洗たく槽のバイオフィルム内の菌も除菌*1 衣類への菌移行を抑制する、衣料用洗剤の新技術を開発
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)ハウスホールド研究所は、衣料用洗剤の洗浄成分である陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を組み合わせるだけで、洗たく槽の強固なバイオフィルム内の菌を日常の洗たくで除菌*1できる新たな衣料用洗剤の技術を開発しました。本技術は、普段のお洗たくで洗たく槽のお手入れまで同時に行うことができ、塩素系を含む洗濯槽クリーナーに頼らず、より清潔なお洗たく環境の維持に寄与するものです。
今回の研究成果は、2025 AOCS Annual Meeting(2025年4月27日~5月1日・Portland, Oregon)、第57回洗浄に関するシンポジウム(2025年11月18日・大阪)にて発表しています。
*1すべての菌を除菌するわけではありません
背景
花王は、洗っても落ちないくすみやニオイの一因が、タオルなどに付着するバイオフィルムであることを明らかにし*2、普段のお洗たくでバイオフィルムを除去する方法を確立してきました。バイオフィルムとは、菌が分泌した多糖やタンパク質を含む菌体外マトリクス(Extracellular Polymeric Substances)と菌の複合体のことです。バイオフィルムは長期間お手入れしていない洗たく槽にも発生することがわかっており、花王は、こういったバイオフィルムに潜む菌が洗たく水を介して衣類に移行することも突き止めています。
洗たく槽のバイオフィルムは強固であるため専用クリーナーによる定期的なお手入れが推奨されています。そこで今回花王は、通常のお洗たくで洗たく槽に付着するバイオフィルム内の菌も除菌*1し、衣類を清潔に保つ洗浄技術の開発に取り組みました。
*1すべての菌を除菌するわけではありません
*2 2024年3月13日 花王ニュースリリース:洗っても落ちないタオルの嫌なニオイはバイオフィルムとともに局在、洗たく後のタオルのニオイとバイオフィルムとの相関を確認
洗たく槽のバイオフィルム内の菌も除菌*1できる衣料用洗剤の新洗浄技術を確立
衣料用洗剤に使われる洗浄成分のうち、特定の陽イオン界面活性剤には除菌効果がありますが、洗たく槽のバイオフィルム内の菌には効果を発揮しないことが知られています。その要因として花王は、バイオフィルムの表面が負に帯電しているため、陽イオン界面活性剤がそこにトラップされている可能性に着目しました。しかし、陽イオン界面活性剤の電荷を中和させるため陰イオン界面活性剤を組み合わせると、互いの働きを打ち消してしまい、除菌効果は消失するというのがこれまでの通説でした。
そこで、等温滴定熱測定分析を用いて2種の界面活性剤間の相互作用を解析し、除菌効果が消失するメカニズムを探索。最適なコンプレックス状態を形成する界面活性剤の組み合わせについて検討を重ねました。その結果、独自開発の陰イオン界面活性剤「バイオIOS」と組み合わせることで、陽イオン界面活性剤が除菌効果*1を維持したままバイオフィルム内部まで到達することを見いだしました(図1)。
*1すべての菌を除菌するわけではありません

洗たく槽のバイオフィルム内の菌への除菌効果*1および洗たく水内の菌数低下を確認
花王は、バイオフィルム内の菌に対する効果を検証するため、陽イオン界面活性剤とバイオIOSを組み合わせた新技術ありおよび技術なし*3の衣料用洗剤を作成。実際の洗たくと同じ条件で、バイオフィルムを形成させた洗たく槽板を模したモデル基板を洗浄しました。その後、共焦点レーザー顕微鏡を用いてモデル基板上のバイオフィルム内の菌を観察すると、新技術ありの場合では菌はほぼ見られず(図2)、菌数は浸漬前より99%減少しました。この結果より、従来困難とされてきたバイオフィルム内の菌に対しても除菌効果*1を発揮することを確認しました。

次に、洗たく水内の菌数への影響を確認するため、新技術ありと技術なし*3の衣料用洗剤それぞれを5家庭で、2023年1月に4週間使用してもらいました。使用開始直前と4週間後の洗たく水を回収して菌数を調べた結果、技術なしの場合は菌数に変化が見られない一方、新技術では開始時と比べて4週間後の洗たく水中の菌数が減少しました(図3)。これは、新技術による洗たく槽のバイオフィルム内の菌の除菌効果*1と推察されます。
*1すべての菌を除菌するわけではありません
*3 研究所で配合した汎用的な衣料用洗剤処方

まとめ
衣料用洗剤に用いられる陽イオンと陰イオン界面活性剤の組み合わせにより、従来は困難とされてきた洗たく槽のバイオフィルム内の菌を除菌*1する新しい洗浄技術を確立しました。本技術を活用すると、普段の洗たく時に、洗たく槽に発生したバイオフィルム由来の菌が衣類へ移行することを抑えることで、菌による不快なニオイの軽減、さらに洗たく槽の定期的なお手入れ負荷の軽減にもつながると考えられます。今回見いだした技術は、ファブリックケアにとどまらず、幅広い分野での応用展開をめざしていきます。
*1すべての菌を除菌するわけではありません
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