政治や選挙で「最もよく使う」情報源、6割強がマスメディア。スマートニュース・メディア価値観全国調査2025
世界中の良質な情報を必要な人に送り届けることをミッションとするスマートニュース株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO:浜本階生)の社内シンクタンクであるスマートニュース メディア研究所(所長:山脇岳志)は、日本国内の政治的・社会的分断や、人々のメデイア接触状況を概観する「スマートニュース・メディア価値観全国調査」(SmartNews, Media, Politics, and Public Opinion Survey 以下、SMPP調査)の結果を公表しました。
SMPP調査は2年ごとに実施しており、今回は2023年の初回に続いて2回目となります。今回の調査は郵送で行い、2025年1月16日に発送し3月5日までの回収分を有効回答としました。
設問数が60を超える本調査については、研究会メンバーによる分析が継続して行われています。今後数回にわたって分析結果を公表していく予定です。
【SMPP調査2025の主なポイント】
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「マスメディアへの信頼度」は、2023年の前回調査とほぼ変わらなかった。
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選挙・政治ニュースを得る際に「最もよく使う」のはテレビ(46.5%)で、ソーシャルメディア(SNS、YouTubeなどの動画投稿サイトなど)は10.9%だった。
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消費税については、減税を望む人が2023年から大幅に増え、現状(税率10%)維持や、増税が望ましいと思う人の合計は、半数を割った(前回調査では54.5%だった)。
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政党好感度では国民民主党が大幅に上昇した。ただ、政権担当能力については、自民党が4割を超え、国民民主党を含め他党をかなり引き離している。
【マスメディア信頼について】
テレビ、新聞、ラジオといったマスメディアへの信頼をたずねたところ、68.7%が信頼している(とても信頼している+まあ信頼している)と回答しました。前回調査(2023年)では68.2%で、ほぼ同じでした。
今回の調査は、2024年の東京都知事選や兵庫県知事選でマスメディア批判が話題になったり、著名芸能人と女性とのトラブルにテレビ局社員が関与したとされる問題が発覚した後に実施されましたが、マスメディアへの信頼度に変化はみられませんでした。
マスメディアへの信頼(SMPP2023/2025)

池田謙一・同志社大学教授(研究会共同座長)のコメント:
アメリカでは、1980年代に放送の政治的公平性を定めたルールが廃止されて党派的な放送が増え、リベラル系と保守系のメディアの対立が深まったり、2016年の選挙でトランプ氏が大々的にマスメディア攻撃を行ったことが、保守層におけるマスメディア信頼の低下につながった面があると指摘されている。
一方、日本ではマスメディアが大々的に批判をされ続けてきたとまでは言えない。フジテレビ問題や知事選をめぐってマスメディアへの批判はあったものの、現時点では、大多数の人はマスメディア全体の信頼に結びつけて考えておらず、それが世界的にも高いマスメディア信頼の継続につながっているのではないか。
【選挙・政治ニュースの情報源として最もよく使うメディアについて】
「選挙や政治に関するニュースを得る際に、最もよく使うメディアや手段」について尋ねたところ、テレビと回答した人が最も多く、46.5%でした。次いで、インターネットのニュースサイト・ニュースアプリが17.8%、(紙の)新聞・雑誌が16.0%でした。マスメディア(テレビ、新聞・雑誌、ラジオの合計)は63.9%だったのに対して、ソーシャルメディアを選択した人は10.9%でした。
選挙や政治のニュースを得る際に、最もよく使うメディア

藤村厚夫・スマートニュース メディア研究所フェロー(研究会メンバー)のコメント:
速報性などを考えれば、「テレビ」が依然として「よく使われる」メディアであることに不自然さはない。「インターネットのニュースサイト・ニュースアプリ」の利用が「(紙の)新聞・雑誌」をしのいだことも、その情報源が、マスメディアと重複することを考えると、違和感は少ない。
一方で注目は、SNSにYouTubeなどの動画投稿サイトを加えた「ソーシャルメディア」が10%超となった点だ。今後の詳細な分析を待つことになるが、年齢層や接触メディアの特性でグループ分けしたときに、選挙・政治ニュースの取得での「ソーシャルメディア」へのシフトが急ピッチで進んでいるグループがある可能性がある。
【消費税について】
近く実施される参院選で、消費税の扱いが大きな焦点になっています。前回調査(2023年)の時点で「消費税率を維持」もしくは「消費増税に賛成」と答えた人は、全体の54.5%でしたが、今回の調査(2025年)では39.4%と4割を切りました。他方で消費税減税・廃止派は40.4%だったのが、54.1%と過半数になりました。年代別では30代がもっとも消費税減税・廃止派が多く、60.2%でした。
政党支持者別に見ると、消費税減税・廃止派が多いのは、れいわ新選組の支持者(87.5%)、国民民主党の支持者(65.9%)でした。一方で、消費税維持・増税派が多いのは、自民党の支持者でした(57.2%)。
消費税率についての態度(SMPP2023/2025)

遠藤晶久・早稲田大学教授(研究会メンバー)のコメント:
2024年総選挙の自民党敗北の背景には、政治とカネの問題のほかに、物価高のような経済的な苦境があったと考えられる。その後も、物価高によって生活が逼迫していると感じる人が増える中で、消費税の減税が本格的に政治的な争点となり、有権者の間でも消費税減税を求める声が多数を占めるようになったと考えられる。
【政党への好悪と、政権担当能力について】
各政党についての好感度を聞きました。0(とても嫌い)ー10(とても好き)の11段階で好悪を聞き(5が中間)、回答者の平均値の変遷を見ると、自民党の好感度は2023年の前回調査よりも0.8ポイント低下しました。好感度が大幅に上昇したのは、国民民主党(1.0ポイント上昇)、れいわ新選組(0.6ポイント上昇)でした。
政党への好悪(SMPP2023/2025)

各政党に対する「政権担当能力」をどうみるかについても聞きました。(政権担当能力があると思う政党を選択する形。複数回答可)。自民党を選択した人の割合は、前回調査よりも14ポイント減少した一方、国民民主党が10ポイント、立憲民主党が5ポイント上昇しました。自民党が政権担当能力があるとみる人は依然として4割を超えて他党を大きく引き離しており、次いで立憲民主党(18.1%)、国民民主党(14.4%)、日本維新の会(12.1%)となりました。
政権担当能力への評価(SMPP2023/2025)

前田幸男・東京大学教授(研究会共同座長)のコメント:
旧安倍派の裏金問題が報道されつづけ、自民党のイメージに大きな傷がついたようだ。石破首相には悪いイメージを払拭することが期待されていたと思うが、衆院選で改選前から大幅に議席を減少させたことからわかるように、自民党のイメージは改善していない。
その一方、国民民主党の好感度が上昇したのは、経済状況が厳しい中で『手取りを増やす』という分かりやすい政策目標を設定し、有権者に期待を持たせることに成功したためだと思われる。ただし、これらの好き嫌いの評価が直接的に政権担当能力への評価に結びつくわけではないようだ。自民党の政権担当能力への評価は14ポイント低下したとは言え、他党よりもかなり高い。有権者は過去の実績を思い浮かべながら、冷静に各政党の能力を評価しているように見える。
【今後の公表の日程について】
次回は、6月26日に「ニュース回避傾向」などについて公表を行う予定です。その後の公表日程は、現段階では未定です。
◾️スマートニュース・メディア価値観全国調査2025・調査概要
調査時期:2025年1月〜3月
実査委託先:株式会社日本リサーチセンター
実施方式:18歳-79歳の有権者を対象に、郵送で実施
郵送調査:日本国内に居住する18歳から79歳の男女を調査対象とし、日本リサーチセンターが管理するトラストパネルの登録者から、2020年国勢調査の人口を基準として、地域・性別・年代による層化抽出を実施。
初期標本の4460に対して回収数は2117(回収率は47.5%)。
1月16日に調査票の入った封筒を発送、3月5日迄に到着した回答を有効とした。
同時に、SMPP2023(2023年3月実施)の回答者の中で、18歳〜79歳の男女を対象として、追跡調査も実施したが、今回発表する結果は、新規対象者への調査のみとしている。
■スマートニュース・メディア価値観全国調査研究会2025メンバー
共同座長:
池田謙一 同志社大学社会学部メディア学科大学院教授
前田幸男 東京大学大学院情報学環教授
研究会メンバー(五十音順):
遠藤晶久 早稲田大学社会科学総合学術院教授
大森翔子 法政大学社会学部メディア社会学科准教授
久保文明 防衛大学校校長
小林哲郎 早稲田大学政治経済学術院教授
笹原和俊 東京科学大学環境・社会理工学院イノベーション科学系教授
長澤江美 スマートニュース メディア研究所研究員
藤村厚夫 スマートニュース メディア研究所フェロー
山脇岳志 スマートニュース メディア研究所所長
■スマートニュース メディア研究所について
スマートニュース メディア研究所は、2018年に設立されました。ニュースやメディアが社会や人々の役にたつためにはどうあるべきかをテーマに、メディアリテラシー教育の研究・実践や、世論調査などを行っています。
https://smartnews-smri.com/about/
※ SMPP調査2023の調査結果および分析については『日本の分断はどこにあるのか スマートニュース・メディア価値観全国調査から検証する』(勁草書房刊)をご参照下さい。
■スマートニュース株式会社について
スマートニュース株式会社は2012年6月15日の設立以来、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」をミッションに掲げ、日本と米国でニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」を開発、国内のニュースアプリとしては最大級のユーザー数を誇ります。2023年末からは初めてのサブスクリプションサービス「SmartNews+」を開始、子会社のスローニュース株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表者:瀬尾傑)とともに、優れたジャーナリズムによって生まれた良質な報道や多様なコンテンツを一人でも多くの利用者に届けることに力を注いでいます。世界中の膨大な情報を日夜解析し続けるアルゴリズムと国内外の3,000媒体以上ものメディアパートナーとの強力な提携関係のもと、スマートデバイスに最適化された快適なインターフェースを通じて、良質な情報を一人でも多くの利用者に効果的に届けることで、これからも社会に貢献していく考えです。
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