チャド:配給の削減で、スーダン難民が深刻な食料不足に──国際援助の拡大が急務
2023年4月にスーダンで内戦が始まって以来、隣国チャド東部の難民キャンプでは50万人を超える難民を受け入れている。しかし今、国際的な援助の削減を受け、食料配給の量が大幅に減少。難民の生活と健康への影響が懸念される。現地で国境なき医師団(MSF)のプロジェクトを統括する落合厚彦は、わずかな収入を得るために森で薪集めをする女性たちが、暴力の被害に遭っていると報告する。
MSFは資金拠出機関や援助国に対し、早急に援助を拡充するよう呼びかけている。
「子どもたちを養えない」
キャンプの一つであるアブテンゲでは、約4万4500人のスーダン難民が暮らし、その大半が女性と子どもだ。劣悪な生活環境の中で、食料配給の大幅な削減に直面している。
昨年7月に家族でアブテンゲに逃れて来たジミヤさんはこう話す。「内戦前のスーダンに比べて、ここでの生活は悲惨です。最初は十分な食料をもらえましたが、最近受け取るのはモロコシと油くらいです。食材がなければ、何かを調理することもできません。これでは子どもたちを養っていけません」
今年の2月から、食料の配給は徐々に減少。資金援助が不透明なため、供給が途絶え、遅れが生じている。
収入源である薪集めが、女性たちを危険にさらす
アブテンゲ・キャンプは地理的に孤立しており、生計を立てる機会もほとんどない。そのため、難民は食料援助を頼りにせざるを得ない。
食料も経済支援も足りない中で、女性たちの数少ない収入源は薪を集めてくることだ。薪を取るために森の奥深くまで長い距離を歩く必要があるが、これは大きなリスクを伴う。
昨年7月からキャンプに滞在しているスーダン難民で、7人の子どもの母親であるアジザさんは「森にいると時々、薪を集めてはいけないと脅す人がいるのです。殴られた人たちもいます」と語る。
キャンプ周辺にできた非公式の市場では、乾燥した枝の束が1〜3ユーロ相当で売られている。資源や食料が不足しているため、難民たちは生きるために薪を集め続けるしかない。
プロジェクト・コーディネーターとしてチームを統括する落合厚彦はこう話す。
「アブテンゲ・キャンプに住む女性たちの数少ない生計手段の一つは、周囲の森で薪を集め、それを売ってわずかなお金を得ることです。薪を取りに行くことは、女性を暴力の危険にさらします。しかし、貴重な収入源であるため、選択の余地がないのです。残念なことに、女性が森で暴行を受けたという話は後を絶ちません」
食事は1日1食に
食事の量が減れば、特に子どもの間で栄養失調の増加につながりかねない。MSFの緊急対応コーディネーターを務めるダニエル・ボルジェスは、「MSFはアブテンゲ・キャンプで、中等度や重度の急性栄養失調の子どもを月に何百人も治療しています。食料不足が続けば、事態はさらに悪化しかねません」と懸念する。
アドレから2時間の距離にあるメチェの状況も同様に厳しい。現在、多くの難民が1日1食の食事で生き延びている。ここ数カ月、メチェと近隣のアラーシャ、アルコウムの両キャンプで食料配給が行われているが、難民が受け取る1食分のカロリーは低い。
これらのキャンプから、合併症を伴う重度の急性栄養失調の子どもたちがMSFメチェ病院の入院栄養治療センター(ITFC)に運ばれてきている。その数は今年1月から8月にかけて増加。メチェの11人の子どもは、8月初旬から9月にかけて退院した後、栄養失調が再発した。
今すぐ支援の拡充を
これ以上の悪化を防ぐため、栄養支援の強化と輸送面の改善が急務だ。
継続的で計画的な人道援助資金が不足していることで、難民の状況はさらに深刻になっている。ボルジェスは「チャドで起こっている危機は、資金拠出機関と援助国から忘れられていると感じます。今すぐ実質的な支援の拡充が行われないと、さらに大きな人道危機に発展する危険があります」と訴える。
ジミヤさんは「NGOから受けた支援には感謝しています。でも、かつてのように尊厳をもって生きるためには、十分な食料と適切な住居、そして仕事の機会が必要なのです」と話す。
MSFはアブテンゲ・キャンプで1年以上にわたり、必須医療の提供や、給水、衛生支援を行っている。栄養失調の治療や、石けん・蚊帳・貯水容器といった生活必需品の配布など、活動は多岐にわたる。このキャンプに移って14カ月になるにもかかわらず、約1万4000人の難民が適切な避難所にも住めないまま、極めて過酷な条件下で仮住まいを続けている。
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