公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団 第35回 表彰・贈呈式を開催 若返り研究への研究助成を決定
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)が研究分野を通した社会貢献の取り組みとして支援している公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団(所在地:東京都中央区、理事長:小林 一俊)は、2024年11月28日に当財団が研究助成を行う研究者を表彰・授賞する「第35回 表彰・贈呈式」をパレスホテル東京(東京都千代田区)にて開催しました。本年はこれまでの研究助成に加えて、社会的な関心が高まる研究分野への支援を行うべく「細胞のリプログラミングによる若返り研究」をテーマに公募を行い、4名の研究者それぞれに3年間で3,000万円の特定課題研究助成を行うことを決定しました。
左から 千葉大学 髙山 直也 氏(写真は代理の向井 務晃 氏)|大阪大学 大庭 伸介 氏|
公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団 理事長 小林 一俊|株式会社コーセー
取締役 研究所長 小椋 敦子|京都大学 中溝 聡 氏|鳥取大学 難波 大輔 氏
コーセーコスメトロジー研究財団は、多様かつ広範な学際領域に跨るコスメトロジー(化粧品学)に関する研究へ助成を行うことにより、広く生活者の保健衛生の向上を図り、美しく豊かな人間生活の実現に寄与することを目的として、1990年にコーセーの創業者である小林孝三郎により設立されました。以来毎年、化粧品に関連する幅広い学術分野を対象に、優れた研究に対して助成を行っています。
近年の助成した研究の中でも特に優れた成果をあげた研究者を表彰する「コーセーコスメトロジー奨励賞」として、今年度は大阪公立大学 北山 雄己哉(ゆきや) 氏を表彰しました。また、「コスメトロジー研究助成」として、全国の大学、病院、公的研究機関からの114件の応募の中から、選考委員の厳正な審査により選ばれた32名の研究者に対して助成金贈呈を行いました。
本年度は上記に加えて、コスメトロジーにおける重要課題である老化に焦点を当て、「細胞のリプログラミングによる若返り研究」をテーマに「特定課題研究助成」への公募を行いました。細胞のリプログラミング研究は、加齢に伴う諸問題への新たな解決策になることが期待されており、iPS細胞研究に代表されるように、これまでも多くの基礎研究や再生医療に向けた応用研究が進められています。本助成については、全国の大学や研究機関からの15件の応募の中から、厳正な審査により4名の研究者それぞれに3年間で3,000万円の助成を行うことを決定しました。
◇2024年度 コーセーコスメトロジー奨励賞 受賞者(敬称略)
所属機関・氏名 |
研究課題 |
大阪公立大学 大学院工学研究科 物質化学生命系専攻・北山 雄己哉 |
天然物由来高分子を利用した新規サンスクリーンカプセルの創出(2020年 第31回コスメトロジー研究助成受賞) |
◇2024年度 特定課題研究助成「細胞のリプログラミングによる若返り研究」 受賞者(敬称略)
所属機関・氏名 |
研究課題 |
大阪大学 大学院歯学研究科・大庭 伸介 |
個体老化におけるBone-Skin axisの存在の検討 |
千葉大学 大学院医学研究院イノベーション再生医学・髙山 直也 |
前駆細胞リプログラミング技術による皮膚老化防止への革新的アプローチ |
京都大学 大学院医学研究科先端医療基盤共同研究講座・中溝 聡 |
エピジェネティクスを標的とした皮膚構成細胞の老化の可逆性の研究 |
鳥取大学 医学部医学科 難波 大輔 |
細胞骨格を介した細胞リプログラミングによるヒト表皮幹細胞の若返り研究 |
※コスメトロジー研究助成 受賞者については参考情報をご確認ください。
■小林 一俊 理事長挨拶 要旨
当財団は、1990年の財団設立にあたり、化粧品科学の発展には、化学・生物学など自然科学に加えて、心理学や、文化、芸術といった幅広い分野の融合が必要であり、これを「コスメトロジー」と名付けて、以来、財団の名称にしてまいりました。
これまでに財団は、コスメトロジー研究への支援活動を通して、その成果を積み重ねてまいりました。今年、設立以来の助成件数はちょうど1000件を超えて、助成金の累計は15億円となりました。そして、本日、当財団は35回目の表彰・贈呈式を迎えることになりました。
化粧品市場に目を向けますと、男性の美容意識の高まりから、「化粧品は女性のもの」という固定観念がなくなりつつあります。また、化粧品を使う年齢層も、小さな子どもから高齢者まで広がり、今や、化粧品は、性別や年齢を問わず、一生を通して人々の美容と健康に役立つものになってきました。さらに化粧品は、アレルギーの予防・改善に向けて利用されるなど、医療分野とのつながりを持ちながら、その世界を拡げつつあります。
そして今回、受賞される皆さまの研究が、コスメトロジーとして新しい成果を生み出され、化粧品に期待を寄せる人々の願いに、近い将来、こたえる日が来ることを祈っています。これからも、当財団は、人々の美しく豊かな生活の実現と、化粧品産業の発展のため、着実に歩みを進めてまいります。
■岩橋 槇夫 選考委員会委員長 選考経過報告 要旨
まず初めに、「特定課題研究助成」の選考経過について報告いたします。特定課題研究助成は、財団の新しい助成プログラムで、コスメトロジーの分野で、これから発展が期待される研究テーマを、財団が特定して公募するものです。今年の公募テーマは「細胞のリプログラミングによる若返り研究」であり、財団としても大変挑戦的なテーマになりました。今回は、この特定課題に対して15件の応募をいただきました。応募された課題について、選考委員会において、独創性、発展性、実用性、コスメトロジーへの波及性、そして研究計画全体の総合評価を合わせて、厳正公平な審査を行い、最終的に理事会の承認を得て、本日受賞される4件の助成課題を採択しました。
採択された課題を見てみますと、ひとつの公募テーマに対して、それぞれアプローチが異なる4つの独創的な研究が揃いました。いずれも斬新なアイデアと最先端の研究を取り入れたもので、今回受賞される4名の先生方の研究が、コスメトロジーがめざす「若返り研究」として、新たな潮流となることを期待しています。
続いて、「コスメトロジー研究助成」の選考経過についてご報告します。コスメトロジー研究助成は、例年通り、「素材・物性に関する分野」、「生体作用・安全性に関する分野」、「精神・文化に関する分野」の3つの分野に分けて募集しました。その結果、今年の応募総数は、3分野合わせて114件となりました。応募された研究課題について、まず分野ごとに3つの分科会で予備選考を行いました。予備選考では、研究課題の独創性、発展性、実用性、およびコスメトロジーへの波及性に加え、計画全体の総合評価を合わせて、厳正に審査を行いました。続いて、予備選考の審査結果に基づいて、選考委員会で候補者を選考し、最終的に理事会の承認を得て、本日受賞される32件の研究課題を採択しました。
今回受賞される、いずれの研究課題も、最先端の科学・技術にコスメトロジーならではの着想を組み合わせたもので、化粧品の科学としての広がりが感じられる、大変楽しみな研究テーマであると言えます。
参考情報
◇特定課題研究助成
特定課題研究助成は、人々の健康的で美しく豊かな生活の実現をめざして、近未来に課題解決が期待されるテーマを「特定課題」として公募し、この課題に独創的・先駆的発想をもって果敢に取り組む研究プロジェクトに対して助成を行うプログラムです。
2024年度は「細胞のリプログラミングによる若返り研究」をテーマとして公募を行いました。
◇コーセーコスメトロジー奨励賞
2020年の本財団創立30周年にあたり創設された表彰制度で、本財団の研究助成採択者の中から、コスメトロジー研究の発展に功績があった研究者を表彰することにより、更なる研究の進展を期待するとともに、これをインセンティブとして、コスメトロジー研究の学術論文による成果公表を奨励し、研究成果の社会還元の促進を目的とするものです。
5回目となる本年度は、2018年以降の助成採択者の中から今年最も優れた論文実績が認められた研究者を表彰しました。
◇コスメトロジー研究助成
本助成事業では、様々な専門分野の研究者にコスメトロジー研究への参画を呼びかけ、人々の健康や美容の増進に役立ち、美しく豊かな生活の実現への貢献が期待される研究課題に対して助成を行います。
◇国際交流支援助成・学術集会支援助成
研究者の海外派遣費用や、コスメトロジーおよび関連研究の学会などの開催費用への助成を行います。
■ 2024年度 コーセーコスメトロジー研究財団 表彰・助成実績
○ 特定課題研究助成「細胞のリプログラミングによる若返り研究」
応募総数 15 件
助成件数 4 件
助成金総額 4,000万円 (1件あたりの助成金額 1,000万円、3年間)
○コーセーコスメトロジー奨励賞
表彰候補者(2018年以降の研究助成採択者) 52 名
受賞者 1 名
表彰内容 表彰状および副賞 200万円
○ コスメトロジー研究助成
応募総数 114 件
助成件数
1)素材、物性に関する分野 10 件
2)生体作用、安全性に関する分野 17 件
3)精神、文化に関する分野 5 件 計 32 件
助成金総額 6,000万円 (1件あたりの助成金額 200万円、100万円、50万円)
○ 国際交流支援助成 3 件
○ 学術集会支援助成 9 件
◇2024年度 コスメトロジー研究助成 受賞者(敬称略、分野別五十音順)
第1分野: 素材、物性に関する分野
所属機関・氏名 |
研究課題 |
東京農工大学 大学院工学研究院 赤木 友紀 |
高分子ナノコンポジット材料のミクロおよびマクロな物性に及ぼす混合条件の影響 |
九州大学 大学院農学研究院 岩森 巨樹 |
表皮・毛包細胞系列の若返り誘導法の開発 |
上智大学 理工学部物質生命理工学科・臼杵 豊展 |
コラーゲン架橋アミノ酸の創製と分析 |
奈良女子大学 研究院自然科学系化学領域・河合 里紗 |
環境負荷低減を目指したアミノ糖由来の新規両親媒性イオン液体の開発 |
筑波大学 生命環境系地球進化科学専攻・興野 純 |
天然ミネラルに学ぶ新たなファンデーション素材の開発 |
東京科学大学 物質理工学院材料系 児島 千恵 |
PEGリポソームの免疫応答抑制のための多分岐PEG脂質の作製 |
岐阜大学 工学部 高井 千加 |
時間領域核磁気共鳴(TD-NMR)を用いた中空ナノ粒子の評価 |
近畿大学 薬学部 高島 克輝 |
生薬由来の天然物を基盤とする安全かつ強力な育毛成分の開発研究 |
芝浦工業大学 工学部 永 直文 |
ナノテク化粧品を志向した多面体有機ナノ粒子の開発 |
大阪工業大学 工学部応用化学科 村岡 雅弘 |
外部刺激応答性超分子両親媒性物質の創製 |
第2分野: 生体作用、安全性に関する分野
所属機関・氏名 |
研究課題 |
岐阜大学 高等研究院 One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター 朝比奈 良太 |
アトピー性皮膚炎における病原性記憶T細胞の皮膚駐在メカニズムの解明 |
順天堂大学 大学院医学研究科アトピー疾患研究センター・伊沢 久未 |
ケラチノサイトを起点とするヒトの皮膚炎症の新規メカニズム |
慶應義塾大学 医学部先端医科学研究所 井上 聡 |
治療効果を高める皮膚resident memory T細胞の作出 |
京都大学 ヒト行動進化研究センター 今井 啓雄 |
霊長類細胞モデルを用いた色素産生制御の検討 |
東北大学 大学院薬学研究科 大江 知行 |
皮膚修復ペプチドによる皮膚障害性アルデヒドの補足機構解明と非侵襲的効能評価法の構築 |
名古屋大学 環境医学研究所発生遺伝分野岡 泰由 |
DNA修復機構の破綻によって生じる皮膚病変の病態解明研究 |
川崎医科大学 岡本 安雄 |
GPR176を標的とした活性化皮膚線維芽細胞の正常機能回復に向けた研究 |
京都産業大学 生命科学部 川根 公樹 |
上皮バリア機構を保証する、上皮細胞の終焉におけるタイトジャンクションの動態 |
北海道大学 大学院薬学研究院 小林正紀 |
妊娠・授乳期を含む皮膚バリア機能を指標とした乳酸の有効性と安全性評価 |
東京大学 大学院医学系研究科皮膚科 柴田 彩 |
マクロピノサイトーシスによる皮膚バリア機能制御機構の解明 |
北海道大学 大学院医学研究院皮膚科学教室・高島 翔太 |
スプライシングによりもたらされる表皮基底膜タンパクの多様性とその意義の解明 |
公益財団法人東京都医学総合研究所 種子島 幸祐 |
無機ナノ粒子と常在菌DNAによる皮膚炎症反応の分子基盤 |
九州大学 大学院農学研究院生命機能科学部門・土居 克実 |
スキンケア用ファージセラピー基盤の開発 |
芝浦工業大学 システム理工学部生命科学科・廣田 佳久 |
化粧品への応用を志向した皮膚に対するビタミンK誘導体の効果 |
広島大学 大学院統合生命科学研究科 水沼 正樹 |
代謝物による抗老化作用機序の解析 |
九州大学 大学院医学研究院 森下 英晃 |
皮膚角化細胞における細胞内破壊現象の分子基盤の解明 |
大阪大学 大学院生命機能研究科 森田 梨津子 |
皮膚・毛包成熟化の制御技術の開発 |
第3分野: 精神、文化に関する分野
所属機関・氏名 |
研究課題 |
名古屋市立大学 大学院芸術工学研究科・辻村 誠一 |
乳幼児におけるメラノプシン細胞による脳内機能の解明:メラノプシン細胞への刺激量を考慮した新たな色彩指標の提案 |
千葉大学 大学院情報学研究院・津村 徳道 |
非接触生体計測による化粧に関する認知バイアスの計測 |
豊橋技術科学大学 情報知能工学系・南 哲人 |
目の大きさが表情認知に及ぼす影響=アイメイクの心理学的効果の解明= |
順天堂大学 大学院医学研究科環境医学研究所・吉川 宗一郎 |
Well-beingがアレルギー炎症を緩和させる分子メカニズムの解明 |
九州歯科大学 口腔機能学講座口腔保存治療学分野 鷲尾 絢子 |
コスメトロジーと歯科医学の融合により新たな顔の美しさを演出する |
◇公益財団法人コーセーコスメトロジー研究財団Webサイト
URL: https://www.kose-cosmetology.or.jp
表彰された研究課題の概要等も掲載しています。
次回、第36回コスメトロジー研究助成の募集は、2025年5月より、本ウェブサイトで告知予定です。
財団へのお問い合わせも、上記ウェブサイトよりお願いいたします。
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