第36回 国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会にて発表 iPS細胞由来の感覚神経細胞を組み込んだ三次元培養皮膚モデルを用いた刺激感評価系の構築に向けた検討

-動物実験代替法を活用した製品開発への取り組み-

ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、2026年9月28日~10月1日にオーストラリアのパースで開催された「第36回 国際化粧品技術者会連盟(The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists:IFSCC)世界大会」において、ヒトで感じる刺激感を客観的に捉える評価法に関する研究成果をポスター発表しました。

 

発表タイトル

From Itch Signature to Signal: A multiomics analysis in tissue engineered skin for predicting skin sensitivity

かゆみのサインからシグナルへ:皮膚感受性予測のための組織工学的皮膚を用いたマルチオミクス解析

 

発表者

Md Zobaer Hasa1,2、Amy Harding1、Simon Danby1、Ivana Barbaric1、曽原喜一郎2、中西宏文2、古野哲生2、

Craig Murdoch1、Helen Colley1

1.     ロート製薬株式会社

2.     シェフィールド大学

※当日発表者:Md Zobaer Hasa

 

発表概要

1. 研究成果のポイント

◆iPS細胞※1由来の感覚神経細胞を組み込んだ三次元培養皮膚モデル(innervated HSE※2)を構築

◆本モデルはカプサイシンに対してより高い反応性を示し、スティンギング※3における細胞間クロストークを理解するうえで、感覚神経細胞の存在が重要であることを明らかに

◆感覚神経細胞存在下において、スティンギングに重要な役割を果たす3つの主要遺伝子を明らかに

 

2. 研究の背景

化粧品等を使用した際に、見た目に明らかな紅斑や腫れなどが認められない場合でも、かゆみ、ヒリつき、ピリピリ感などの主観的な刺激感が生じることがあります。こうしたスティンギングは一過性の感覚刺激であり、その発生メカニズムは、未解明な点が多く残されています。現在、スティンギングの評価はヒトの主観的な感覚に依存する部分が大きく、化学物質による弱い刺激や感覚的な刺激を、ヒトを用いずに客観的に予測できる評価法の確立が求められています。当社では2018年に、乳酸刺激を用いた三次元組織表皮モデルの網羅的な遺伝子発現解析より、スティンギングに関与する分子経路及び遺伝子候補を探索しました。その後、シェフィールド大学との共同研究を進め、スティンギング誘発物質の評価に適した7つの遺伝子マーカーを見出し、それらの遺伝子を用いた解析、評価へと研究を発展させてきました。今回、これまでに培ってきた皮膚モデル及び遺伝子解析の知見を基盤として、iPS細胞由来の感覚神経細胞を組み込んだ三次元培養皮膚モデルを構築し、スティンギングをより生理学的に捉えることを目指しました。

 

3. 結果 

iPS細胞由来の感覚神経細胞を組み込んだ三次元培養皮膚モデルでの刺激物質に対する反応を評価

iPS細胞から分化誘導した神経細胞、ヒト真皮線維芽細胞※4及びN/TERT-1ケラチノサイト※5を用い、気液界面※6で14日間分化誘導することにより、神経支配皮膚モデルを構築しました(図1及び2)。作製したモデルに刺激物質であるカプサイシンを添加し、7種類の遺伝子(IL-6、PTGS2、ATF3、TRPV3、MAP3KB、HMGB2、MMP-3)の発現についてqRT-PCRで遺伝子発現解析を行いました。その結果、IL-6、TRPV3、MMP-3は、感覚神経細胞存在下において、スティンギングに重要な役割を果たす主要遺伝子であることが示唆されました(図3)。三次元皮膚細胞と感覚神経を同一の評価系で扱うことで、刺激感に関わる細胞間シグナルをより生体に近い形で解析する研究基盤となることが期待されます。

 

4. 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

スティンギングによる刺激感は、本人が感じる主観的な感覚が中心となるため、客観的な評価が難しい領域です。本研究で構築した神経支配皮膚モデルの技術や手法をさらに発展させることで、化粧品による刺激感をin vitroで予測する新たな評価法につながることが期待されます。また、皮膚細胞と感覚神経の相互作用を解析することで、これまで十分に解明されていなかった敏感肌における「刺激を感じる仕組み」の理解が進み、敏感肌向け製品の研究開発やより客観性の高い安全性及び有用性評価への応用が期待されます。今後、候補となる分子シグナルの再現性やさまざまな刺激物質に対するモデルの予測性を検証し、評価技術の確立を目指します。

 

5 ロート製薬の動物実験代替法・新規評価技術への取り組み

当社は、培養細胞や三次元組織モデルを用いるin vitro※7評価法、コンピュータや情報技術を用いたin silico※8毒性予測、分析機器等を用いて生体物質と化学物質の反応性を評価するin chemico※9評価法などを積極的に活用し、動物実験に依存しない評価技術の研究開発を推進しています。

今後も、シェフィールド大学をはじめとする外部研究機関との協働を通じて、ヒトの皮膚反応をより的確に捉える評価技術の高度化に取り組み、お客様のウェルビーイングに貢献できる製品やサービスの提供につなげてまいります。

 

 

 <用語説明>

※1 iPS細胞

皮膚や血液などの体細胞に特定の因子を導入することで、さまざまな種類の細胞に分化する能力を持たせた人工多能性幹細胞です。

※2 Human Skin Equivalent(HSE)

   ヒト由来の皮膚細胞を培養し、皮膚の構造や機能の一部を再現した組織モデル。本研究ではヒト真皮線維芽細胞とN/TERT-1角化細胞を用いて作製しました。

※3 スティンギング

   化粧品等を使用した際に生じる、かゆみ、ヒリつき、ピリピリ感などの不快な感覚。紅斑や浮腫のような明らかな炎症性症状を伴わず、一過性に生じる感覚刺激を指します。

※4 ヒト真皮線維芽細胞

ヒトの皮膚の真皮に存在し、コラーゲンなどの細胞外マトリックスを産生する細胞です。

※5 N/TERT-1ケラチノサイト

ヒトの皮膚の表皮を構成する角化細胞(ケラチノサイト)の性質を有し、研究用途で継続的に培養できるようにした細胞です。

※6気液界面

液体と空気が接する境界部分を指します。細胞培養では、細胞の一部を培養液に接触させながら、表面を空気に触れさせて培養する条件を指します。

※7 in vitro

試験管や培養器などの人工的な環境下で、細胞や組織モデルを用いて行う試験です。

※8 in silico

コンピュータや情報技術を用いたシミュレーションやデータ解析などの研究手法です。

※9 in chemico

生体組織や培養細胞を使用せず、主に物質同士の化学反応性を評価する研究手法です。

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

ロート製薬株式会社

132フォロワー

RSS
URL
https://www.rohto.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
大阪府大阪市生野区巽西1丁目 8番1号
電話番号
06-6758-1231
代表者名
瀬木英俊
上場
東証プライム
資本金
64億4600万円
設立
1949年09月