SDGsに積極的な企業、「過去最高」の54.5%に 人材確保の狙いも 7割が効果実感、「多様性」「働き方改革」などで企業イメージ向上
SDGsに関する企業の意識調査(2024年)
持続可能な世界を実現するための17の目標・169のターゲットから構成され、カラフルなドーナツ型のデザインが特徴のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)。目標達成期限である2030年に向けた取り組みは後半戦に突入しており、世界的に対応が急がれている。
こうしたなか、政府は2023年12月にSDGsを達成するための中長期的な国家戦略である「SDGs実施指針」を4年ぶりに改定した。同指針では、社会課題の解決を通じて事業性を高める企業等への支援の強化など民間企業に関わる内容も多く、政府は官民を問わずに国全体としてSDGsの目標達成に向けて力を入れている。
そこで、帝国データバンクは現在のSDGsに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年6月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
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『SDGsに積極的』な企業は調査開始以降で最高水準の54.5%。人材確保を狙う企業も
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規模が小さいほど『SDGsに積極的』な企業割合低く
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現在力を入れている項目、今後最も力を入れたい項目ともに目標8「働きがいも経済成長も」がトップ
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取り組んでいる企業の7割がSDGsの効果を実感、「企業イメージ向上」「従業員モチベーション向上」が上位
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4社に1社がDEI(多様性、公平性、包摂性)への取り組みに積極的
※ 調査期間は2024年6月17日~30日、調査対象は全国2万7,159社で、有効回答企業数は1万1,068社(回答率40.8%)。なお、SDGsに関する調査は2020年以降、毎年実施し、今回で5回目
※ 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
『SDGsに積極的』は調査開始以降で最高水準の54.5%に
自社におけるSDGsへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は29.7%となり、前年より2.3ポイント上昇した。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は24.8%で同1.4ポイント低下した。
合計すると『SDGsに積極的』な企業は0.9ポイント増の54.5%と、調査開始以降で最高水準を更新した。ただし、前年に続き、上昇幅は鈍化する結果となった。
企業からは、「取り組まないと人員確保が難しいと感じる」(電気・ガス・水道・熱供給、神奈川県、中小企業)や「取引先からの取り組み状況の調査が増えている」(情報サービス、富山県、中小企業)の声にあるように、人材確保や取引先との関係強化を目的に取り組んでいる企業が複数みられた。
その一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は33.5%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は7.4%だった。合計すると、SDGsを認知しつつも取り組んでいない企業は40.9%となり、『SDGsに積極的』な企業を10ポイント以上下回った。
規模が小さいほど『SDGsに積極的』な企業割合低く
企業規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が71.8%と、全体を大幅に上回った。「中小企業」では51.2%、うち「小規模企業」では42.9%となった。規模が小さいほどSDGsに積極的な企業の割合が低くなる傾向が続いている。中小企業からは「中小零細企業は人手不足など目先の問題を解決することで手一杯」(不動産、東京都、小規模企業)のような厳しい声が聞かれたほか、「範囲が広すぎて零細企業での取り組みがみえていない」(専門サービス、宮城県、中小企業)といったコメントも複数あがっていた。
他方、SDGsに積極的な企業を業界別にみると、『金融』が66.4%で最も高かった。企業からは「損保会社と提携した『SDGs認定書』の発行のほか、SDGs関連セミナーの開催、職員への金融リテラシー教育などに取り組んでいる」(金融、兵庫県、大企業)などの声が聞かれた。
現在力を入れている項目は「働きがいも経済成長も」がトップ
SDGs17の目標のなかで、現在力を入れている項目を尋ねたところ、働き方改革や労働者の能力向上などを含む「働きがいも経済成長も」が34.0%で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、再生可能エネルギーの利用などを含む「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(25.0%)、リサイクル活動などを含む「つくる責任つかう責任」(23.2%)、カーボンニュートラル製品の使用などを含む「気候変動に具体的な対策を」(23.1%)が続いた。
なかでも近年政府が注力している女性活躍推進などを含む「ジェンダー平等を実現しよう」(14.6%)は前年比2.4ポイント増となり、最も大幅に上昇した。
総じて、いずれかのSDGs目標に力を入れている企業は72.8%となり、SDGsに「取り組んでいない」などと回答した企業でも、気付かないうちにSDGsに取り組んでいる企業が多数あることが分かった。
今後最も力を入れたい項目も「働きがいも経済成長も」がトップ
今後、最も取り組みたい項目について尋ねたところ、現在最も力を入れている項目と同様に「働きがいも経済成長も」が11.8%でトップ、全項目のなかで唯一1割を超えた。
次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(7.3%)や、「気候変動に具体的な対策を」(6.9%)が上位に並んだ。
企業の7割がSDGsの効果を実感、「企業イメージの向上」「従業員のモチベーションの向上」が上位
現在SDGs各目標に力を入れている企業に取り組みによる効果を尋ねたところ、『効果を実感』している企業の割合は前回調査(69.2%)から0.3ポイント増の69.5%となった。
なかでも、「企業イメージの向上」が39.8%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「従業員のモチベーションの向上」(32.9%)も3割台で続いた。以下、「経営方針等の明確化」(17.8%)、「採用活動におけるプラスの効果」(16.7%)が続いた。また、「売り上げの増加」が11.6%、SDGsをビジネスチャンスとして捉え、「新規事業立ち上げ、新商品・サービス開発」につながった企業が8.1%あり、SDGsへの取り組みは社会課題の解決への貢献だけでなく、ビジネスチャンスの獲得、ひいては業績の改善にも結びついている可能性が示された。
4社に1社がDEI(多様性、公平性、包摂性)への取り組みに積極的
SDGsとの関連が深い「DEI[1](Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包摂性)」という考え方・取り組みへの注目度が高まりつつある。自社におけるDEIへの理解や取り組みについて尋ねたところ、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は8.8%、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は16.6%だった。合計すると25.4%となり、4社に1社が『DEIに積極的』であることが判明した。
一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は26.6%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は9.8%、「言葉も知らない」は23.6%だった。しかし、「DEIという単語は初めて聞いたが、この取り組みは以前から行っている」(機械製造、富山県、中小企業)のように、言葉は知らないものの既に取り組んでいる企業も複数みられた。
なお、SDGsと同様に企業規模が小さいほど『DEIに積極的』な割合が低い傾向にある。
[1] DE&Iとも表記される
企業の声(抜粋)
DGs/DEIに積極的な企業の声
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今後も企業が存続するために、また顧客に選ばれ、採用活動で就職先として選ばれるためには、SDGsやDEIの意識を高く持ち、多様性を尊重した組織作りが必須(電気機械製造、長野県、中小企業)
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「SDGs功労賞」を受賞したことで大手企業を含むPR力のある後発事業者との差別化を図れた。顧客満足度の向上や従業員のモチベーションアップも実感(繊維・繊維製品・服飾品小売、兵庫県、中小企業)
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会社が小規模のため大きな動きは難しいが、リサイクルなど身近な活動に継続して取り組んでいく方針(建設、東京都、小規模企業)
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特に上場大手企業と取引していくうえで必須である。新卒採用にも影響力が高く、ソーシャルグッドでないものは衰退していくだろう(出版・印刷、東京都、大企業)
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DEIは従業員の安定的な確保のために経営者として必要な感性である(建設、京都府、小規模企業)
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地方の多くの金融機関は理解しておらず、融資の審査対象にはならないようだ。しかし、SDGSの取り組みは続けなければならないと考えている(飲食料品・飼料製造、山梨県、小規模企業)
SDGs/DEIに積極的でない企業の声
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重要性は理解しているが、今の経済環境において中小企業には荷が重すぎる(情報サービス、山形県、中小企業)
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考え方について共感できるが、人手や資金などの観点から取り組むことが難しい(不動産、千葉県、小規模企業)
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中小零細企業がいかに取り組めばよいのかが分からない(建材・家具、窯業・土石製品卸売、高知県、小規模企業)
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中小零細企業では具体的な取り組み方を策定するのが難しい。また、それほどの効果は得られないと考える(建設、千葉県、中小企業)
まとめ
本調査の結果、29.7%の企業が現在、SDGsの意味等を理解し、取り組んでいることが明らかになった。取り組みたい企業と合計すると『SDGsに積極的』な企業は調査開始以降で最高水準の54.5%だった。また、SDGsを意識せずにSDGsに該当する取り組みを行っている企業もあり、実際に取り組んでいる企業の割合はさらに高いとも考えられる。
なかでも、SDGsに取り組む企業のうち、約7割が取り組みの効果を実感していることが分かった。具体的には、「企業イメージの向上」が約4割でトップだったほか、「従業員のモチベーションの向上」など非財務面での企業価値の向上に関する効果が上位に並んでいた。また、売り上げの増加や新商品開発等につながった企業もあり、SDGsによる社会課題の解決と企業の成長は両立できることが示唆される。
一方で、特に中小企業からは「人材面・費用面における厳しさ」のほか、「業績の改善など優先すべき対応がある」といった声が多く聞かれた。また、規模が小さい企業にとってはハードルが高いといった意見や、どのように対応すれば良いか分からない企業も多くみられた。
環境や人権に対する人々の意識が高まっているなか、今後はSDGsに取り組んでいることが企業間の取引条件となるケースが増加するほか、商品の購入、入社動機のポイントにもなってくるだろう。対応が難しい中小企業は身近で、気軽にできることから取り組んでいくことが一策であるほか、実際の取り組み事例などの情報発信の強化や相談窓口の設置、補助金制度の充実など、公的支援によるサポートが引き続き望まれる。
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