業歴100年以上の老舗企業は4万3631社 出現率は京都府と山形県で5%超
業種別トップは業態転換を図ってきた「貸事務所」
海外機関の調査によると、世界で創業・設立から100年以上経過した企業の数は2022年時点で約7万5000社とされており、そのなかで日本企業が占める割合は大きく、群を抜いた「老舗大国」といわれる。2023年9月1日で100年の節目となった関東大震災をはじめとした数多くの自然災害や、第二次世界大戦などの戦禍を乗り越え息長く事業を続けていくことは容易ではない。
帝国データバンクが把握している業歴100年を超える老舗企業[1]は、2023年9月時点で4万3631社を数えた。毎年およそ2000社が業歴100周年を迎えるなか、昨年初めて4万社を突破し今後もこれまでと同様の傾向で増加すると見込まれる。また、全体に占める老舗企業の割合を指す「老舗出現率」は2.65%となった。
都道府県別、老舗出現率は京都府が5.26%でトップ 山形県も初めて5%超に
老舗出現率を都道府県別で見ると、京都府(5.26%)がトップとなった。古くから都があり、中心地として栄えたことや、第二次世界大戦中の被害が比較的小さかったことなどが要因としてあげられる。次いで、山形県が5.18%で続き、京都府とともに5%(前年4.98%)を上回った。以下、新潟県(4.94%)や福井県(4.64%)、滋賀県(4.46%)と続き、日本海側の地域で老舗出現率が高い傾向が見られる。これらの地域では、江戸時代中期から明治時代にかけて海運の要として北海道から大阪を結んでいた「北前船」の寄港地が多いことから、古くから商業の拠点となっていた歴史的背景によるものと考えられる。
一方で、沖縄県は0.16%と全国で最も低かった。沖縄県は琉球王国としての歴史や、第二次世界大戦の戦闘が最も激しかった地域の一つであり、壊滅的な人的・物的損害を受けたことなどで連続性が途絶えたりしたことよる影響が、こうした結果につながっていると考えられる。
業種別トップの「貸事務所」、不動産業ではない全く別事業を有するケースが5割以上に
老舗企業を業種別(細分類)でみると、「貸事務所」が1401社で最多となった。15年前から、およそ1000社近く増加している。次いで、規制の影響で新規参入が難しく約8割を老舗企業が占めている「清酒製造」が936社で続いた。また、日本特有の温泉旅館が多く含まれている「旅館」は783社だった。
その他、世界最古とも言われる金剛組(大阪市天王寺区)に代表される「一般土木建築工事」「木造建築工事」といった建設業も多く含まれ、それらに付随した業種にあたる「木材・竹材卸」も上位となった。加えて「呉服・服地小売」「婦人・子供服小売」のような服飾業など、類似した業種が並んだ。
業種別トップとなった「貸事務所」では、創業当時からその事業を行っている場合も中にはあるものの、地域の一等地における小売業やサービス業の展開や、長年保有している広大な土地やテナントを生かして不動産関連事業などに転用することで、時代の流れに応じて業種を変遷してきたケースが多く見られる。
実際に主業が「貸事務所」の1401社のうち従業がある619社について、従業が不動産業ではない業種は334社、不動産業は285社に分かれた。さらに、従業も不動産業である285社のうち90社が、20年前の主業は不動産業とは異なる業種だった。従業がない企業782社については、20年前の主業が不動産業とは異なる業種の企業は372社となった。
以上を踏まえると、老舗企業で現在は「貸事務所」が主業の1401社において、少なくとも796社は不動産業とは異なる事業を手掛けていたことになり、全体の半数以上を占めた。過去に別事業をメインとしていたが時代の流れや産業の変化によって、業態転換したことで今は貸事務所業がメインとなったケースもある。
老舗の安定感に変化の兆し、倒産件数は増加傾向
創業・設立から100年を上回る老舗企業の数は、2023年9月時点で4万3631社となった。毎年約2000社前後が老舗企業の仲間入りを果たしており、今後も同様の傾向で推移するものと見込まれる。数々の戦禍や災害などから老舗の「のれん」を守り抜くことは決して容易ではなく、事業継続の要諦が凝縮されている教科書的存在として取り上げられる事例も多々見られる。老舗企業の約半数は売上高1億円未満の小規模事業者であるなかで、たとえ小さくとも息を絶やすことなく長い業歴に達したケースも多い。
一方で、老舗企業の倒産件数は9月時点で3年ぶりに増加に転じ、既に昨年の累計件数(65件)に迫る水準となっている。後継者難やコロナ禍での業績悪化による資金繰りのひっ迫、コンプライアンス違反などによって対外的な信用を失い倒産に追い込まれるケースも散見されており、老舗の看板を有していても事業を畳む展開が生じている。老舗企業には脈々と培われてきたブランド力があるなかでも、時代の変化への対応や有能な後継者の育成も事業継続の必須要素といえるだろう。
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