スーダン:歴史的規模の国際援助削減で医療施設の閉鎖が相次ぐ──命を守る医療への資金を

国境なき医師団

中央ダルフール州の病院の小児集中治療室に入院する赤ちゃんとその母親。同州では5月だけで45の医療施設への支援が打ち切られた=2026年7月21日 © Tadeu Andre/MSF

3年以上続く内戦で、壊滅的な人道危機が続くスーダン。各国政府による歴史的規模の国際援助資金削減の影響が表れ始め、スーダン各地で医療施設の閉鎖が相次いでいる。

 

国境なき医師団(MSF)は、以前から慢性的な資金不足に直面してきたスーダンへの援助縮小によって、命を救う医療が断たれ、わずかに残る病院が限界に追い込まれていると訴える。

 

国連総会に世界の首脳が集う今、各国政府や資金拠出機関は、スーダンの人びとに必要不可欠な保健医療への資金を確保するとともに、閉鎖の危機に瀕している医療施設が移行期に対応するための柔軟な資金を提供しなければならない。

医療施設の閉鎖で患者が集中 残された病院が限界に

複数の援助団体の撤退が進み、地域の診療所は運営に必要な資金や医薬品の不足に直面している。患者は別の施設で治療を受けるために、長距離の危険な移動を余儀なくされている。

 

その結果、稼働を続ける数少ない病院に患者が集中。MSFが支援している中央ダルフール州ザリンゲイとロケロの医療施設では、2026年1月から4月の間に、入院患者数が前年同期比で22.5%増加した。状況は悪化を続けており、同州では援助団体の資金不足により2026年5月だけで45の医療施設への支援が打ち切られた。

 

「スーダンで人道ニーズを生み出しているのは紛争です。しかし資金削減によって人道ニーズへの対応能力が削られています」と、MSFスーダン活動責任者のムハンマド・イブラヒムは述べる。

 

「MSFの活動は民間からの寄付によって支えられていますが、他団体の医療サービスへの資金が失われれば、診療所は閉鎖され、患者が医療を受けられる場所が減ります。その結果、稼働を続けるMSFの医療施設などの受け入れが限界に達してしまうのです。

 

援助国は人びとに不可欠な保健医療サービスを守り、資金が必要な組織に対し継続的で柔軟な資金提供を行う必要があります」

中央ダルフール州ザリンゲイの病院の入院栄養治療センターで子どもを診る小児科医=2026年7月26日 © Tadeu Andre/MSF

援助団体が撤退 難民キャンプで失われる医療

スーダン東部・ゲダレフ州のタネバキャンプには、1万8400人の難民が暮らしている。今年6月、人道援助団体が突然撤退したことで、産科病棟と外科病棟が閉鎖された。そのため、帝王切開が必要な妊婦は最寄りの都市まで3時間かけて移動することを余儀なくされている。MSFは2026年末まで救急外来の運営を引き継いでいる。

 

2021年には同州のウム・ラクバ・キャンプとその周辺では約35の援助団体が活動していたが、現在残っているのは10団体に満たない。このキャンプには現在約1万7000人の難民が暮らしており、その大半は女性と子どもだ。

 

「ウム・ラクバ・キャンプのMSF病院は、今や難民と地域住民の双方にとって唯一の命綱となっています」とMSF人道問題マネジャーのファブリツィオ・ロクラトロは話す。

 

「しかし削減の影響は医療にとどまりません。食料配給は減少し、保護プログラムも縮小されています。最後のセーフティネットがなくなり、難民の人びとは頼るものがない状況に置かれています」

暴力が激化した北ダルフール州エル・ファシールから中央ダルフール州ザリンゲイに逃れてきた女性。家族とは1年以上連絡が取れていない=2026年7月25日 © Tadeu Andre/MSF

援助資金は世界全体で約36%減少

トランプ政権が2025年に米国際開発局(USAID)の閉鎖を発表した後、スーダンで活動する多くの団体への資金提供は今年6月に終了した。米国政府は依然として国連人道問題調整事務所(OCHA)などへの資金提供を通じてスーダン最大の支援国であるが、これまで医療を提供してきた組織は代わりの資金を確保できず、各地で医療施設の閉鎖につながっている。

 

米国の資金削減が進む中、多くの欧州諸国もスーダンの人びとへの支援を削減した。欧州や多国間機関の援助予算は世界的に縮小している。経済協力開発機構(OECD)の暫定データによると、EU機関からの援助は2025年に13.8%減少し、主要な欧州援助国の多くも援助資金全体を削減した。

 

世界全体では人道援助資金が35.8%減少した。これらの数字がそのままスーダン向け支援の削減を意味するわけではなく、欧州の一部の援助国は支援を維持、増額している。しかし、国際的な援助資金を取り巻く環境は急速に縮小している。スーダンではこうした状況が、すでに深刻な保健医療の危機をさらに悪化させている。

援助削減により稼働できなくなった、ハミディア避難民キャンプの診療所。待合室には誰もいない=2026年7月22日 © Tadeu Andre/MSF

医療か食料か──選択を迫られる人びと

MSFダルフール緊急対応コーディネーターのセバスチャン・トラフィカンテはこう話す。

 

「診療所を閉鎖しても、患者がいなくなるわけではありません。患者は別の診療所へ向かうのです。患者はより遠くの医療施設へ高い費用をかけて移動し、到着した時には病状が悪化していることも多いのです。到着先の病院がすでに定員に達している可能性もあります。MSFは一部のサービスをカバーしていますが、すべての閉鎖を補うことはできません」

 

中央ダルフール州のハミディヤ避難民キャンプでは、かつて産科、小児科、心のケアを提供していた医療施設が、国際援助団体の支援終了により大幅に機能を縮小している。1日の受診者数は200人から40人程度にまで減少し、予防接種も停止した。これは人びとが健康になったからではない。治療を受けられなくなった医療施設へ行くことをやめたからだ。

 

国連によると、ダルフールの労働者の日給はおよそ1米ドル。機能している診療所まで行くための交通費に2米ドルかかると、およそ2日分の賃金に相当する。人びとは、医療を受けるか食料を買うかの選択を迫られている。「病院へ行く交通費があれば、食料を買うことができる。食べ物がなければ健康もあり得ない」と、ある住民はMSFに語った。

ザリンゲイの栄養治療センターに入院している子どもたち=2026年7月26日 © Tadeu Andre/MSF

各国政府はスーダンの保健医療への資金援助を

タウィラには約50のNGOが活動しているが、60万人に上る避難民に対し援助は依然として足りていない。MSFは地域唯一の200床規模の病院を運営しており、大規模な感染症流行への対応能力を持つ唯一の組織でもある。雨期のピークを前に降雨はまだ限定的だが、マラリアと栄養失調の患者数はすでに増加している。これから降雨が本格化すれば、患者はさらに増えることが見込まれる。8月には5歳未満の重度栄養失調児191人がMSFの入院栄養治療センターに入院し、そのうち約22%がマラリアに感染していた。

 

医療施設の閉鎖は、大規模かつ深刻な資金不足に陥っている人道危機の最中に起きている。国連によると、82万5000人の5歳未満児が重度急性栄養失調に陥ると予測され、今年前半には1950万人が危機的レベルの飢餓に直面している。生計を維持するために必要な財産を売却するなどの手段を取らないと、最低限の食料も確保できない状況だ。それにもかかわらず、国連の約28億7000万米ドル(約4401億円)の対応計画への拠出は41%に留まっている。さらに、世界保健機関(WHO)によるとスーダンの医療施設の37%は完全に機能停止していると推定されている。

 

各国政府や資金拠出機関は、スーダンの人びとの命を守る保健医療への資金を確保するとともに、閉鎖の危機に瀕している医療施設へ柔軟に資金を充てなければならない。

ザリンゲイの入院栄養治療センターで生後18日の息子にミルクを与える母親=2026年7月21日 © Tadeu Andre/MSF

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会社概要

国境なき医師団(MSF)日本

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URL
https://www.msf.or.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
-
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月