スーダン:戦傷患者の6人に1人は15歳未満の子ども──首都ハルツームの病院
国軍と準軍事組織の戦闘が1年半以上にわたり続いているスーダン。国境なき医師団(MSF)が、首都ハルツーム南部のバシャール教育病院で今年1月以降に治療した戦傷者のおよそ6人に1人が、15歳未満の子どもであったことが明らかになった。多くの子どもが銃撃や爆風、爆弾の破片で負傷しているほか、重度栄養失調の子どもが急増している。
MSFは紛争当事者に対し、民間人の保護と、国内における医療物資搬送を妨げないよう訴えている。
昼寝中に銃弾を受けた幼児も
バシャール教育病院はハルツーム南部で機能している数少ない病院の一つとして、救急、外科、産科医療を提供している。MSFは1月以来、病院のスタッフとともに、銃や爆弾などで外傷を負った患者4214人超を治療してきた。このうち、16%が15歳未満の子どもだった。
MSFの医療チームリーダーであるモアイン医師(※)は、患者の様子をこう報告する。
「1歳半のリアドちゃんは、自宅で昼寝をしていた時に流れ弾が右脇腹に当たりました。救急処置室へ搬送され、医療チームは4時間かけてリアドちゃんの容体の安定をはかりました。出血量が多く、手術で助かる可能性は五分五分だったのです」
チームはリアドちゃんの止血に成功した。しかし、銃弾は胸に残ったままで、今後どのような処置ができるかは不明だ。
2023年10月以降、手術に必要な医療物資の搬送が紛争当事者によって遮断されていることもあり、同病院では高度な手術を行うことができない。
患者の搬送も、道路の破壊や極度の危険のため、困難を極めている。リアドちゃんのように銃創や爆風傷の治療を受けた子どもは、今年だけで314人に上る。
病院の対応能力をはるかに超える医療ニーズ
現在、医療物資や医薬品の搬入が遮断されているため、重度のやけどの治療などの処置を行うことができていない。また、やけどに対応する医療施設で完全に機能するものは市内に残っていない。多くの市民が爆弾の被害を受け犠牲者が増えている中、憂慮すべき事態だ。
10月下旬、バシャール教育病院から1キロほどの市場で爆発があり、1日で30人超の負傷者が救急搬送された。そのうち12人は15歳未満で、やけどや外傷を負った子どもが多かった。
1歳8カ月の女の子は、爆発の破片で頭部を負傷して運ばれてきた。医療チームは慎重に女の子をレントゲン台に寝かせたが、小さな頭のもろい頭蓋のかけらが台の上に落ちた。モアイン医師は「このような症例が多いのです。あの女の子が助かったのは幸いです。助からない子どもたちもいました」と語る。
このような“マス・カジュアルティー”──短時間に大勢の患者が病院に搬送される事態──は、戦闘が激化するにつれて頻度を上げているとモアイン医師は話す。機能し続けている数少ない病院の状況はひっ迫し、医療ニーズは病院が対応できるレベルを超えている。
栄養失調児も増加
外傷患者のみならず、急性栄養失調の子どもや妊婦の数も増え始めている。適切な治療を受けなければ、生命を脅かす恐れがある状態だ。2024年10月19日から11月8日の間に栄養失調のスクリーニング検査を受けた4186人の女性と子どものうち、1500人超が重度の急性栄養失調、400人が中等度の栄養失調に陥っていた。
MSFの緊急対応コーディネーター、クレア・サン・フィリポは「暴力と栄養失調に関するこれらの数字は、子どもを含むハルツームの人びとが経験している悪夢そのものです。紛争当事者は民間人を保護する責任があります。そして、スーダンの全ての病院に医療物資が届けられなくてはなりません」と訴える。
※安全確保のため、仮名を使用しています。
2023年4月の戦闘開始以来、スーダン全土で50万人超がMSFの支援する医療施設や移動診療で医療を受けた。MSFは、激しい衝突が続くハルツームを含む紛争地で、12カ所超の医療施設を支援。18州のうち11州で活動し、2024年1月から9月までの間に計6557人の治療にあたった。
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