社長の平均年齢、60.5歳 33年連続の上昇、高齢化止まらず
社長の8割が「50歳以上」、地域別では東北地方で顕著
「団塊の世代」の多くが後期高齢者に達し、事業承継の課題が一層深刻になるといわれている「2025年問題」まで、残すところ1年を切った。
帝国データバンクが実施した調査では、2023年における全国の後継者不在率は改善傾向が続き過去最低の53.9%となった。円滑な事業承継には中長期的な準備期間が必要であるが、足元では社長の高齢化には歯止めがかからない状態が続いており、バトンタッチが間に合わず事業継続に影響を及ぼすケースが増加する可能性がある。
調査結果(要旨)
2023年時点の社長の平均年齢は60.5歳。前年を0.1歳上回り、33年連続の上昇で過去最高を更新。社長が交代した割合は3.80%、前年からほぼ横ばいで14年連続の3%台
「50歳以上」の社長は8割超、「40歳未満」の若手経営者は3.1%にとどまる
都道府県別、トップは秋田県の62.5歳、最も低いのは三重県の59.4歳
止まらぬ社長の高齢化、60.5歳と過去最高 社長交代率も未だ低水準
全国の社長平均年齢は、統計として遡れる1990年から毎年上昇し続けている。今回の調査でも同様の傾向となり、2023年は前年比0.1歳上昇の60.5歳となった。加えて、2023年における前年からの社長交代率は3.80%となった。14年連続で3%台が続いており、前回調査(3.82%)からほぼ横ばいだった。総じて、社長の世代交代に関して以前より活発な様子は見られず、社長の高齢化はさらに進行しているといえよう。
社長が交代する際の年齢は平均で68.7歳となり、前回調査(68.8歳)からほとんど変わらなかった。高齢ながら社長として経営を続けることにはリスクがともなうなかで、70歳近くで後継者にバトンタッチをしている結果となった。そして、社長交代後に就任する新社長の平均年齢は52.5歳となり、16.2歳の若返りがみられた。
<年代別構成比> 「50歳以上」の社長は81.0%と高水準、若手経営者はわずかにとどまる
2023年時点における社長の年代別構成比をみると、「50歳以上」が81.0%となり全体の8割以上を占める結果となった。「50歳以上」の割合は毎年上昇しており、22年に初めて8割を超え、今回の調査でもさらに上昇した。
近年はスタートアップなど新興企業を中心に若手経営者に注目が集まっているものの、「40歳未満」は3.1%、なかでも「30歳未満」はわずか0.2%に過ぎず、若手社長の割合は依然として低い水準にとどまっている。
<業種別> 「不動産」が62.6歳と高水準 “上場企業の20代社長”は、2023年時点では2名に
社長平均年齢を業種別でみると、「不動産」が62.6歳で最も高かった。不動産業のうち細分類9業種では7業種が全体(60.5歳)を上回っており、なかでも「貸事務所」「貸家業」などでは特に高齢化が目立つ。他方、若手起業家が多い“IT企業”や個人向け業種が分類される「サービス」は59.1歳で最も低かった。
なお、上場企業の社長平均年齢は58.6歳だった。ANYCOLOR(東京都港区、東証プライム上場)の田角陸氏(28歳、当調査時点)に続いて、2023年9月27日に新規上場を果たしたAVILEN(東京都中央区、東証グロース上場)の高橋光太郎氏(29歳)も20代社長となった。
<都道府県別> 都道府県別では「東高西低」、秋田県が6年連続トップ
社長平均年齢を都道府県別でみると、秋田県が62.5歳(2022年比+0.1歳)で最も高かった。 1990年から8.7歳上昇しており、6年連続のトップとなった。また、次いで岩手県(62.4歳、同+0.1歳)、高知県(62.3歳、同+0.2歳)が続いた。なかでも、東北地方は6県すべてで全体平均(60.5歳)を上回った。また、前年からの上昇幅としては和歌山県(61.3歳、同+0.4歳)が最も高かった。
他方、平均年齢が最も低かったのは三重県で、59.4歳。三重県は2023年時点の後継者不在率が30.2%*と全国で最も低い点も含め、円滑な事業承継の結果が表れているといえよう。一方で、前年から0.3歳上昇しており60歳超えも視野に入ってきた。
なお、47都道府県のなかで社長平均年齢が前年から低下した地域はみられず、鳥取県(61.0歳)、香川県(60.3歳)、佐賀県(60.5歳)、大分県(60.4歳)の4県のみ同横ばいだった。
今後の見通し:既に後継者難倒産は過去最高水準、社長の「高齢リスク」噴出が懸念
社長の平均年齢は上昇傾向が続き、過去最高を更新した。2023年の社長交代では16.2歳の若返りがみられたものの、交代率は3.80%と低位にとどまっている。このまま社長交代率が改善しなければ、さらに社長平均年齢は上昇しそうだ。
こうした結果を踏まえ、社長の「高齢リスク」にはさらなる警戒が必要だ。実際に、2023年度の後継者難倒産は586件となり過去最高を大幅に更新し、そのうち約4割は「経営者の病気、死亡」が原因であった。
社長の高齢化が進めば、不測の事態が生じる可能性は自ずと高まる。円滑な事業承継を確実に進めていくためには、計画的かつ余裕のある準備が必要となろう。
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