Lactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805(プラズマ乳酸菌)の発見・商品化が、「令和5年度全国発明表彰」で「恩賜発明賞」を受賞
~健康食品素材として初!食品企業では59年ぶりの受賞~
■全国発明表彰とは
発明協会が皇室からの御下賜金を受け、我が国における科学技術の向上と産業の発展へ寄与することを目的に、多大な功績をあげた発明、考案、意匠、あるいは、今後大きな功績をあげることが期待される発明などを表彰するものです。
中でも「恩賜発明賞」は、日本における科学技術の振興、産業経済の発展に大きく貢献している発明等が対象であり、皇室からの御下賜金を拝受して行う全国発明表彰の象徴的な賞として、最も優秀と認められる発明などの完成者に贈呈されます。
■受賞概要
【受賞者】※1
恩賜発明賞
キリンホールディングス株式会社 執行役員 ヘルスサイエンス事業本部
ヘルスサイエンス研究所 所長 藤原 大介
ヘルスサイエンス事業本部 ヘルスサイエンス研究所 城内 健太
R&D本部 飲料未来研究所 主務 杉村 哲
発明実施功績賞※2
キリンホールディングス株式会社 代表取締役社長 磯崎功典
小岩井乳業株式会社 代表取締役社長 丹羽大二
※1 本表彰の受賞時点の所属
※2 受賞発明の開発・実施に尽力された功績に対して、当該発明の権利者の代表者に贈られる賞
【受賞発明】
乳酸菌を含む免疫賦活用食品組成物の発明(特許第6598824号)
【受賞内容】
ヒトとモノの移動が活発な現代では、世界各地で発生する多種多様な細菌やウイルス等の病原体が瞬く間に拡散します。細菌に対しては、感染予防や治療の手段として抗生物質が有効であり、広い対象に効果が認められています。その一方、ウイルスに対するワクチンや抗ウイルス剤は、特定のウイルスに有効なものしか無く、幅広く効果が期待できる手段が乏しい状況でした。
そこで当社は、免疫細胞の司令塔であり、重要な機能を有するプラズマサイトイド樹状細胞(以下pDC)に着目しました。pDCは、ウイルスや病原性細菌を確認すると活性化し、体内でインターフェロン-αという物質を生み出します。これが複数の免疫細胞を活性化することで体内の免疫機能を広く活性化することができるため、安全性の高い乳酸菌でpDCを自由に活性化できれば、ウイルスの種類によらず、体内でウイルスに対する抵抗力を高めることができると考えました。
本研究に取り組んでいた当時、乳酸菌でpDCは活性化できないという論文も報告されていましたが、病原性細菌に近い構造であれば、安全性の高い乳酸菌の中にpDCを活性化できるものがあると仮説を立て、研究を続けました。その結果、2010年に国内外から取得した多数の候補乳酸菌の中で、Lactococcus lactis subsp.lactis JCM 5805(プラズマ乳酸菌)などに、免疫の司令塔であるpDCを直接活性化する効果を世界で初めて※3発見しました。一般的な乳酸菌は、免疫細胞の一部のみ活性化しますが、プラズマ乳酸菌は免疫細胞全体を活性化させることが特長です。当社は、プラズマ乳酸菌を用いたヒト臨床試験も行い、風邪症状の発生抑制効果なども確認し、2011年12月に特許を出願、2012年に論文を発表しました。
以降、多くの医学研究機関との共同研究等の取り組みを行い、ヒト臨床試験15報を含む31報に及ぶ学術論文が国内外で発表され、健康な人の免疫の維持に役立つ科学的根拠が蓄積された結果、2020年8月7日(金)に、プラズマ乳酸菌を配合したキリングループの商品が、日本初※4の「免疫」に関する機能性表示食品として届出受理されました。
プラズマ乳酸菌は、1,000億個を2週間以上摂取することで、免疫の司令塔であるpDCを活性化できる科学的エビデンスがあります。また生菌の状態ではなくても効果が発揮されるため、加熱処理などを行う食品でも採用が可能です。当社は、お客様が自身のライフスタイルに合った商品で免疫ケアを手軽に行えるよう、自社グループでの商品開発に加えてパートナー企業とも協働し、合計47商品※5の機能性表示食品を展開しています。さらに海外への素材販売も加速させ、全世界の皆様に気軽に免疫ケアを行える環境を整備しています。
当社は、医療機関や鉄道インフラなどへのプラズマ乳酸菌商品提供を通じた支援、児童への科学教育なども行ってきました。
※3 ヒトでpDCに働きかけることが世界で初めて論文報告された乳酸菌(PubMed及び医学中央雑誌WEBの掲載情報に基づく)
※4 免疫機能の機能性表示食品として届出公表された日本初のブランド
※5 2023年5月30日(火)時点で発売している商品数
【食品関連 恩賜発明賞 受賞名称・発明者】
大正15年度 | 米糠中ノ一成分アベリ酸の製造法 | 鈴木梅太郎 |
大正15年度 | グルタミン酸塩ヲ主成分トセル調味料製造法 | 池田菊苗 |
昭和26年度 | 醬油製造法 | 梅田勇雄、館野正淳、直井利雄、内田秀雄[キッコーマン(株)] |
昭和39年度 | 微生物による5'-ヌクレオチド類製造法 | 坂口謹一郎、小林泰夫[東京大学]、国中明、吉備政次郎[ヤマサ醤油(株)]、大塚慎一郎[味の素(株)] |
令和5年度 | 乳酸菌を含む免疫賦活用食品組成物の発明 | 藤原大介、城内健太、杉村哲[キリンホールディングス(株)] |
http://www.koueki.jiii.or.jp/hyosho/zenkoku/zenkoku_jusho_pastichiran.html
当社は、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV※6先進企業となる」ことを目指しています。その実現に向けて、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス事業」の育成を進めています。同事業の一つとして、キリングループの35年の免疫研究から生まれた「プラズマ乳酸菌」を使用した商品をグループ、そしてパートナー企業と連携して展開し、健康維持に貢献してきました。
※6 Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。
キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。
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