新型コロナワクチン副反応をテンソル分解でひも解く
―「時間変化」に着目、副反応メカニズム解明へ前進―
新型コロナウイルスワクチンの副反応について、従来の研究では症状の頻度や強度にのみ焦点が当てられ、その時間的な変化は考慮されていませんでした。本研究では非負値テンソル因子分解(注1)を用いて、副反応の症状の種類・強度の時間変化を、4つの成分として抽出しました。4成分は異なる部位(局所性/全身性)・タイミングで生じる反応に対応しており、一括りに扱われてきた全身性の副反応において、成分間での異なる免疫学的なメカニズムの存在が示唆されました。また全身性の反応に対応する1成分の値のみが、ワクチン接種後の血清抗体価と強い正の相関を示しました。
本研究の成果は、副反応の免疫学的なメカニズムの解明や、より安全なワクチンの開発およびワクチン接種スキームの確立につながっていくことが期待されます。
本研究の成果は、副反応の免疫学的なメカニズムの解明や、より安全なワクチンの開発およびワクチン接種スキームの確立につながっていくことが期待されます。
本研究は千葉大学大学院医学研究院人工知能(AI)医学の川上英良教授、同アレルギー・臨床免疫学の池田啓講師、中島裕史教授、同救急集中治療医学の中田孝明教授らを中心とした研究グループにより実施され、2022年9⽉27⽇に「iScience」にオンラインで公開されました。
また背景因子のうち、性別では全成分値で女性>男性という共通の傾向を示した一方、年齢では成分3のみが40代、50代で低い値を示すなど、因子によっては一部成分とのみ有意な相関を示しました。また接種後の血清抗体価では、成分1の値のみ強い正の相関を示しました。以上より、成分1、4は2回目接種後に生じる獲得免疫(注2)応答を、特に成分1は抗体価の上昇につながる免疫応答を反映している可能性が示されました。
(非負値テンソル因子分解を用いた、BNT162b2 mRNA SARS-CoV-2ワクチンの副反応における時間変化する表現型成分の検出)
DOI:https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)01509-7
(注2)獲得免疫:体内に侵入した異物を特異的に見分け、記憶することで、次に同じ異物に出会ったときに素早く効率的に排除する仕組み。
- 本研究の概要図
- 研究成果
また背景因子のうち、性別では全成分値で女性>男性という共通の傾向を示した一方、年齢では成分3のみが40代、50代で低い値を示すなど、因子によっては一部成分とのみ有意な相関を示しました。また接種後の血清抗体価では、成分1の値のみ強い正の相関を示しました。以上より、成分1、4は2回目接種後に生じる獲得免疫(注2)応答を、特に成分1は抗体価の上昇につながる免疫応答を反映している可能性が示されました。
- 今後の展望
- 研究プロジェクトについて
- 論文掲載情報
(非負値テンソル因子分解を用いた、BNT162b2 mRNA SARS-CoV-2ワクチンの副反応における時間変化する表現型成分の検出)
DOI:https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)01509-7
- 用語解説
(注2)獲得免疫:体内に侵入した異物を特異的に見分け、記憶することで、次に同じ異物に出会ったときに素早く効率的に排除する仕組み。
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