パレスチナ:続く医療従事者の拘束──世界医師会は解放への働きかけを

国境なき医師団

激しい攻撃を受けたガザ北部のカマル・アドワン病院。院長を務めていた医師は今も拘束されている=2025年2月3日 Ⓒ Nour Alsaqqa/MSF

2023年10月7日以降、パレスチナ・ガザ地区では1700人を超える医療従事者が殺害された(※1)。イスラエルはさらに、数百人の医療従事者を不当に拘束している。負傷者の治療にあたる医師や看護師、救急隊員自身が、ジェノサイド(集団殺害)の犠牲となっている。

 

世界医師会(WMA)は昨年、紛争下の医療の保護に関する決議を採択し、この問題の深刻さを認めている。これは医療の中立性という原則を改めて確認する重要な一歩だ。国境なき医師団(MSF)は先週(10月7日~10日)開催された世界医師会総会にあたり、日本を含むすべての医師会がこの決議への支持を明確に表明し、医療への攻撃に対する公平な調査や、拘束された医療従事者の解放の実現に向け、各国政府に働きかけるよう求めた。

600日にわたり拘束されている医師も

イスラエルに拘束されている医師の一人が、ガザ北部・カマル・アドワン病院の院長であった小児科医のフサム・アブ・サフィヤ医師だ。同院は、2024年12月にイスラエル軍の軍事作戦を受けるまでガザ北部で機能し続けた最後の病院の一つだった。

 

サフィヤ医師は、無期限の拘束を可能にするイスラエルの「違法戦闘員法」の下で、起訴されることなく1年半以上にわたって拘束されている。長期の独房拘禁、深刻な体重減少、そして、持病が治療されない状態が続き、釈放を求める国際的な請願には41カ国から署名が寄せられた。

 

ヨルダン川西岸地区・ラマラ出身の71歳の総合診療医、マゼン・アル・ランティシ医師も拘束が続く。「貧しい人びとのための医師」として知られる同医師は、2026年6月、夜明け前に自宅を急襲され拘束された。

 

さらに、MSFで長年活動してきたムハマド・オベイド医師も、「違法戦闘員法」の下で600日以上にわたり起訴されることなく拘束されている。43歳で3人の子どもの父親でもある同医師は、尊敬されるパレスチナ人整形外科医の一人だ。

 

他にも80人を超える医療従事者が今もイスラエル当局の拘束下にあり(※2)、その中には起訴されずに拘束されているガザ地区の医師が少なくとも14人含まれる(※3)。さらに、ヨルダン川西岸地区でも医師たちが逮捕されている。

拘束された医療従事者の解放を 

イスラエルによるパレスチナ人医療従事者への恣意的な拘束、拷問や虐待は、パレスチナの医療システムを崩壊させるための、意図的かつ組織的な戦略の一部だ。ガザ地区の保健医療体制の破壊に加え、ヨルダン川西岸地区でもイスラエル側からの財政的圧迫、妨害、人員不足、移動制限などによって医療が深刻に損なわれている。こうした行為は、パレスチナ人の命を明白かつ露骨に軽視するイスラエルの姿勢と一致する。

 

世界保健機関(WHO)によると、ガザでは医療への攻撃が125の医療施設(うち34は病院)で790件以上行われた。ガザの医療インフラはおよそ90%が破壊または損傷し、国連の専門家は2025年8月、保健医療体制の組織的破壊は「メディサイド(医療の抹殺)」に相当すると述べた(※5)。

 

問題はガザ地区だけではない。戦時の緊急事態という名目さえ存在しないヨルダン川西岸地区でも、WHOによると2026年1月~7月だけで医療への攻撃が98件行われ、87人が死亡、1600人超が負傷した。救急車は検問所で止められ、救急隊員が連行されている。入植者の攻撃で負傷した人びとのもとへ向かう医療従事者が妨害を受けている。透析患者やがん患者は、検問所のため治療へ向かえず、自宅にとどまっている。そして軍事作戦の際に、医療従事者が銃撃され、拘束され、殺害されてきた。

 

世界医師会は今こそ、各医師会、政府、関係機関に対し、共同で行動を求めるときだ。ガザ地区およびヨルダン川西岸地区における医療への攻撃について、迅速、透明かつ公平な調査を求める声に加わるとともに、恣意的に拘束されているすべての医療従事者の解放を改めて求める必要がある。

 

医療従事者の保護という普遍的な原則を再確認するだけでなく、すべての加盟医師会にその遵守を求めることが、世界医師会に課された責務である。

ガザ北部で攻撃を受け破壊されたMSFの救急車=2024年11月 Ⓒ MSF

※1:世界保健機関(WHO) 2026年9月 

※2:Healthcare Workers Watch 2026年4月

※3:Physicians for Human Rights Israel 2026年5月

※4:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) 2024年12月

※5:国連  2025年8月

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会社概要

国境なき医師団(MSF)日本

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URL
https://www.msf.or.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
-
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月