【国立科学博物館】100年以上前に埼玉県越谷市に落下した隕石の分類を確定。「越谷隕石」として国際隕石学会に登録されました。
独立行政法人国立科学博物館、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所、国立大学法人九州大学は、1902(明治35)年に現在の埼玉県越谷市に落下した隕石を分析し、分類をL4普通コンドライト(球粒隕石)と確定しました。また、この隕石は2月23日、国際的な隕石の認証団体である国際隕石学会に「越谷隕石(Koshigaya)」として登録されました。習志野隕石に続いて国内で54番目に確認された隕石です。
- 概要
- 越谷隕石の分析と分類
1902(明治35)年3月8日の明け方に火山の噴火したような音がして、埼玉県南埼玉郡桜井村大字大里(現在の越谷市)の中村喜八氏の田畑に大きな穴ができ、1m余りの底から隕石が発見されました(東京朝日新聞 明治35年4月25日付け記事)。回収された隕石は1個で重量は4.05kgでした。中村家に長年保管されてきましたが、2021年に越谷市郷土研究会を通じて国立科学博物館に成分分析の依頼がありました。ガンマ線測定の結果、宇宙線により生成する放射性核種(宇宙線生成核種)のアルミニウム-26(半減期約70万年)が検出され隕石であることが確認されました。また、同じく宇宙線生成核種で半減期が約2.6年のナトリウム-22は検出されず、落下してからナトリウム-22が壊変しつくしてしまう程度の期間、少なくとも数十年前に落下した隕石であることも分かり、落下日の記録と整合的であることが確認されました。
▲越谷隕石のガンマ線スペクトル:宇宙線生成核種のアルミニウム(Al)-26のガンマ線が検出されたが、ナトリウム(Na)-22は検出されず、落下後数十年以上経っていることが分かります。
<隕石組織観察と鉱物組成分析>
国立極地研究所にて主資料(重さ4.05kg)から保存・分析用試料約120gを切り取り、その内の約2gの小片から研磨薄片と電子顕微鏡用試料の作製を行いました。光学顕微鏡や電子顕微鏡による隕石組織の観察と鉱物組成の分析結果(かんらん石、輝石)から、越谷隕石は普通コンドライト(球粒隕石)に分類されました。普通コンドライトにはH, L, LLの3つの化学的グループがありますが、詳細な鉱物組成からLグループであることが分かりました。また、隕石組織の観察で比較的よく球粒組織が残って見られることから、岩石学的タイプは4であることが分かりました。この組み合わせは「L4コンドライト」と呼ばれます。Lグループはコンドライトで最多のグループですが、L4はその中で1割弱程度と少なく、日本に落下した隕石では福富隕石(1882年落下)がL4とL5の混合タイプであること以外は知られていません。このタイプの隕石は小惑星が起源となります。
▲かんらん石中の鉄とマグネシウムの比率(Fe/(Fe+Mg)をモル%で表示:Fa#)のヒストグラム(国立極地研究所):Lグループの化学組成をしています。
<国際隕石学会への登録>
上述の分析結果を添えて、この隕石の名称を「越谷隕石(Koshigaya)」として国際隕石学会(The Meteoritical Society)へ登録申請を行いました。隕石の名称は落下地にちなんだものを付けることとされていますので、現在の地名である越谷市から取ったものです。学会の命名委員会(Nomenclature Committee)において、審査・投票が行われ、2月16日付けで承認されました。
また、学会の隕石データベース(The Meteoritical Bulletin Database https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php)に2月23日に登録されました。
<今後の予定>
九州大学において貴ガス(アルゴンなど)の分析が進められています。また今後、国立科学博物館において「科博NEWS展示」として、隕石の一部を公開予定です。
<研究サポート>
本研究は、国文学研究資料館・歴史的典籍NW事業の異分野融合共同研究プロジェクト(星石4Dプロジェクト)、国立極地研究所プロジェクト研究費(KP307)、国立科学博物館基盤研究の下で実施されました。
<研究メンバー>
米田成一 (国立科学博物館 理工学研究部 部長)
山口亮 (国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授
/極域科学資源センター 南極隕石ラボラトリー キュレーター)
岡崎隆司 (九州大学大学院 理学研究院 地球惑星科学部門 准教授)
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越谷隕石写真
- 薄片の偏光顕微鏡写真(国立極地研究所にて撮影)
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