メルトブローで立体物を作る新技術「Melooop(メループ)」を独自開発
~2025年秋冬 パリ・ファッションウィークにて「doublet」との協業アイテムを発表~
(株)ワコールホールディングスの子会社である(株)ワコール(本社:京都市、代表取締役社長執行役員:川西啓介、以下ワコール)は、メルトブロー法(※1)で立体物を製作する新技術「Melooop(メループ)」を独自開発し、2020年よりブラジャーのカップ部分の生産技術として実用化しました。この新技術は、モノマテリアル(単一素材)でものづくりができるためリサイクルがしやすく、型に繊維を吹き付けることで立体物を成型するため破棄材料が少ないという特長があり、環境に配慮したものづくりへの活用が期待できます。
ワコールはこの技術のインナーウェア以外での活用可能性を探るため、2024年より経済産業省が主催する「みらいのファッション人材育成プログラム」に参画。「Melooop」によるファッションアイテムの製作に取り組み、プログラムをきっかけとして、ファッションブランド「doublet(ダブレット)」との協業アイテム3点を2025年秋冬 パリ・ファッションウィークにて発表しました。
ワコールは今後、ファッション分野以外への「Melooop」の活用も視野に入れ、技術開発に取り組んでまいります。
※1:原料となる樹脂を熱で溶かして紡糸ノズルから押し出し、高速の熱風で引き伸ばすことで極細繊維化し、同時に繊維同士が熱融着することで接着剤などを使用することなく、不織布をつくる技法がメルトブロー法です。
ワコールが開発した新技術「Melooop」は不織布をつくる手法のひとつであるメルトブロー法(※1)で立体物を作製する技法です。2020年に独自開発に成功し、ワコールマニュファクチャリングジャパンでブラジャーのカップ部分の生産技術として実用化しています。約6平方メートルのスペースに、吹付装置と3体のロボットアームが設置されており、吹付装置に対してロボットの軌道を精緻にコントロールすることで、かたちや厚み、伸度を調整することができます。「Melooop」でファブリックを成型する際には、カットされた不要なパーツもふたたび原料に生まれ変わることから、廃棄材料をゼロにすることが可能です。
2024年には経済産業省が主催する補助事業「みらいのファッション人材育成プログラム」に採択され、「Melooop」のインナーウェア以外での活用可能性を検討するため、ファッションアイテムの製作に取り組みました。このプログラムをきっかけに、ファッションブランド「doublet」との協業がスタート。カットソーやニットという既存の手法では実現できなかった“かたち”や“テクスチャー”が表現できる点が評価され、ポーチやバッグを制作し、2025年秋冬パリメンズコレクション(現地時間2025年1月26日(日)16:30)にて発表されました。
■「Melooop」の開発背景
ブラジャーのカップの生産方法は、主にカットソー(生地を裁断・縫製する)とモールド成型(熱を加えた金型でプレスして成型する)の2つがあり、カットソーでは、縫製を行うオペレーターの技術の熟練度に依存する、モールドでは廃棄する材料が多いという課題がありました。そのため、オペレーターの技術に依存することなく、材料廃棄を減らすことができる第3の手法を探ることから検討をスタート。2018年からはメルトブロー法で立体物をつくる技術の開発をスタートしました。
メルトブロー法では不織布など平面のものをつくることは一般的でしたが、高速の熱風で繊維を延伸しながら型に吹き付けるため、型にうまく定着せず、立体物をつくることは技術的に難しいとされてきました。そこで、原料となる樹脂の選定や、熱風の風量や温度、繊維の太さなどの条件を変えて試行錯誤を繰り返し、適切な条件を確立することができました。
加えて、ロボットの動きをコントロールし、吹付口からの距離や吹き付ける場所、時間を変化させることで、かたちや硬さ、厚み、伸度を調整することに成功し、2020年にブラジャーのカップの生産技術として実用化することができました。
■立体メルトブロー技術「Melooop」の特長
① ポリウレタンやポリ乳酸など、モノマテリアル(単一素材)のため、リサイクルがしやすい
② 繊維を吹き付けることで立体物を成型するため、破棄材料が少ない
③ 原料に染料や顔料を加えることで着色が可能なため、染色工程が不要
④ 3Dプリンタで制作した型に吹き付けるため、金型が不要で、小ロット生産に適している
■「Melooop」でブラジャーのカップを製作する際の一連の流れ
1)原料となる樹脂ペレット
※この段階で染料や顔料を加えることで着色が可能
2)熱された樹脂が極細繊維化され、型に吹き付けられる
3)ロボットの動きによって吹付口からの距離や吹き付ける場所、時間を変化させることで立体的に成型する
4)不要なパーツをロボットがカットし、カップが完成
5)破棄材料(カットされた不要なパーツ)は専用装置で熱を加えて溶かすことでペレットにし、再資源化が可能
■「Melooop」のネーミングについて
「Melooop」は“Meltblown(メルトブロー)”と“Loop(ループ)”を掛け合わせて生まれた技術名です。
原料を溶かして成型するメルトブローには、既存の概念を溶かして新たな価値を創造するという想いを、ループには私たちが目指す資源循環社会への想いを込めています。
<経済産業省主催「みらいのファッション人材育成プログラム」について>
「みらいのファッション人材育成プログラム」は次世代ファッションクリエイター育成と事業化支援を目的とした経済産業省が主催する補助事業です。2024年5月に公募を実施し、第三者委員会による厳正な審査によって選ばれた5組の採択事業者が、ファッション産業における持続可能なサプライチェーンのアップデートにつながる事業創出に向けて活動し、2025年1月17日(金)には京都にて、最終成果発表会が開催されました。
ワコールからは部門を超えた3名が参加し、「Melooop」のインナーウェア以外での活用可能性を探るため、ファッションアイテムの製作に取り組みました。
▼ワコールの報告レポートはこちら
<「doublet」との協業について>
「みらいのファッション人材育成プログラム」の取り組みの一環として、「違和感のある日常着」をコンセプトに掲げるファッションブランド「doublet」と協業し、ポーチとバッグの3点を制作。2025年秋冬パリメンズコレクション(現地時間2025年1月26日(日)16:30)で発表されました。
■「doublet」ブランドプロフィール
2012年ブランドdoublet(ダブレット)設立、2013年春夏シーズンに展示会にて発表。言葉を変化させるように、ベーシックでスタンダードなアイテムの一部分を、唐突な別のアイデアに置き換えてゆき、見慣れている物を「違和感のある日常着」に変化させることをコンセプトに、ウェアからアクセサリーまでのトータルアイテムを展開
■デザイナープロフィール
井野将之 MASAYUKI INO
1979年群馬県生まれ。東京モード学園卒業後 、企業デザイナーとして経験を積み、その後MIHARAYASUHIROにて靴・アクセサリーの企画生産を務める。その後「doublet」を立ち上げ、2013S/S展示会よりデビュー。
2013年「2013 Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門にて最優秀として選出。2017年「Tokyo Fashion Award2017」に選出され、パリでの展示会開催及び2017秋冬東京ファッションウィークにて、初のランウェイショーを開催する。2018年アジア人で初めて「LVMHprize」にてグランプリを受賞。2020年パリコレクションデビュー「FW2020」。2022年「DANIEL ARSHAM」とのアートコラボや「MARK JACOBS」とのコラボレーションを展開。
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