【ホクレンDC2025】インタビュー企画「支える視点でのホクレンDC」①

限られた日程や開催場所であるにもかかわらず、長距離コアファンを掴んで離さないホクレン・ディスタンスチャレンジ。今年は大会テーマでもある「ここ(北海道)にいるすべての人のチャレンジだ」の元、新たなチャレンジとして強化スタッフ・自治体職員さん以外の「支えるひと」へもインタビューを実施いたします。大会を通してホクレンファミリーであるという一体感を生み出すことや、今後大会を創るうえでも「支えるひと」の存在を知ってもらう機会に繋げます。
第1回は各大会にてウェーブライトを設置してくださっている、栃澤 亨さん(株式会社アームティー)のインタビューです。

日本体育大学 卒。幼い頃より水泳をはじめ、高校まで競泳選手として競技。大学ではライフセービング部に所属。卒業後、IT関連企業にてWeb制作、動画制作を経験。営業や企画も携わったのち、スポーツイベント会社に転職。
マラソン・駅伝の記録計測事業の立ち上げをはじめ、陸上、テニス、ビーチフラッグス等、多競技にわたるスポーツイベントの立ち上げ・運営を担当。
東京2020オリンピックの事前キャンプとしてパンナムスポーツが実施したトレーニングキャンプ(4競技、26か国、120名の選手団)にて、運営統括としキャンプ計画から現場運営まで全てを担当。
2022年11月ウェーブライトをアジア初導入し、今に至る。
【栃澤さんとホクレン・ディスタンスチャレンジの関わり方は?】
――栃澤さんとホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)との接点は2大会前に遡るそうですね。この大会で初めて電子ペーサー(商品名:ウェーブライト)が導入されたのだとか。それまでの経緯を簡単にお聞かせください。
栃澤:ホクレン・ディスタンスチャレンジでは、2023年からウェーブライトを導入いただいております。ウェーブライトが日本で初めて導入されたのは2022年11月の八王子ロングディスタンスですが、その後5月のGGN(注1)と7月のホクレンDCという国内最高レベルの中長距離大会で採用いただきました。
おかげさまで、その後数多くの中長距離大会で導入いただいております。
ウェーブライトはオランダのWavelight Technologies社の製品であり、私が初めてこの製品を知ったのはある国内トップチームの監督のお話しからでした。私自身もウェーブライトの魅力に惹かれ、何としても国内に導入したいと動き始めました。
さまざまな陸上関係者のお力もお借りし、何とか彼らと連絡をとることができ2021年頃から国内大会への導入に関して交渉を始め、2022年11月にアジア初となるウェーブライトの導入が実現しました。
当時、既にダイヤモンドリーグで導入されておりましたが、日本ではまだあまり認知されていなかったので、当初よりホクレンDCで何とか採用いただけるよう願っておりました。
注1:ゴールデンゲームズinのべおか のこと。
【栃澤さんが考える陸上界でのウェーブライトの意義とは?】
――今となっては、陸連主催の大会では概ねウェーブライトを導入するようになりました。最近では大学の競技場にも常設されるなど、電子ペーサーの注目度の高さが伺えます。栃澤さんが考える電子ペーサーの長所や、陸上界での位置付けなどをお聞かせください。
栃澤:他社様の電子ペーサーの機能を把握していませんので、あくまでウェーブライトを前提にさせていただきます。
まず初めに、ウェーブライトがあるからといって早く走ることはできません。良い記録が出るのは、選手の力以外ほかにありません。
しかしながら、陸上には良い記録が出やすい条件というのがあり、特に長距離は多く存在します。この条件を整えるのにウェーブライトが一助となります。
中長距離の場合、トップレベルとなるとある程度ペースを一定、もしくは計画的に変動させるほうが良い記録が出る傾向があり、その目安としてペーシングライトは有効です。
また、有力選手がペーサーとしてレースを引っ張る場合でも、400mで1秒誤差というのは一般的には許容範囲ですが、次の1周で戻そうとすると結果前の周より2秒早く走ることにもなります。この微妙な上げ下げでも選手の体力は削られてしまうため、トップレベルとなると記録更新に大きな障害となってしまいます。
ウェーブライトを目安とすることで0コンマ何秒のずれに抑えることができるため、記録更新の可能性が高まることになります。
ただ、私自身ウェーブライトの最も魅力的なところは、タイムの可視化だと考えています。光により選手の走っている記録が可視化され、観戦者(指導者、応援者、関係者)がこれまで以上にレースにのめり込むことができます。
レース中に場内アナウンスで「この1周65秒」「この1000m2分40秒」など流れていると思いますが、正直陸上(長距離)に詳しい人でないと意味がわからないと思います。
仕方のないことですが、実際レース中今どういった状況なのかがわからない人がほとんどだということ。
良いペースで走っているのか、疲れてきているのか、記録更新できそうなのか。
ウェーブライトの光を目安に誰でも状況が把握しやすくなりますので、応援に熱が入ります。「その選手のベストタイムはいくつなのか?」なんてまずはどうでもよいのです。
光の状況で「がんばれ!あと少し!」「いけるぞ!そこ粘れ!」
光を追い越したら「よし!そのままいけぇ!」と、どの選手にも共感でき、熱の入った応援が可能になります。
レースが終わり「あの選手凄かった!ところで名前なんていうんだろう…?」から始めてもらえれば。
多くのスポーツが抱えている課題のひとつとして「ファンの数・大会の来場者数」があるかと思います。私はそのスポーツについて詳しくない人がどれだけ来場しているかで、そのスポーツ(大会)の価値・魅力・未来性があると考えています。
よって、陸上をより活性化させていくには、詳しくない人でも見ていて楽しいと思える環境を作る必要があり、ウェーブライトがその一助になれば幸いだと考えております。

(ホクレンDC2024網走大会の様子。レースが夜遅くに開始することが多い本大会では、ウェーブライトが大会に華やかさを演出してくれている。)
【ウェーブライトの設置方法など…】
――分かりやすい説明ありがとうございます!では、これまでとは少し異なる質問をお伺いします。ウェーブライトは競技開始の何時間前から設営されているのでしょうか。また、設営時に気を付けていることがあれば、お聞かせいただけますか?
栃澤:設営には約3時間かかりますので、その大会の状況にもよりますが午後からレース開始であれば、当日の午前。午前開始のレースであれば前日に設営します。
設営時に気を付けている点は、できるだけ等間隔にLEDライトを設置することと、LED間をつなぐ配線もできるだけ綺麗にすることです。
できるだけ選手が気にならず、自然に走れる環境を整えられればと考えております。
――なるほど…。ウェーブライトはどのようにして保管されるのでしょうか?また、ライトが欠けた場合など、どのようにして修理するのか…気になります!
栃澤:専用のケースに入れておりますが、倉庫で保管しています。LEDライトが故障した場合には、オランダ本社に送って修理してもらいます。予備用のLEDライトもありますので、故障具合により交換しています。

(ホクレンDC2023士別大会で撮影されたウェーブライトの様子。栃澤さんが伝えるように、配線も整えられていることがわかる。)
【今後の目標について】
――ありがとうございます!では、今後の目標をお聞かせください。
栃澤:先日、明治神宮外苑で開催された大会にて、アジア初となるロードレースでのウェーブライト導入が実現できました。ウェーブライトがロードレースで採用されたのは世界でも3回目で、過去最長コースとなりました。
近年、トラック競技のみならず、世界ではマイルや5k、10kとロードレースも人気になっていて、世界大会参加標準記録についてもロードレース記録も対象となっています。
国内でもこういったレースが増えていくことが予想され、記録のみならずより魅力的なレースの一助となるウェーブライトが導入されるように努めていきたいと思います。
――最後に一言お願いします!
栃澤:歴史と伝統のあるホクレン・ディスタンスチャレンジに関われて大変光栄です!
北海道という素晴らしい環境で、世界を見据えた中長距離大会が転戦レースとして毎年開催されているということは、日本陸上界にとってとても意義のあることなのではないでしょうか。
ホクレンDCに出場したい!ホクレンDCで目標を突破する!ホクレンDCで日本記録を更新する!等、選手それぞれのストーリーに刻まれている大会だと思います。
また、20年を超える歴史は、地元の方々をはじめ多くの人々のストーリーにも刻まれているのだと思います。
地元の方々、選手、観戦者、陸上関係者の新たなストーリーに良い影響を与えられるよう、微力ではありますが一生懸命努めていきたいと思います!
【ホクレンDC2025 特設サイト】
https://www.jaaf.or.jp/distance/

【大会概要】
主催:日本陸上競技連盟
共催:日本実業団陸上競技連合、深川市、士別市、千歳市、北見市、網走市
後援:北海道新聞社、北海道文化放送、読売新聞社
主管:空知陸上競技協会、道北陸上競技協会、道央陸上競技協会、オホーツク陸上競技協会
協賛:ホクレン農業協同組合連合会
特別協賛:プーマジャパン株式会社、西日本電信電話株式会社、雪印メグミルク株式会社
協力:韓国実業陸上連盟
運営協力:ディスタンスチャレンジ実行委員会
【ホクレンDC2025大会情報】
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