イエメン:子どもの栄養失調が極めて深刻なレベルに──援助の拡大が急務

国境なき医師団

イエメンの病院で栄養失調の治療を受けている子ども=2025年2月25日 © Konstantinos Psykakos/MSF

中東イエメンで子どもの栄養失調が極めて深刻なレベルに達している。治療を必要とする小児患者の数は既存の医療体制の限界をはるかに超えており、現地で活動する国境なき医師団(MSF)は、関係機関による援助の拡大が急務だと訴える。

 「助けを待つ時間はない」

2022年1月から2024年12月までに、アムラン、サアダ、ハッジャ、タイズ、ホデイダの国内5県でMSFが支援する施設において、栄養失調の治療を受けた5歳未満児は3万5442人に上った。

 

紛争と情勢不安、経済危機が長引く中で、人びとが食料を買い、医療を受けることは依然として困難で、それが子どもの栄養失調につながっている。

 

「中途半端な対策をしている場合ではありません」とMSF中東オペレーション・マネジャーのヒメダン・ムハンマドは訴える。

 

「運ばれて来る子どもの重症度は急激に上がっています。もう助けを待つ時間はありません。今すぐ栄養治療を拡大し、医療施設までの安価な交通手段を確保し、必要な治療を提供しなければ、今後数カ月で栄養失調がさらに急増する恐れがあります」

あふれる患者 廊下で治療を行うことも

MSFは治療体制を拡充してきたが、すべてのニーズには対応しきれていない。毎年栄養失調の季節が来るたびに、医療施設は栄養失調やはしか、コレラ、急性水様性下痢などの治療が必要な子どもであふれる。

 

栄養失調のピークだった昨年9月、MSFが支援するアムラン県のアル・サラム病院では、ベッド稼働率が254%まで急激に上がった。他のほとんどの施設でも極めて高い水準となり、極度の定員超過となった。そのため、混雑した廊下やその場しのぎの場所で患者の治療を行わざるを得なかった。

 

アル・サラム病院に生後5カ月の娘ザラーちゃんを連れてきた母親のアイシャさんは、「2時間余りかけて、1万5000イエメン・リヤル払ってここに来ました。最寄りの診療所では栄養失調の専門の治療は受けられないのです。12人家族で稼ぎ手は1人しかいないので、生きるだけでやっとです」と話す。

 

「家族で唯一の女の子を失ってしまうのではと怖いです。ザラーが早く元気になってほしい。そして、もっと多くの団体がここに来て、食べ物や収入が足りない人たちを助けてほしいです」

栄養失調児のケアにあたるMSFの看護師=2025年2月25日 © Majdi Al Adani/MSF

今すぐ援助の拡大を

食料支援が停止または削減され、イエメン全土で人びとが直面する苦難はさらに大きくなっている。2023年と2024年には、ホデイダ県アッダヒ病院のMSF支援施設で、1万人超の子どもが治療を受けた。ハッジャ県のアブス病院は、2024年9月に病床数に対して200%、10月には176%の患者を受け入れた。これは過去6年間で最高レベルに当たる。

 

栄養失調は、乏しい医療体制や低い予防接種率などによって悪化する。世界保健機関(WHO)によると、2024年4月の時点で、イエメンの医療施設のほぼ46%が一部しか機能していないか、完全に診療を停止している。

 

イエメンへの人道支援が突然大幅に削減された中で、深刻化を続けるイエメンの人道危機に対処するためには、主要な援助国や資金拠出機関による持続的な関与と柔軟な資金提供が不可欠だ。

 

イエメンの保健省、資金を拠出する他国政府や機関、支援を行う援助組織間のパートナーシップ強化に加え、十分かつ安定した資金があれば、医療施設を再開させ、最も健康被害の多い場所で医療を提供することができる。はしか、コレラ、急性水様性下痢などの予防可能な病気を抑制するため、MSFは関係者に対し、地域社会に根ざしたワクチン接種の取り組みを拡大するよう強く要請する。

 

また、妊娠中・授乳中の女性や5歳未満の子どもが健康を脅かされる前に必要な栄養を摂取できるよう、食料配給の改善も急務だ。

 

ひっ迫した医療体制と上がり続ける栄養失調率のもとで、弱い立場に置かれた人たちがこれ以上苦しむことにならないよう、今すぐ行動を起こさなければならない。

治療を受けて栄養失調から回復しつつある生後3カ月の子ども=2025年2月25日 © Majdi Al Adani/MSF

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会社概要

国境なき医師団(MSF)日本

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URL
https://www.msf.or.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月