までのバリューチェーンを捉えた考え⽅のもと、⽣産者に加えて、今後は流通、販売に携わる⽅々にも参画いただき、「あすたま会」をバリューチェーン全体で⽣産の持続可能性を探る試みの先⾏事例にしたいと考えています。

・タマネギ⽣産者 ⻄野 恒さん

世界最初の「涙のでない、⾟みのないタマネギ『スマイルボール』」の⽣産に2015年から取り組んでいます。 

天候の影響を受けやすいタマネギでもあり、⽣産のハードルが⾼いと感じていました。品種改良と丁寧な⽣育データを取り進め、ハウス⾷品グループと⽣産者が⼀つのテーブルで意⾒交換してきたことで、「スマイルボール」の⽣産は、少しずつ安定してきたと感じます。

「スマイルボール」は⾷べたら忘れられないタマネギだと思います。⽣産と⾷卓価値を組み合わせて、待っていただいている⾷卓にお届けする仕組みづくりを皆さんと進めていきます。

<参考情報>   

■ハウス⾷品グループの付加価値野菜系バリューチェーン

ハウス⾷品グループは、グローバルなバリューチェーン(VC)構築で成⻑を⽬指し、「⾷で健康」をお届けするために活動しています。その VC の⼀つとして付加価値野菜系 VC では、「独⾃品種開発を起点にしたタマネギ」と「変化の激しい外的環境に対応した環境制御型野菜」を「ブランディングする」という VC を共創パートナーと共に探索しています。

これまでアグリビジネスの肝である安定品質・安定⽣産課題の克服に多くの時間を費やしてきましたが、各産地に密着した活動により知⾒が蓄積され、産地形成の基盤が整いつつあります。

今後は、データ駆動型でサステナブルな農業⽣産、⻑期の品質保持を実現する⼯程管理、野菜の価値を需要に変えるブランディングを実践する共創プラットフォームを構築し、「また明⽇も⾷べたくなる野菜」を⾷卓へ継続的にお届けするコンセプトの実現をめざしていきます。

■ハウス⾷品グループの進めている⽣産データの取得とデータ駆動型農業について

タマネギは1年に1回の⽣産機会しかない作物です。そのような作物に対して、毎年異なる天候の中で⽣産に取り組み、そこで得られた知⾒や技術の積み重ねによって、⽣産が成り⽴っています。 

「スマイルボール」の⽣産を安定させる中で、⼀⼈⼀⼈の⽣産者が持つ知⾒を⾒える形にしてきました。⽣産者にとっての当たり前をデータで⽰し、それを⽇々、⽣産者と共有し、さらに年2回の⽣産者⼤会でデータを⾒ながら意⾒交換を⾏い、「⽣産者-ハウスの one team」の知⾒にしていくことを進めています。

データ取得は、圃場で⽣育しているタマネギを詳しく観察し、重さや⻑さを計測する⽇々の活動とIoT機器からの気象データ、さらには衛星写真からの解析サービスも活⽤しています。 

そのようにして得た植物の状態データと気象データを掛け合わせて解析し、今年はどのような年なのか、ここまでは順調だったのか、これから先はどう進んでいくのかを考察し、⽣産現場の次の⼀⼿を⽣産者と共に探ったり、来年の取り組みの設定を進めたりしています。

スマイルボールの部位ごとの⽣育曲線(上)とそれぞれの時期の植物体の外観
⽣産圃場の天候の⽐較(2023 年と 2024 年) 

■30年以上に及ぶハウス⾷品グループのタマネギ研究の道のり

1990年代〜

レトルトカレーの製造時にタマネギとニンニクを炒めるときつね⾊にならず、緑⾊に変⾊してしまうことがあった。この製造⼯程の不具合の原因解明・ 解決の研究を始める。 

研究を進めていく中、それまでの定説ではタマネギが涙のでる成分(催涙成分)を作る仕組みを説明できないことに気づき、研究を進める。 

左︓きつね⾊になった普通のペースト、右︓緑⾊になったペースト

2002年

催涙成分を作り出す新規酵素(LFS)を発⾒し、催涙成分の⽣成が下図のようにアリイナーゼと LFS が順番に働くことで進むことを明らかにし、学術雑誌「Nature」に発表。

催涙成分が⽣成される仕組みが解明できたことで、この仕組みがない新品種のタマネギが作れれば「涙のでないタマネギ」が開発可能と考える。研究は次のステップとなる重イオンビームを⽤いた突然変異育種による品種作出をスタート。

タマネギ催涙成分(LF)⽣成の反応経路

2012年

催涙成分を⽣成する 2 段階反応のうち酵素「アリイナーゼ」の量が⾮常に少ないため涙がでない、⾟みのないタマネギ(後に“スマイルボール”)を作ることに成功。

2013年

2002 年の「Nature」掲載論⽂が評価され、イグ・ノーベル化学賞を受賞。涙がでる⾟み成分を⽣成するきっかけとなる催涙因⼦合成酵素の発⾒は「タマネギが⼈を泣かせる⽣化学的なプロセスは、科学者が考えていたより複雑であることを、明らかにした」と評価。

イグ・ノーベル化学賞受賞の様⼦

2015年

「スマイルボール」の販売を開始。

『涙を流さなくなることで、全てのお客様が笑顔になる新しいタマネギでありたい。これまでのタマネギにとらわれず、新しい⾷べ⽅や⾷シーンをお客様と⼀緒に(キャッチボールをしながら)創造できるタマネギでありたい。』という想いを込め、“笑顔”と“ボール”を組み合わせて「スマイルボール」と命名。

2021年

LFSを抑制することで、タマネギ中で増加する新たな機能性成分を発⾒。

2022年

保存性の⾼い催涙キットを開発し、弘前 COI※の⼤規模健診にて涙液採取に活⽤。涙液成分と健康との関係を解析する研究を展開。

催涙キット
⼤規模健診にて催涙を採取

※2013年から弘前⼤学を中⼼に活動する「⾰新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」 の⼀つ。
10年後のあるべき社会や暮らしの実現に向け、課題に対して産学連携で研究を重ね、社会実装を⽬的とする取り組み。

2025年

⽇本農芸化学会 2025 年度札幌⼤会において、「涙のでないタマネギ『スマイルボール』とその関連技術の開発」が、農芸化学技術賞を受賞。

■⽣で⾷べても⾟くない、栄養をまるごと摂れる、涙がでない。魅⼒たっぷりのスマイルボール

⼀般のタマネギは、リンゴやナシに近い 10〜11 度の糖度を⽰します。しかし、切ったときに発⽣する⾟み成分が⽢みを隠してしまい、⽢みを感じにくくしています。

「スマイルボール」は⾟み成分の発⽣に関わる酵素が少なく⾟みをほとんど感じないので、タマネギの持っている⽢みをそのまま実感することができます。また、⽣で⾷べる時に⽔にさらす必要がない「スマイルボール」は、調理の⼿間が省けるうえ、栄養成分の流失を抑えることができます。切ったとき⽬にしみることがなくニオイも⼿に付きづらいので、調理のハードルも低くなります。 

⽣で⾷べても⾟くない、栄養をまるごと摂れる、涙がでない。魅⼒たっぷりの「スマイルボール」は、料理をする⼈も⾷べる⼈もハッピーにする新しいタマネギです。

⼀般のタマネギ

新タマネギ

スマイルボール

特徴

⼀般的なタマネギ

ほぼ⼀年中流通

3〜5 ⽉限定の

みずみずしくて 

⾟みの弱いタマネギ

ハウス⾷品グループが開発した

⾟みがほとんどないタマネギ

⽣⾷したときの⾟み

強い

弱い

ほぼ感じない

⽣⾷したときの⽢み

⾟みに隠れて 

感じない

⾟みが弱いので 

少し感じる

⾟みがほぼないので 

感じる

水分

約90%

約95%

約90%

糖度

10〜11度程度

5〜6度程度

10〜11度程度

ケルセチン※

基準=1.0

0.25程度

1.0程度

*ポリフェノールの⼀種。タマネギに多く含まれる健康成分として近年注⽬されています。

⽣産の詳細なデータ解析と品種改良を進めてきた結果、2024年から、⽣産安定化が進んでおり、今年度から徐々に⽣産拡⼤を進め、販売を拡げていく予定です。

また、「スマイルボール」は催涙成分⽣成に関わる唯⼀の遺伝⼦が⽋失することで⾟みを感じなくなります。この特性は、遺伝⼦の働きを“⾷べて理解する”ことができる例として重要であり、理科・⽣命科学の教材としての展開も予定しています。

(参考︓親⼦向けワークショップ「知って ⽐べて ⾷べて ⾒つける 野菜のヒミツ」 

https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/news/10923

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会社概要

URL
https://housefoods-group.com/
業種
製造業
本社所在地
東京都千代田区紀尾井町6番3号 ハウス食品グループ本社ビル
電話番号
03-3264-1231
代表者名
浦上 博史
上場
東証1部
資本金
99億4832万円
設立
1947年06月