ホーム2戦でクリーンシート!「上位リーグは全部勝って、日本一に」“お母さん”守護神が見せる背中(佐藤麻陽/アルコ神戸)|月間MVP受賞インタビュー|今こそ最高のフットサルを

9月の女子Fリーグ月間MVPは、アルコ神戸の佐藤麻陽選手が受賞。ホーム戦2試合でクリーンシートを達成すると共に、スローを武器に攻撃の起点としてチームの得点も演出した。チームの“お母さん”的存在の守護神・佐藤選手の受賞インタビューをお届けします。

インタビュー=伊藤千梅(SAL
編集=本田好伸(SAL

※インタビューは10月3日に実施しました

中堅が引っ張るチームになってきた

──9月の女子Fリーグ月間MVPの受賞おめでとうございます!率直なお気持ちはいかがですか?

SNSで知って、正直驚きました。ホーム戦2試合で無失点だったことはうれしかったですが、それがMVPにつながるとは思いませんでした。まさか私が、という気持ちが一番です(笑)。

──チームメイトのみなさんはどんな反応でしたか?

みんな「あ、おめでとう」くらいの反応でした。みんな私の受賞を知らないのかと思ったくらいです(笑)。

──6月の月間MVPは山川里佳子選手でしたが、その時になにか伝えましたか?

山川の時は当然だなと思っていたので、この調子で頑張っていこうと話をしました。

──佐藤選手から見た山川キャプテンはどんな選手ですか?

周りからはふわふわしていて、かわいいキャラクターに見られることも多いと思いますが、練習中など、言う時はハッキリ言うタイプです。現在得点ランキングでもトップにつけているように「自分が得点王にならないとこのチームは日本一になれない」という強い気持ちで日々の練習に取り組んでいることも伝わります。周りもよく見えているので、チームメイトのちょっとした浮き沈みを見て声をかけていますし、すごく頼もしく感じています。

──チームとしては、レギュラーシーズンを終えて2位につけています。

若い選手たちも育っていますし、特に中堅が中堅らしくなってきました。今までは年上が引っ張っていましたが、キャプテンの山川も、副キャプテンの櫻田(真衣)も、私たちが声をかける前に、自分たちから高い意識で取り組んでくれています。チームとしてまとまっていますし、いい雰囲気でフットサルができていると思います。

──チームでの佐藤選手の役割は?

“お母さん”のようなイメージはずっともっています。守備でボケっとしている選手がいたら、先に声をかけて戻らせるようにしたり、「私が最後に止めるからチャレンジしてこい、戦ってこい」と送り出したりしています。みんなはどう思っているんだろう?練習ではけっこう厳しいことを言うので……気になります(笑)。

──年に一度のホームゲームの雰囲気はいかがでしたか?

2日で2000人近いお客さんが来てくれました。特に2日目はさいたまサイコロさんの応援も多かったですが、ホーム側ではデウソン神戸の選手たちも応援してくれたので、私もたまに後ろを振り返ってニコニコしてしまうような声援のなかでプレーすることができました。その雰囲気が完封勝利につながったと思いますし、感謝しています。

──今シーズンで引退を決めている若林エリ選手にとっては最後のホームゲームでした。

監督が不在だったこともあり、ベンチで指揮を執っていた若林がピッチに出ると試合をコントロールできなくなるので、いい試合展開でないと出してあげられない状況でした。そういった意味でも限られた時間のなか、いざ試合に出たら2ゴールを決めるのは、本当に“もっている”という感じですよね。

──試合後、涙を見せた若林選手を一番近くで支えていました。普段から一緒にいることも多いですか?

そうですね。私たちは年齢が近いので、自分たちだけのことだけではなくチーム全体のこと、戦い方などいろんな話をします。よく一緒にいると思います。

──若林選手はどんな存在ですか?

私が2回目にアルコに戻った時に「日本リーグに挑戦しようよ」と誘ってくれたのが若林でした。厳しいことを強い口調で言うこともありますけど、それを受け入れられる人柄です。やる時はやるし、若い子たちもスペシャルな存在だと感じていると思います。自分が発した言葉を体現している人なので、説得力があるし、みんなが尊敬しています。

妊娠・出産を経て日本代表を目指す意味

──フットサルを始める前は、INAC神戸でプレーしていたのですね。

そうです。神戸FCというチームでサッカーをしていて、その時の監督がアイナックを立ち上げたので、中学2年から所属していました。その時はまだ関西リーグのチームでしたが、そこからカテゴリーが上がり、当時のトップリーグだったLリーグまできました。私も少しだけLリーガーとして登録してもらいましたが、試合には出られずにサッカーは引退しています。

その後に、アイナックの先輩で今はアルコ神戸代表の小村(美聡)がフットサルに誘ってくれたので競技を始めました。3、4年アルコにいて、結婚して三重に行きました。

──三重では東海リーグの「member of the gang」でプレーしていました。

ギャングは本当に家族みたいで、365日のうち300日くらい一緒にいた気がします(笑)。いろいろなことを乗り越えながら、フットサルのことを真剣に考えてプレーできるのがすごく楽しくて、新しいフットサルの形も教えてもらいました。結婚してフットサルをやめる選択肢もありましたが、今も現役を続けているのは間違いなくギャングがあったからだと思っていますし、感謝しかありません。

──いつからトップリーグや日本代表を意識するようになったのでしょうか?

フットサルを始めてから、すぐに日本代表に呼んでもらいました。ただ、チームが強かったから選ばれていると感じていて、自分の力で選出された感覚はありませんでした。

その後、ギャングでプレーしていて、このままの自分のレベルだとチームを勝たせることができないと思った時に「もっとうまくなりたい」と。その時に、日本代表GKコーチを務める内山慶太郎さんがスクールをしていることを知って通い始めました。そこでたくさんのGKコーチに出会い、練習していくなかで「私、まだうまくなれるな」と、年齢に関係なく感じました。そこからはとにかく練習が楽しくて、もっとやりたいという気持ちでここまで。

今も関東で試合があった時は、内山さんのパーソナルトレーニングを受けています。なにかあれば相談に乗ってもらいますし、今もいろいろなことを教えてもらっています。

──その後、妊娠・出産で競技から離れていますよね?

そうですね、妊娠した時はギャングでプレーしていました。その時はすぐに競技復帰できるように体力や筋力を維持するように心がけていて、出産した後すぐにできるお腹を絞める筋トレのようなものもしていました(笑)。子どもを抱っこしながらスクワットしたり、ずっと競技復帰を意識していて、3月に出産して、7月の地域リーグには出ていましたね。

──すごいスピード復帰ですね。

そう思います(笑)。復帰してから、結婚、妊娠・出産した後に私が日本代表に戻ることができたら、ライフステージが変わってもフットサルを続けてくれる人が増えるんじゃないかなという気持ちが出てきました。結婚したら引退とか、女子は選手生命が短いとかではなく、大変だし周りの協力も必要だけど、みんなまだまだ長いことプレーできるよと伝えたいし、広告塔のような存在になれたらなという意識で競技を続けています。

──今も日本代表を目指していますよね。

はい、去年の春には候補合宿に呼んでもらいましたし、GKは若さだけが武器ではないなと思っています。もちろん体も鍛えていますし、自分が安定したパフォーマンスを出し続けることは大前提で、若い選手とは違う立ち位置の選手として選んでもらえるように、日々努力しています。

兵庫のGKコミュニティで切磋琢磨している

──佐藤選手は、GKながらゴールにつながるプレーが多い印象です。

自分の武器の一つが、味方にタイミングを合わせるスローだと思っているので、それは今シーズンから特に意識しています。キャプテンの山川へのスローから得点を決めてくれることもあったので、どの試合でもボールをキャッチした後のリスタートは味方の動きを見るようにしています。練習中から「私がキャッチしたらどこに走ってもそこに投げるから」という話はしていましたし、それがいい結果につながっていると思います。

──内山さん以外に、どのようにGKの技術を学んできましたか?

フィールドの練習で成長する部分もありますが、やはりGKは、GKのレーニングでしか得られないものはあるので、その時間を多くつくることが大事だと思っています。

兵庫に来てからは、GKだけでトレーニングをする曜日と時間を決めて、来られる人で集まって練習しています。男女関係なく、関西リーグや県リーグに所属している選手、デウソン神戸の選手が来ることもあります。兵庫のコミュニティの中で切磋琢磨しています。

──佐藤選手が声をかけ始めたということですが。

兵庫に来てから、そうした環境をつくりたいと、連盟の方などにお願いしてきました。今すぐにGKコーチが増えたり、環境が良くなったりすることは難しいと思うので、そういう場所を自分でつくる必要があります。やらないとうまくならないと思っていますし、三重にいた時も、男子のGKでやる気のある人に声をかけて、時間をつくって練習していました。

あとは、多くの人から意見を聞くようにしています。GKコーチもさまざまな考え方がありますし、自分に合う、合わないもあるので、いろんな人に見てもらって、納得するやり方を探していくことも大事だと思っています。

──あこがれの選手や師匠的な選手はいますか?

その時、その時で、という感じです(笑)。今年初めて日本代表に入ったシュライカー大阪の樋口(就大)さんは一緒に練習していた期間があるので、彼のプレーを見て学んだり、「ここどうやるの?」と聞いたりしていました。そういう意味では、一緒にトレーニングしている選手に話を聞くことは多いですね。デウソン神戸の2人のGKもそうですし、話を聞かせてもらえる人は多いかもしれません。選手それぞれに得意なプレーがあるので「こういう時はこの人に聞こう」と、分けて聞いています(笑)。

──スローについて誰かに聞くことはありますか?

やはり、男子選手とは投げ方が違うので、投げ方は聞いたことがありません。それよりも、フィールドの選手とすり合わせています。得意なボールは個々で違うので、タイミングやつける足、バウンド、高さを選手ごとに合わせています。キックもスローも、速いボールだけが良いわけではなく、次のプレーにつながるやわらかいイメージで投げることが多いです。

自分が止めて日本一へ

──フットサルをプレーする姿を通して伝えていきたいことはありますか?

努力次第で人は成長し続けられること。女性だから、お母さんだから諦めないといけないわけではないこと。その2つです。いろんな立場があると思うけれど、もっと人生を楽しんでいいんだよと、ママたちに伝えたい気持ちがあります。

──最後に、今シーズンの個人とチームの目標を教えてください。

個人としては、得意なスローでみんなにいいボールを出して、得点した時のみんなの笑顔が見たいですね。ギリギリで勝った瞬間や、みんなが笑っている姿が好きですし、そういう姿を見ると私も頑張ろうと思うので、全部の試合でその手助けをしたいです。

あとは、自分が止めることでリズムができるチームだと思うので、当たり前のところを当たり前に止めて、その上で「やられた!」と思うようなシュートも止めたいです。

チームとしては、シーズン前から変わらず日本一です。上位リーグは全部勝って、日本一になります。

──そのために意識していることは?

チームメートには「日常からだよ」という話はよくしています。アルコは他のチームに比べて練習量が多いチームではありません。だからこそ重心を意識した立ち方とか、リカバリー、睡眠、そこをどれだけ意識できるかが大事です。日々のすべてがフットサルに出ますし、練習でも小さなことに意識を向けて取り組もうということは伝えています。

※選考協力:PANNA-FUTSAL@panna5
※取材協力:
SAL@sal_japan

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東京都文京区後楽1-4-18 トヨタ東京ビル4階
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小野寺隆彦
上場
未上場
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設立
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