チャド:スーダン難民に迫る健康危機──国際的な支援拡充が急務
あらゆるものが不足
スーダンとチャドとの国境には少なくとも毎日2000人が到着する。多くの人びとは、道中も極度の暴力にさらされたと証言し、そのほとんどは女性と子どもだ。しかし辛くもたどり着いた先でも苦難が待ち受ける。チャド東部アドレ市周辺の難民キャンプや一時滞在センターは、現在いずれも飽和状態だ。新たに到着した人は、離れた場所に新しく建設されたキャンプに移されているが、これら新設キャンプは受け入れ準備ができておらず、厳しい日差しや雨を避ける場所は無く、食料や水、調理道具なども足りていない。
避難生活に必要なあらゆるものが不足する状態は、人びとの健康に重大な危険をはらむ。チャドでは雨期の到来とともにマラリア感染者が急増し、コレラなどの水系感染症リスクが高まっている。MSFの診療所では、わずか1週間で、前週の3倍近い956件のマラリア患者を記録した。MSFの緊急対応責任者であるトリッシュ・ニューポートは、「まだ水が使えないキャンプに難民を移すなど無謀です。こうしたキャンプは砂漠の真ん中にあり、仮住まいもなければ、トイレもありません。人びとは着の身着のままで来ているというのに。これでは、人道対応を緊急拡大しない限り、病気が流行するだろうと私たちは懸念を強めています」と指摘する。
午前2時から給水に列
現在15万人の難民を受け入れているアドレのキャンプ・エコールなど、MSFが活動しているキャンプでは、既に健康上のニーズが高くなっている。MSFは、アドレ病院の250床の小児科病棟を支援し、キャンプ・エコールで38床の診療所を運営。このほか、救急車による患者の搬送も行っている。この診療所は常時満員で、1日の診療件数は400件に上る。栄養失調患者の数も多いが、他のキャンプに移されてしまう場合が多く、MSFが患者を追跡するのは困難な状況だ。
MSFはこれまでに、キャンプ・エコールに3基の掘削井戸を設置し、トラックでの給水も行っているが、必要な水の量はMSFだけで対応できる量をはるかに超えている。水不足が深刻なアンベリアとオウランのキャンプでは、人びとは午前2時から水を求めて並び始めざるを得ない状況となっている。
増大するニーズ、ひっ迫する支援
スーダン紛争が始まる前から、チャドは既に100万人以上の難民や国内避難民を受け入れていた。今年、スーダン西部から到着した難民の大幅増加は、現地にさらなる負担としてのしかかる。アドレでは食料価格が高騰し、新たな難民の大半にとって手が届かない水準に達している。地域社会にもこの影響は及び、収入が伸び悩む一方で生活費は上がっている。
チャド東部の人道危機に対する国際的な援助提供が急務だ。MSFは国際社会に対し、スーダンから逃れた人びとに、避難所、食料、水、衛生設備、医療、保護や警備を緊急に提供するよう呼びかける。
※1 国連人道問題調整事務所(OCHA) 8月3日
※2 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 8月7日
https://prtimes.jp/a/?f=d4782-638-6cb2b5039d70b0059649fc575fa6562b.pdf
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