ガザ:「援助に見せかけた虐殺」──イスラエルと米国による食料配給システムの解体と封鎖の解除を

国境なき医師団

配給所で撃たれて負傷し、診療所で治療を受けた32歳の男性。「自分が配給所に行かないと家族を食べさせられない」と話す=2025年6月6日 © Nour Alsaqqa/MSF 

イスラエルと米国がパレスチナ・ガザ地区で食料配給のシステムを始めてから1カ月が経過した。これまでに食料を求める500人以上が殺害され、4000人近くが負傷した。

この配給システムは、食料がなく飢えるか、わずかな食料のために命を危険にさらすかの二者択一を人びとに迫るものだ。人道援助に見せかけた虐殺であり、今すぐ解体しなければならない。国境なき医師団(MSF)は、イスラエル当局とその同盟国に対し、食料、燃料、医療、人道援助物資の封鎖を解除し、国連が調整する従来の人道的なシステムに戻すよう求める。

「ガザ人道財団」の配給所で続く残虐行為

一連の惨事は、「ガザ人道財団(GHF)」の名で活動するイスラエルと米国の代理団体によって引き起こされている。100日以上続くイスラエルの封鎖で飢餓状態に陥っている大勢のパレスチナ人に、4カ所の配給所まで長い距離を歩かせ、わずかな食料を奪い合うことを強いている。女性や子ども、高齢者、障害を持つ人びとに食料が届きづらいばかりか、混乱の中で死傷者を出すに至っている。

しかし国際社会は、新たな残虐行為を非難することもなく、ジェノサイドのパターンと一致する行為を容認し、存続させてしまっている。この事態が続くことは決して許されない。

MSFのガザ緊急対応コーディネーター、アイトール・サバルゴゲアスコアはこう話す。

「4つの配給所は、いずれもイスラエル軍が完全に掌握する地域にあります。人びとを強制的に追い出した場所で、監視所、土手、有刺鉄線に囲まれたサッカー場ほどの広さです。フェンスで囲まれた入り口から出入りできるのは1カ所だけです。GHFの職員がパレットや食料の入った箱を降ろし、柵を開けると、何千人もの人びとが一度に入り込み、米の最後の一粒まで奪い合うのです。

もし住民が早く着いて検問所に近づくと、撃たれます。時間通りに行けば人であふれかえっていて、土手やフェンスを飛び越えても撃たれるのです。その場所は"退避済み区域"であるため、到着が遅れたり、そこにいるべきでなかったりすると、撃たれてしまうのです」

15キロ歩いて配給所まで行ったが、地面にこぼれていたパスタを拾うことしかできなかったと話す女性=2025年6月19日 © MSF 

銃創患者の対応が困難に

MSFのスタッフは毎日、こうした場所へ食料を取りに行こうとして殺傷された人びとを目の当たりにしている。ガザ南部にあるマワシ基礎診療所を訪れていたハニ・アブ・スードさんは話す。

「多くの人が直接撃たれていました。これは援助ではありません。死の罠です。彼らは私たちを一人ずつ殺していこうとしていました。私たちはお腹が空いていて、子どもたちに食べさせようとしていただけなのです。他に何ができますか? レンズ豆1袋で30~40シェケル(約1000~1700円)もするのです。そんなお金はありません。死ぬことは生き残ることよりも安くなってしまったのです」

銃創を負った患者の数は急増している。ガザ中部デールバラハのMSF仮設病院では、6月8日の週、銃創を負った患者の数が前週に比べて190%増加。かろうじて機能しているガザの病院は鎮痛剤、麻酔薬、血液などが最小限しかない状態で運営されており、十分な対応はできない。完全に機能している病院でも、毎日救急室に殺到するこれほど多くの外傷患者に対応するのは困難だ。

負傷した患者は、基礎診療所や仮設病院に助けを求める。外傷治療に対応できる大きな病院は、イスラエルによる医療施設への攻撃で被害を受け、多くが機能しなくなっているからだ。

マワシ地区にあるMSFの診療所は、外傷患者を治療する設備はないが、毎日10人以上の負傷者が配給所から運ばれてきており、6月7日以来で423人を受け入れた。このような負傷には、輸血や手術など、基礎診療所ではできない緊急救命処置が必要だ。患者は、ナセル病院のようなまだ機能している数少ない病院に移送されるが、医療が非常に不足しているため、治療を受ける前に死亡するケースが後を絶たない。

人道原則に基づいた援助を

17歳のアシュラフさんは、家族で暮らすテントで食料が尽きてしまい、6月23日に配給所へ向かった。母親のハナンさんはこう話す。

「危なすぎると私は言いました。でも息子は、妹のために何かもらってきたいと言って配給所に向かいました。30分後、アシュラフは助けを求めて泣きながら電話をかけてきました。撃たれたのです。これは血で染まった『援助』です」。その後アシュラフさんはマワシ基礎診療所で治療を受けた。

そもそも援助は、軍事的な目的を推進するために紛争当事者がコントロールするものではない。イスラエル当局は、ガザの人びとが食料を奪い合うよう意図的に仕向けてきた。食料供給を止め、その後制限し、国際人道法に完全に違反する形で、食料供給を紛争の道具にしてきた。

援助を最も必要としている人びとに、尊厳を奪うことなく援助を届けることが、人道主義の原則だ。この原則を順守し、必要な規模で援助が提供されなければならない。ガザの人びとが生き延びるために、真の援助システムの再確立と持続的な停戦が今すぐ必要だ。

配給所で銃撃を受けたアシュラフさん(17歳)の治療にあたるMSFスタッフ=2025年6月19日 © Nour Alsaqqa/MSF 

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会社概要

国境なき医師団(MSF)日本

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URL
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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月