企業のBCP『策定意向』、4年ぶりに5割に スキル・人手・時間の3要素がBCP策定のハードル

事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)

株式会社帝国データバンク

能登半島地震からまもなく半年。最大震度7を記録したこの地震は、直接的な被災による影響だけでなく、交通や生活インフラの寸断などによって企業の生産・消費活動に幅広く悪影響を与え、今なお復旧活動が続いている。

6月には大手出版社に対する大規模なサイバー攻撃により、主要なサービスの停止が生じている。企業側の即座の事実公表と、対応方針の説明が消費者の理解につながる重要なカギとなった。

このように、近年は地震や台風などの自然災害にとどまらず、サイバー攻撃やテロ、感染症、地政学的リスクなどさまざまな経営上のリスクが高まり、企業には危機管理、つまりリスク発生に備えた準備が強く求められている。

そこで、帝国データバンクは、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解について、全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年5月調査とともに行った。

<調査結果(要旨)>

  1. BCP『策定意向あり』は50.0%で4年ぶりに5割に、BCP策定率は19.8%で過去最高

  2. 事業継続に対して想定するリスク、「自然災害」が71.1%でトップ

  3. リスクへの備え、「従業員の安否確認手段の整備」(68.9%)や「情報システムのバックアップ」(57.9%)が上位に

  4. BCPを策定しない理由、「スキル」「人手」「時間」の3要素がハードルに

※  調査期間は2024年5月20日~31日、調査対象は全国2万7,104社で、有効回答企業数は1万1,410社(回答率42.1%)。なお、事業継続計画(BCP)に関する調査は2016年以降、毎年実施し、今回で9回目

※  本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している



企業のBCP『策定意向』は4年ぶりに5割に、約2割の企業でBCPを策定済    

               

                                         

自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」企業の割合(以下、BCP策定率)は19.8%となった。前回調査(2023年5月)から1.4ポイント増加し、過去最高となった。

さらに、「現在、策定中」(7.3%、前年比0.2ポイント減)と、「策定を検討している」(22.9%、同0.2ポイント増)を合計したBCPに対して『策定意向あり』[1]とする企業は50.0%(同1.4ポイント増)と、4年ぶりに5割に達した。

都道府県別では、唯一6割超の「高知」(68.4%、全国比+18.4ポイント)が最高となった。

次いで「静岡」(58.3%、同+8.3ポイント)、「石川」(57.7%、同7.7ポイント増)、「富山」「愛媛」(ともに57.6%、同+7.6ポイント)が続いた。震災の記憶が新しい北陸地域、南海トラフ地震の被害が想定される地域で比較的BCPの策定意向が高い様子がうかがえた。

       

               

またBCP策定率を規模別にみると、「大企業」が37.1%(前年比1.6ポイント増)、「中小企業」が16.5%(同1.2ポイント増)となった。「大企業」は2016年からは9.6ポイント上昇した一方で、「中小企業」の策定状況の伸びは低調となっている。



事業継続に対して想定するリスク、「自然災害」が7割超でトップ

         

            

BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定しているか尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が71.1%となり、最も高かった(複数回答、以下同)。


次いで、サイバー攻撃など含む「情報セキュリティ上のリスク」(44.4%)が4割台で続いた。

以下、インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなどの「感染症」(39.9%)や電気・水道・ガスなどの「インフラの寸断」(39.6%)、「設備の故障」(39.1%)が上位に並んだ。

 

 

人的資源や

企業資産の保護を中心とした備えを行う


BCPについて『策定意向あり』とする企業に対して、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」が68.9%で7割近くにのぼった(複数回答、以下同)。

                       

 以下、「情報システムのバックアップ」(57.9%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(42.6%)が続いた。


企業からは「大規模な震災などが生じた際に交通インフラや、生活インフラに多大な影響を及ぼす可能性があるため、早期復旧に向けた初動体制が組めるよう定期的にBCP訓練を実施」(建設、東京都)といった声が寄せられ、日頃から訓練などを通じ、従業員に意識付けすることも大切な備えといえる。



スキル・人手・時間の3要素がBCP 策定のハードルに

                   

    

BCPを「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が41.6%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「策定する人材を確保できない」(34.3%)、「策定する時間を確保できない」(28.4%)が続き、BCPの策定にはスキル・人手・時間の3要素が企業規模を問わず大きな障壁となっている様子がうかがえた。


一方で、「中小企業」では、「必要性を感じない」が21.0%と「大企業」より5ポイント以上高い結果となり、さらに従業員数「5人以下」の企業では、30.3%と3割を超える企業で「必要性を感じない」と捉えていた。企業からもBCPがなくても「社員が少ないため口頭で十分伝わる」(不動産、東京都)といった声が複数聞かれた。

 



本調査の結果、BCPについて『策定意向あり』とする企業は4年ぶりに5割に上昇した。都道府県別では、高知県や静岡県、石川県、富山県などで策定意向の割合が高く表れた。


企業活動を行ううえで想定するリスクとしては「自然災害」が最も多くあげられたほか、サイバー攻撃などの「情報セキュリティ上のリスク」に対する危機意識も高く表れた。また「インフラの寸断」や「設備の故障」など生活基盤や経済活動の基盤に対するリスクを想定する企業も多い。そして、それらのリスクに対して、企業は従業員の安否やシステムのバックアップなど人的資源や企業資産の保護を中心とした備えを行っている。


一方で、「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」がないことを理由にBCPを策定していない企業も多く、これら3要素が大きな障壁になっている。加えて、必要性を感じないという企業も一定数存在しており、行政などからのさらなる後押しによる認知度向上や理解の醸成も必要と言えよう。


BCPの策定は、事業の継続にとどまらず、企業価値の維持・向上の観点からも日頃から緊急事態に対する準備を進めることが肝要である。企業活動を行う上で、BCPを考えることは優先順位の低くなりがちな取り組みかもしれないが、自社には関係ない、必要ないとはせず、自分事(自社事)として捉え、同業他社や行政などと連携し備えていくことが非常に重要だ。



[1] 『策定意向あり』は、「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計


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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月