働き方改革の残業規制で約5人に1人が「サービス残業増えた」
働き方改革の残業規制における残業の実態調査
<調査サマリー>
残業規制による変化「残業時間の可視化」が最多、働き方の見直しまで至らず
約5人に1人が「残業規制でサービス残業増えた」と回答
残業規制の影響で約1割が「給与減」、なかでも物流業界は約2割が減少
1.残業規制による変化「残業時間の可視化」が最多、働き方の見直しまで至らず
2018年3月以前から現在にかけて正社員として勤務している男女399名に対し、就業先で残業時間削減に関する施策は実施されているか聞いたところ、約4人に1人が「実施実感無し(25.6%)」と回答しました。
企業規模別※では、企業の規模が小さくなるほど従業員の残業削減に関する施策の実施実感が低く、小規模企業では半数以上が「実施していない(52.9%)」と回答しています。
※ 調査における企業規模の定義(本調査において、企業規模の分類は以下の基準に基づきます)
・大企業:社員数500名以上
・中小企業:社員数20名以上500名未満
・小規模企業:社員数20名未満
具体的な取り組みで最も多かったのは、「残業時間の可視化(62.0%)」でした。次いで「長時間労働者への声がけや配慮など、勤怠管理の整備(48.5%)」と続きます。「オペレーションの工夫・改善(17.2%)」「機械化・自動化を目指したシステムの導入(12.8%)」「リスキリングの導入など、従業員の能力の向上(4.4%)」などの、労働生産性を本質的に向上させる取り組みができている企業は限られています。
2.約5人に1人が「残業規制でサービス残業増えた」
働き方改革における残業規制の前後で「実労働時間※が削減された(30.3%)」と回答した人は約3割に留まりました。
※ 実労働時間:使用者の指揮命令に従い実際に労働している時間(休憩時間は含まない)
「残業規制によりサービス残業が増えたと感じるか」という問いに対し、約5人に1人が「サービス残業が増えたと感じる(23.3%)」と回答しています。
企業の残業削減に関する取り組みは、本質的な残業改善に至ってない施策が目立ちます。会社に申請できる残業時間が減っただけで、実際の業務量は変わらないため、結果として「残業を隠さざるを得ない」状況に陥っていることが予想されます。
3.残業規制の影響で約1割が「給与減」、なかでも物流業界は約2割が減少
残業規制を受けて給与に変動はあったかについて聞いたところ、約8割は「変わらない(76.2%)」と回答したものの、約1割は「給与が下がった(11.0%)」と回答しました。
2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用された物流・建設業界と、その他の業界※1を比較したところ、物流業界においては約5人に1人が「給与が下がった(22.4%)」と回答しており、その他の業界と比較しても12~18pt程度高い数値が出ています。
物流業界では長時間労働が常態化しています。厚生労働省※2によると、トラックドライバーの超過実労働時間数は全産業と比較して3倍を超えており、このことから、残業規制による給与への影響が起きやすいことが予想されます。給与が減ったと回答した物流業界の正社員からは「今まで残業をする事でなんとか生活出来ていたのに、残業が出来ないせいで収入が減り、転職を考えなくてはいけなくなった」といったコメントが寄せられました。
※1 本調査における、「その他の業界」に関して:IT/医療・介護・福祉/不動産/広告/専門商社/金融・保険/メーカー(機械・電気・電子・素材)/サービス
※2 2022年3月,厚生労働省,「令和3年賃金構造基本統計調査」より引用
<ハタラクティブ事業責任者・後藤祐介氏からの一言>
働き方改革により、時間外労働の上限規制が導入され、約5年が経過しました。これまで物流・建設業では上限規制の実施が猶予されてきましたが、2024年4月より法規制の適用が開始されています。
今回の調査では、企業の規模や業界によって残業削減に関する取り組みの有無や内容にはばらつきがあることがわかりました。上限規制が導入されてから約5年が経過しましたが、本質的に労働生産性を向上させる取り組みを実施している企業は限られていることが明らかになっています。
働き方改革の残業規制による影響で、約5人に1人がサービス残業の増加を実感していると回答したことからも、その実態がうかがえます。
昨今、リモートワークの普及により「仕事を持ち帰ることができる」環境が広がっています。企業が「見えない残業」を管理することは、ますます難しくなっていくのではないでしょうか。
また、賃上げが話題に上がる一方で、残業規制による「給与減」の実態も浮上しています。労働生産性が向上せず、残業時間だけが制限されるため、残業代が減少するケースは少なくありません。その結果、転職や副業、スポットワークを余儀なくされ、長時間労働を避けられない状況に陥るというケースも起こり得ると考えられます。
オーストラリアでは今年2月、従業員が勤務時間外に仕事の連絡を無視しても不利益な扱いを受けない「連絡遮断権」、つまり「つながらない権利」を定めた法律が制定されました。
「適正な就業時間」を実現するには、企業がどう取り組むかは大きな影響を与えますが、同時に、日本における労働環境の法整備がますます必要になると言えるでしょう。
◆後藤 祐介氏・プロフィール
ヒューマンキャピタル事業本部 ハタラクティブ及びワークリア事業責任者
京都大学を卒業後、大手ゼネコンを経て、2012年にレバレジーズへ中途入社。現在は「ハタラクティブ」と障がい者の就労支援サービス「ワークリア」を統括するほか、営業システムの構築や教育制度設計、高校生や企業に向けたセミナー開催など、幅広い業務を担当している。2020年に中小企業診断士に登録。趣味はゴルフ。
<調査概要>
調査対象:2018年3月以前より正社員として勤務している男女399名
調査年月:2024年4月23日~4月26日
調査方法:インターネット調査
回答者数:399人
調査主体:レバレジーズ株式会社
実査委託先:GMOリサーチ&AI株式会社
ハタラクティブ ( https://hataractive.jp/)
ハタラクティブは、フリーターや既卒など正社員未経験の方や経験の浅い第二新卒向けの就職・転職支援サービスです。サービス登録者数は52万人※を超え、「仕事探しに”あなた”の正解を」というスローガンのもと、採用基準にマッチした求人を紹介するだけではなく、個々人にとって最適な支援を提供することに重点を置き、サービスを展開しております。※2023年4月時点
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