【国立映画アーカイブ】展覧会「和田誠 映画の仕事」開催のお知らせ
グラフィックデザイナー、イラストレーターの和田誠と映画との深い結びつきに光を当てる
国立映画アーカイブでは、12月12日(火)より展覧会「和田誠 映画の仕事」を開催します。
日本を代表するグラフィックデザイナー、イラストレーターの和田誠(1936-2019)にとって、映画は人生の友であり、創造の泉でもありました。
少年期からの映画への情熱に支えられ、若手デザイナーとして頭角を現すや、本職の傍ら映画ポスターの制作やアニメーション映画にも挑みました。やがてその味わいある画風は広く支持され、世界の映画人を描いた無数のイラストレーションや、映画をめぐる著書や対談集を続々と送り出してゆきます。さらにその情熱は日本映画界を動かし、監督修業の経験なしに『麻雀放浪記』(1984年)をはじめ4本の優れた長篇娯楽映画を監督するに至りました。
また私生活でも、熱意をもってアメリカ映画のフィルムやポスターのコレクションを築き、当館も2015年の展覧会「ポスターでみる映画史 Part 2 ミュージカル映画の世界」にそのコレクションをご貸与いただきました。
その博覧強記にもかかわらず、「評論家」ではなく常に“映画ファン”を自称していた和田誠。この展覧会は、日本が生んだこの最高の“映画ファン”の限りない映画愛を感じ取れる絶好の機会となるでしょう。
見どころ
1. 膨大な業績の中から映画だけにテーマを絞った初の展示
和田誠の約60年にわたる仕事は多岐にわたりますが、本展では映画にテーマを絞り、映画を「知った・描いた・語った・集めた・撮った」という5つの切り口によって振り返ります。
2. 手がけた映画ポスターや装丁した映画書が勢ぞろい
若き日の「日活名画座」ポスターから劇場公開用・映画祭などのポスターまで、そして俳優・監督などのイラストレーションを活かしつつ装丁を手がけた映画書の数々をお楽しみいただけます。
3. 《監督・和田誠》に再注目!
『麻雀放浪記』『快盗ルビイ』『怖がる人々』『真夜中まで』の4つの優れた長篇娯楽作品を放ち、異業種監督でありながらスタッフにも慕われたという映画監督としての和田誠に改めて注目します。
4. 映画フィルムやポスターのコレクションを公開
アメリカ映画を愛した和田誠の情熱は、映画フィルムやポスターのコレクションにも向かいました。当館で受領することになったこれらコレクションの一端を公開します。
5. 監督作の映画音楽やお気に入りの映画の曲が聴ける
4つの監督作品で使われた音楽・主題歌のほか、和田誠が生涯愛したアメリカ映画の名曲の数々を聴ける音楽展示コーナーをご用意いたします。
展覧会の構成
I 映画を知った
映画館通いに励んだ少年時代とポスター作りへの志
中学時代にアメリカ映画に夢中になった和田誠は、高校生になるとヨーロッパ映画や日本映画への関心も深め、それと同時に、国立近代美術館で催された「世界のポスター」展(1953年)を訪れた経験から「ポスターを作る人になりたい」という望みを育みます。そして多摩美術大学に在学中、映画『夜のマルグリット』の手描きポスターで当時若手デザイナーの登竜門だった日宣美賞の受賞を果たしました。
II 映画を描いた
映画ポスターへの挑戦、そして華麗な映画人イラストレーション
大学卒業後、広告制作会社ライトパブリシティに入社した和田誠はデザイナーとして活躍を始めますが、その傍ら、東京新宿の「日活名画座」のためにポスターを無償で制作するようになります。以降半世紀以上にわたり、映画ポスター、映画書の装丁・挿画などを手がけ、国内外の俳優・監督・映画スタッフから評論家に至るまで、映画人の似顔絵を数えきれないほど手がけることになりました。
III 映画を語った
「お楽しみはこれからだ」――終わらない映画談義と映画書の数々
映画のさまざまなシーンについて抜群の記憶力を持っていた和田誠は、1973年から「キネマ旬報」で連載「お楽しみはこれからだ」を開始し、軽妙なタッチで映画の名セリフやシーンの魅力を語り尽くしました。その後も映画にまつわる数々の著作を残しましたが、さらに山田宏一や三谷幸喜などとの対談本でも終わらない映画談義に花を咲かせ、読者を大いに楽しませました。
IV 映画を集めた
仕事場は映画館だった――和田誠の映画&ポスターコレクション
映画をめぐる和田誠のさまざまな活動の中で、比較的知られてこなかったのが映画フィルムやポスターなどの収集です。収集したフィルムは300本以上に及び、またアメリカ映画のオリジナル版ポスターのコレクションも長年続け、ときには自身の監督作品のセットを飾りました。さらに映画関連の洋書やスチル写真など、イラストレーション制作の参考となる資料も豊富に所有していました。
V 映画を撮った
アニメーションへの情熱、そして劇映画監督としての道のり
アニメーション『MURDER!』(1964年)で評価されていた和田誠でしたが、名プロデューサー角川春樹との出会いを通じて、初めての劇場用長篇映画『麻雀放浪記』(1984年)を作ることになります。同作品はその堂々たる完成度で多くの賞を受賞しましたが、その後も『快盗ルビイ』(1988年)、『怖がる人々』(1994年)、『真夜中まで』(2001年公開)と多彩な長篇作品を残しています。
トークイベント――《監督・和田誠》を忘れない!
展覧会「和田誠 映画の仕事」会期中、ゲストをお招きしてトークイベントを開催いたします。
≪監督・和田誠の素顔≫
日時:2024年1月20日(土)
場所:展示室ロビー(7階)
講師:関口裕子氏(「キネマ旬報」元編集長)
≪和田誠作品の映画美術≫
日時:2024年2月10日(土)
場所:展示室ロビー(7階)
講師:小澤秀高氏(『麻雀放浪記』美術助手、『怖がる人々』美術監督)
≪企画の見どころと展示品解説≫
日時:2024年3月16日(土)
場所:展示室内(7階)
講師:岡田秀則(当館主任研究員)
関連上映企画
上映企画「NFAJコレクション 2024 冬」におきまして、展覧会に関連した作品の上映を行います。
企画名:NFAJコレクション 2024 冬
会期:2024年1月19日(金)-2月4日(日)※金・土・日曜のみ
会場:国立映画アーカイブ 小ホール[地下1階]
和田誠監督作『麻雀放浪記』(1984年)、『快盗ルビイ』(1988年)、『怪盗ジゴマ 音楽篇』(1988年)、参加作『恋の大冒険』(1970年、羽仁進監督)などの上映を予定しています。
開催概要
企画名:和田誠 映画の仕事
(英題 / Makoto Wada: Works on Film)
主催:国立映画アーカイブ
協力:和田誠事務所、多摩美術大学アートアーカイヴセンター
会期:2023年12月12日[火]-2024年3月24日[日]
休室日:月曜日および12月26日[火]-1月4日[木]
開室時間:午前11時-午後6時30分(入室は午後6時まで)
*1/26、2/23の金曜日は開室時間を午後8時まで延長いたします。(入室は午後7時30分まで)
会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
料金
:一般250円(200円)/大学生130円(60円)/65歳以上、高校生以下及び18歳未満、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料
*料金は常設の「日本映画の歴史」の入場料を含みます。
*( )内は20名以上の団体料金です。
*学生、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方、キャンパスメンバーズの方は入室の際、証明できるものをご提示ください。
*国立映画アーカイブが主催する上映会の観覧券(オンラインチケット「購入確認メール」またはQRコードのプリントアウト)をご提示いただくと、1回に限り団体料金が適用されます。
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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