触れる前から始まる「質感」を処方起点で設計する ~人が感じる質感から処方へ~ 視覚的な質感認知からの新たな製剤設計アプローチ

クラシエ㈱(ホームプロダクツカンパニー)

 クラシエ株式会社(ホームプロダクツカンパニー)は、スキンケア化粧品に触れる前に人が外観から感じ取る「質感」に着目し、その印象を起点に、光の特性、製剤の内部構造、処方へと逆方向にたどる新たな製剤設計アプローチの可能性を見出しました。人が捉える製剤の見た目や、そこから受ける印象を、測定できる光学特性や内部構造と結びつけることで、目指す質感をより意図的に設計する技術への発展を目指します。

 この研究成果を、2026年9月28日~10月1日にオーストラリアのパースで開催された「第36回 国際化粧品技術者会連盟(The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists:IFSCC)世界大会」において、ポスター発表しました。

【発表演題】

「From Sensory Perception to Formulation Engineering:
A New Approach to Intentional Texture Design in Cream Preparations」

1.研究背景

 私たちは化粧品を手に取るとき、実際に触れる前から、見た目を手がかりに使い心地を想像しています。つやのある外観には「なめらかそう」「伸びがよさそう」、白くマットな外観には「濃厚そう」「しっかりしていそう」といった印象を抱きます。つまり、製剤の外観は、使用前から質感や製品への期待を伝える情報でもあります(図1)。

(図1) 人間の質感認知プロセスのイメージ

 一方、化粧品開発では、処方から生まれる外観や使用感を評価することが一般的です。処方の違いが内部構造や光の反射・散乱をどう変え、それが人の質感認知とどう結びつくかという関係は、十分に体系化されていません。

 そこで本研究では、処方、内部構造、光学特性、外観から感じる質感のつながりを検討しました。これらの関係を理解することで、従来とは逆に「どのような質感に感じてほしいか」から必要な光学特性や構造を考え、処方設計へつなぐことができるのではないかと考えました。

2.質感を設計するために、製剤の外観と構造の関係を調べる

 検証には、基本処方と油の量(30%)を同一にし、主な油剤の種類を変えた水中油型(O/W)クリーム製剤(水の中に微細な油滴が分散したクリーム)を用いました。その結果、白くマットな外観から、つやのある半透明な外観まで、見た目の質感に大きな違いが生じました(図2)。画像解析や光沢測定では光の反射や明るさの分布に違いが認められ、顕微鏡観察と粒子径測定でも内部構造の違いが確認されました。油剤の選択が製剤の構造と光学特性に関わり、視覚的な質感の違いにつながる可能性が示されました。

(図2) 種類の違う油剤により異なる外観や質感をもつ製剤(クリーム)

3.「見た目」だけで、どんな質感を想像するのか

 25名の評価者に製剤を同一条件で提示し、触れずに外観だけから受ける24項目の印象を評価してもらいました。その結果、光沢などの光学的な特徴は、「やわらかそう」「なめらかそう」「伸びやすそう」「うるおい感がありそう」「高級感がある」といった印象と関連しました。一方、白くマットで不透明な外観は「硬そう」「重そう」「粉っぽそう」「濃厚そう」という印象と関連し、青みを帯びた半透明の外観は「フレッシュ」「ひんやりしそう」という印象とも関連しました。

(図3) 見た目から受ける印象と、光学特性との関係

 図3は、クリームの見た目から受ける印象と、光学測定で得られた数値との関係を示した例です。点が右上がりに並ぶ場合は評価点数が高いほど測定値も大きくなり、右下がりの場合は評価点数が高いほど測定値が小さくなる関係を表しています。例えば、使用感の一つである「塗り広げやすそう」という印象が強いクリームほど、製剤の表面の明るさのばらつきが大きく、官能印象の「みずみずしそう」という印象が強いクリームほど、明度が低い傾向が見られました。また、製品への期待の「効きそう」という印象が強いクリームほど、光沢の広がりを示す測定値が小さくなる傾向が認められました。

 これらは実際の使用感ではなく、触れる前の視覚的な印象についての結果です。

4.まとめ

(1)外観は、触れる前から質感への期待を生む。

25名による視覚評価で、光学的な特徴と「なめらかそう」「伸びやすそう」などの印象との関連が確認されました。

(2)油剤の違いが、「見た目の質感」の違いにつながる。

基本処方や油の量が同じクリームでも、油剤の種類の選択によって製剤構造や光学特性が異なり、光沢、マット感、透明感などの外観に違いが生じました。

(3)製剤の見た目の違いは、測定できる光学特性や内部構造などの物理特性と関係する。

光学測定や顕微鏡観察により、油剤の種類によって光の反射特性や乳化粒子の状態が異なることが確認されました。

 本研究で得られた関係性を手掛かりに、「感じてほしい質感」から処方へと逆にたどる、新しい設計アプローチの可能性を見出しました。今後は、「質感認知 → 光学特性 → 内部構造 → 処方設計」という発想をもとに、目指す質感をより意図的に実現できる製剤設計技術の確立を目指します。

                                      以  上

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会社概要

URL
https://www.kracie.co.jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都港区海岸3-20-20 ヨコソーレインボータワー7F
電話番号
03-5446-3224
代表者名
草柳徹哉
上場
未上場
資本金
50億円
設立
2007年07月