ガザ:南部ナセル病院が機能停止 医療へのアクセスが断たれる

国境なき医師団

パレスチナ・ガザ地区南部のハンユニスで激しい戦闘と爆撃が続くなか、南部最大の医療施設であるナセル病院が機能停止に陥っている。国境なき医師団(MSF)は、戦闘で負傷した人びとの医療アクセスが奪われていると警告し、改めて医療施設の保護と持続的な停戦を訴えている。

患者が殺到するナセル病院で医療援助活動をするMSFのスタッフ=2023年12月12日 © MSF患者が殺到するナセル病院で医療援助活動をするMSFのスタッフ=2023年12月12日 © MSF


  • 失われた医療


イスラエル軍による周辺地域の退避要求が出されるまでの数日間で、ナセル病院スタッフの大半は、病院に避難していた数千人の避難民とともに退避した。現在、病院の外科手術能力はほとんどなく、病院に残っているごくわずかな医療スタッフは、一度に多数の負傷者が運び込まれた時には、不十分な物資で対応するしかない。


ナセル病院の周辺は危険であることに加え、搬送用の救急車がなく、現在も300人から350人の患者が避難できずにいる。患者はいずれも戦闘による負傷者で、開放創(外部からの力による損傷で皮膚に開口、亀裂が生じたもの)、爆発による裂傷、骨折、やけどなどを負っている。1月24日には整形外科医による処置ができないことによって、少なくとも1人の患者が死亡した。


パレスチナでMSFの医療コーディネーターを務めるギュメット・トマは「医療が行き届かないために、人びとの命が危険にさらされています。ハンユニスの主要医療施設のナセル病院とヨーロッパ病院にたどり着くのは困難で、ガザにはもはや医療体制がありません。医療に対するこのような組織的な攻撃は容認できず、負傷者が必要な治療を受けられるよう、今すぐ終わらせなければなりません」と憤る。


  • 使用済みガーゼを再利用――人も物資も足りない


ナセル病院で活動を続けるMSF看護師のラミ(※)は、1月25日に50人の負傷者と5人の死者が一度に運び込まれて来た際に無力感を感じたと話す。


※安全確保のため、名字は表記していません。


「ナセル病院の救急処置室で働くスタッフは残っていませんでした。ベッドもなく、椅子がいくつかあるだけ。数人残っていた看護師で患者を救急処置室に連れて行き、手元にあるもので応急処置をしました。そこで患者のトリアージ(重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決めること)も行ったのです。恐ろしい出来事で、精神的に本当に参ってしまいました」


「ガーゼパッドのような基礎的な物資が底をつきかけています。今日、私たちの診療科の患者受け入れのために手術室に残っていたスタッフに腹部ガーゼを支給してほしいと頼んだところ、あるものはすでに使っていると言われてしまいました。一度使ったガーゼから血液を絞り出し、洗浄して滅菌し、別の患者に使用します。これがナセル病院の手術室の現状だなんて、想像がつきますか?」


  • 医療施設の保護と停戦を


© Jorge Montoya/MSF© Jorge Montoya/MSF

ヨーロッパ病院は、ガザ南部でナセル病院に次いで大きな施設で、外科手術の態勢も大規模だ。しかし、現在、近隣地域は退避要求下にあるため、医療スタッフも人びともたどり着くことができない。


病院は保護された空間でなくてはならず、人びとと医療従事者が医療にアクセスし、また、医療を提供することを阻害されてはならない。1月26日、国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに対し、パレスチナ人に対する大虐殺を防止し、ガザの人道状況改善に向けて緊急措置をとるよう命じる暫定措置を発表した。これは重要な一歩ではあるが、持続した停戦のみが、より多くの市民の犠牲を食い止め、ガザ地区に住む220万人のための人道援助と重要な物資の供給を可能にする。

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
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代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月