アメニティはオフィスビルの付加価値を向上させるのか?

~データで見るテナント共用ラウンジの設置状況と効果~

三幸エステート株式会社

三幸エステート株式会社※1は賃貸オフィスビルに関する各種データを活用し、筑波大学 不動産・空間計量研究室※2と共同でオフィス市場の動向に関する調査を行っています。。今回はテナント共用ラウンジに焦点を当て、その設置状況と設置効果について調査した結果を公表します※3。

※1 本社:東京都中央区、取締役社長:福島正二郎

※2 所在:茨城県つくば市、主宰:堤盛人教授
※3 この調査は、松尾らが執筆したワーキングペーパー(https://dx.doi.org/10.2139/ssrn. 6994278)の一部を要約したものである。

▼ 本レポートはこちらからもご覧いただけます。

https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/PRTIMES_20260721.pdf


調査の背景と概要

 高品質なオフィスビルを求める旺盛な需要と、建築費高騰によるストック活用の拡大を背景に、既存ビルの付加価値を高めようとする取組が増加しています。その中でも、柔軟な働き方に対応可能な「テナント共用ラウンジ」等を設置することで共用部におけるアメニティの充実を図るケースが多く見られます。そこで今回の調査では、2025年12月末時点において、東京都心5区に立地する1フロア面積200坪以上、貸付面積3,000坪以上の標準的なオフィスビル436棟を対象に、「テナント共用ラウンジ」の設置状況や設置効果について分析しました【図表1】。

テナント共用ラウンジの設置状況

 調査の結果、2025年12月末時点で436棟のオフィスビルのうち72棟(16.5%)がテナント共用ラウンジを備えていることがわかりました【図表2】。ラウンジの設置率は2015年以降、増加傾向が続いており、近年は既存ビルでリニューアルの際に併せて後付けする事例が増えています。

 このようなテナント共用ラウンジ等のアメニティの充実化は都心の大規模ビルだけでなく、都心の中小ビルや地方都市でも増加しています。都心の中小ビルでは貸室をセットアップオフィスに改修し、共用部も充実させる取組が多く見られます。地方都市においても新築大規模ビルを中心にアメニティの充実したビルが増えており、貸付面積の15%相当を共用部とする事例もあります【図表3】。

 テナント共用ラウンジの設置効果

 テナント共用ラウンジの設置は時間的なラグを伴って、募集賃料、空室率、そして募集期間に有意な影響を与えます。ここでは、差分の差分法という統計的因果推論の方法論を用いてテナント共用ラウンジの設置が募集賃料、空室率、募集期間に与える影響を分析しました。

分析の結果、テナント共用ラウンジの設置後、1年後から5年後までにかけて募集期間は24.2~57.0%短縮しています。空室率は設置から2年後以降に有意に低下し、1.2~1.8ポイントほどのマイナス効果が得られます。さらに募集賃料は設置後緩やかに上昇し、5年後に7.6%のプレミアムをもたらします。この結果はテナント共用ラウンジが移転を検討するテナントや既存の入居テナントを引き付け、ダウンタイムの短縮、稼働率の改善、賃料単価の上昇を通じてオフィスビルの付加価値を向上させることを示しています。

 今回の調査ではテナント共用ラウンジの設置が広がり、ラウンジの設置が募集賃料、空室率、募集期間を通じて、オフィスビルの付加価値向上に寄与していることを示しました。高品質なオフィスを求める需要が旺盛な中で、テナント共用ラウンジ等の充実した共用部は視覚的にわかりやすい差別化要因となります。従来、テナントにとってオフィスビル選びは「立地・面積・予算」の3要素で決まるとされてきました。しかし、今後は共用部等の「アメニティ」もオフィス選びの重要項目になることが考えられます。

すべての画像


会社概要

三幸エステート株式会社

17フォロワー

RSS
URL
https://www.sanko-e.co.jp/
業種
不動産業
本社所在地
東京都中央区銀座4-6-1 銀座三和ビル
電話番号
03-3564-8089
代表者名
福島 正二郎
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1977年05月