【鉄道事業を主軸としたビジネスモデルからの転換を目指す、JR東日本】発行1億枚のSuicaのビッグデータから描くその未来図とは? 『JR東日本 脱・鉄道の成長戦略』、2024年8月27日発売。

岐路に立たされるJR東日本。コロナ禍前の利益を見込めない鉄道事業から、銀行や不動産など関連事業への軸足の移動を急いでいる。「鉄道への集中」からの脱却は、私たちの生活をどう変えるのか。変革の深層に迫る!

河出書房新社

株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、『JR東日本 脱・鉄道の成長戦略』を2024年8月27日に発売します。

2024年春、JR東日本は銀行「JRE BANK」をスタート。そして、Suica経済圏を拡大しようとしています。発行1億枚のSuicaのビッグデータから描く街づくり、流通、サービス……。JR東日本が描く未来戦略を明らかにします。

■鉄道会社という枠から出た「一大イノベーション」が始まった!
数ある鉄道会社のなかでも、リーディングカンパニーとしてそびえ立つJR東日本。新型コロナ禍による業績悪化に苦しんだものの、2023年3月期決算で3期ぶりに黒字に転じました。しかし、鉄道事業の利益はコロナ禍前には戻らない見通しです。

 本業の鉄道事業は頭打ちながら、流通・サービス事業や不動産・ホテル事業、Suica事業などの関連事業は好調が続いています。そして2024年春には、銀行事業にも参入しました。JR東日本が開発した交通系ICカードSuicaの発行枚数はじつに1億枚。日本の人口に匹敵する顧客基盤を持ち、さらに多くの駅にATMを有する鉄道会社の参入は、既存の銀行やクレジットカード業界に大きな影響を与えることは間違いありません。

本書は、そのようなJR東日本の未来戦略を読み解いていきます。

「手厚すぎるほどの特典を用意して銀行サービスに参入した理由は?」

「エキナカからマチナカへ…不動産業の方針転換の狙いは?」

「コストダウンだけではない『QRコード乗車券』導入のメリットは?」

「Suicaが生み出すビッグデータは今後、どのように活用される?」

「新幹線による荷物輸送『はこビュン』が秘める可能性とは」……など

鉄道にとどまらず、社会の未来を切り開く試みを進める巨大企業の全貌に迫ります。

■JR東日本が直面している危機 ──序章より抜粋

日本最大の鉄道事業者、JR東日本が大きな岐路に立たされている。

新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で、2020年度の連結営業収益はコロナ禍以前の半分程度に落ち込み発足以来初の赤字に転落し、5779億円もの巨額の純損失を計上した。社会経済活動の復帰とともに業績は徐々に上向き、2023年度の営業収益は対2018年度9割の水準まで回復したが、営業利益は7割程度にとどまっている。

これまでのJR東日本のビジネスモデルは鉄道事業を主軸として、鉄道利用のために駅に集まる人々に向けたエキナカや駅ビル、ホテルなどの生活サービス事業を展開し、グループとして収益をあげるものだった。

ところが人口減少や消費行動、勤労形態の変化で、このビジネスモデルは成り立たなくなりつつある。そこで鉄道事業が主、生活サービス事業が従ではなく、鉄道事業と生活サービス事業が2軸となり、ヒト・モノ・情報の交流を通じて「体験価値(ライフ・バリュー)」を提供する企業であると再定義したのである。

じつは、この大転換はコロナ禍を受けて突然行なわれたものではない。現在のグループ経営構想はコロナ前に策定されたものであるし、民営化以来、常にJR東日本を悩ませてきた問題意識でもあった。2025年に発足38周年を迎えるJR東日本は、1949年から1987年まで38年間続いた国鉄の歴史に並ぼうとしている。国鉄が栄枯盛衰だったように、JR東日本の歴史も決して順風満帆ではなかった。

現在進んでいるグループ経営構想「変革2027」を中心とした取り組みが、どのような歴史的背景で、どのような危機感と問題意識で生まれたものか。本書はJR東日本の過去と今を通じて、未来像を明らかにしていきたい。

■本文より

■目次より

[序章] JR東日本が直面している危機

[1章] 鉄道受難の時代を生き延びる「次の一手」

・鉄道会社の銀行サービス「JRE BANK」の価値とは

・高輪ゲートウェイシティ開発に見る「新たなまちづくり」の実際

・JR東日本が「東北新幹線時速360㎞化」にこだわる事情

・JR東日本の参入で「羽田空港アクセス」はどう変化する?

・「運転士が消える日」は訪れる? 自動運転開発の現在地

[2章] 数字と歴史で読み解く鉄道事業

・「もう後はない」… 国鉄分割民営化に向き合ったJR東日本

・業界内でも桁違い! JR東日本の鉄道ネットワーク

・バブル期の遠距離通勤が、発足直後のJR東日本を鍛えた

・車両開発の革新と車両製造参入でコスト削減を達成

・五方面に延びる新幹線ネットワークと在来線直通運転の拡大

[3章] 数字と歴史で読み解く関連事業

・鉄道主体の経営から「生活ソリューション事業」との二本柱へ

・関連事業の本格展開とバブル崩壊

・コンビニ、駅ビル、ホテル… 事業再編で成長が加速

・独自の「カード事業戦略」が目指したものとは

・エキナカ開発で「通過する駅」から「集う駅」へ

・駅を交通の拠点から「暮らしのプラットフォーム」へ

[4章] Suicaの進化がもたらす新たな生活スタイル

・鉄道利用を変えたSuicaが変様期を迎えている

・チケットレス化・モバイル化の促進と課題

・各サービスをつなぐグループ共通ポイント「JRE POINT」

・「オフピーク定期券の導入」に見るJR東日本の狙いとは

・電子マネーとしてのSuicaに立ちはだかる壁とは

[5章] 「都市を快適」に、「地方を豊か」に

・JR東日本が目指す「シームレスなサービス」とは

・回転型ビジネスモデルで加速するまちづくり

・都市の成長と地域経済の活性の両立は可能か?

・赤字ローカル線の存廃問題にどう向き合うか?

[6章] JR東日本が挑む未来戦略

・「究極の安全」に向けた終わりなき取り組み

・ゼロカーボン達成に向けたエネルギー戦略

・人口減少社会のなか、「持続可能な鉄道運営」へ
・イノベーションがもたらすJR東日本の「意識改革」

■著者紹介

枝久保達也(えだくぼ・たつや)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。現在は鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行なうかたわら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』で第47回交通図書賞歴史部門受賞。

■書誌情報

書名:JR東日本 脱・鉄道の成長戦略

著者:枝久保達也

仕様:新書判/並製/224ページ

発売⽇:2024年8月27日

税込定価:979円(本体890円)

ISBN:978-4-309-50454-4

装丁:こやまたかこ

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309504544/

出版社:河出書房新社

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業種
情報通信
本社所在地
東京都新宿区東五軒町2-13
電話番号
03-3404-1201
代表者名
小野寺優
上場
未上場
資本金
3000万円
設立
1957年05月