正社員の人手不足は52.1% 「2024年問題」の建設/物流業では既に約7割に
インバウンドが好調な「旅館・ホテル」も深刻な人手不足
調査期間は2023年10月18日~10月31日。調査対象は全国2万7,052社、有効回答企業数は1万1,506社(回答率42.5%)。なお、雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2023年10月の結果をもとに取りまとめた。
<調査結果(要旨)>
正社員の人手不足企業の割合は52.1%となった。業種別ではインバウンド需要が好調な「旅館・ホテル」(75.6%)がトップとなり、エンジニア人材の不足が目立つ「情報サービス」も72.9%で続いた。また、2024年問題が懸念されている建設/物流業でも、それぞれ7割近くに達した
非正社員では30.9%が人手不足を感じており、業種別では「飲食店」が82.0%で最も高かった。また、正社員ではトップだった「旅館・ホテル」(73.5%)は、非正社員では2番目の高水準となった
1. 人手不足割合は正社員で52.1% 非正社員も30.9%と高止まりが続く
2023年10月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業は52.1%だった。前年同月比で1.0ポイント上昇しており、10月としてはこれまで最も高かった2018年(52.5%)に次ぐ高水準を記録した。また、非正社員では30.9%となり、10月としては前年に続いて3割を上回った。
2. 正社員・業種別:旅館・ホテルが75.6%でトップ ITエンジニア不足の情報サービスも72.9%で続く
正社員の人手不足割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」が75.6%で最も高かった。当業種の企業からは、「円安の影響で訪日客数が回復している」(東京都)や「新型コロナが5類になり、人の動きが活発でリベンジ消費がみられる」(島根県)、「秋の紅葉シーズンに入り、集客が多い」(岩手県)などの声があり、インバウンドなど観光需要が活況だったことによって人手不足も顕著に表れたとみられる。
2番目に高かったのは、ITエンジニアの不足が目立つ「情報サービス」(72.9%)だった。企業からは「人員確保が難しい状況が何年も継続している」(ソフト受託開発、京都府)のような、慢性的に人手不足が続いているといった声が聞かれた。その他、「建設」(69.5%)や「メンテナンス・警備・検査」(68.4%)など、8業種が6割台で続いた。
3. 2024年問題が迫る建設業と物流業 既に約7割が人手不足、うち約8割は従業員数が増加せず
働き方改革関連法案によって、建設業と物流業にも時間外労働の上限規制が適用されることで労働力不足の深刻化が懸念されている。いわゆる「2024年問題」である。それぞれの業種について人手不足の現状を見ると、正社員において建設業では69.5%、物流業(道路貨物運送業)では68.4%の企業が人手不足を感じていた。2024年問題を目前に、これから一層の人手不足が予想されるなかで、既に7割の企業が人手不足に陥っている結果となった。建設業では資材価格、物流業ではエネルギー価格の上昇などによって収益が圧迫されているなかで、人件費に充てる分を捻出できないという声があがっており、人手不足の加速に拍車をかけている。
人手不足の解消には従業員数の増加が重要な一手となえるが、人手不足を感じている企業のなかで、前年同月と比較して従業員数(正社員)が「増加した」と回答した割合は、建設業では21.0%、物流業では20.9%にとどまった。従業員数が「変わらない」および「減少した」割合は両業種とも約8割にのぼり、働き手が限られるなかで今後も従業員数の増加させることは容易ではなく、両業種の人手不足は長期化することが予想される。
4. 非正社員・業種別:飲食店と旅館・ホテルの人手不足割合が顕著に
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が82.0%で唯一8割を上回った。次いで、正社員では業種別でトップだった「旅館・ホテル」は73.5%と、非正社員でも2番目の高水準だった。また、「人材派遣・紹介」(64.2%)では人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が表面化している。ほか、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んだ。
まとめ:深刻な人手不足、従業員の増加に頼らない解消法の実践がカギ
本格的なアフターコロナとなった2023年は、人手不足割合の高止まりが続いている。既に不足感は新型コロナ前の水準まで上昇しており、2024年問題に直面する建設業や物流業、アフターコロナで需要が回復している旅館・ホテルや飲食店では、特に人手不足感が際立っている。
人手不足の解消には大きく分けて、マンパワーの増加と生産性向上のいずれかが求められる。労働人口の減少や時間外労働の上限規制などが重なり、従業員数の増加が見込みにくいなかで、生産性向上は避けては通れないテーマとなろう。業務フローの見直しやデジタル化による生産効率性やリスキリングを活用した労働生産性の向上など、手段は多岐にわたる。今後は人手不足の長期化が予想されるなか、解消に向けた早期着手・先行投資はさらに急務といえるだろう。
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