AMED「革新的先端研究開発支援事業インキュベートタイプ(LEAP)」に採択

―アルツハイマー病に対する「老化細胞除去治療」の開発を本格始動―

学校法人 順天堂

順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学の南野 徹 主任教授らの研究グループは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和8年度「革新的先端研究開発支援事業 インキュベートタイプ(LEAP)」に採択され、アルツハイマー病に対する老化細胞除去治療の開発を本格的に開始します。

研究グループはこれまで、加齢とともに体内に蓄積し、慢性炎症や様々な加齢関連疾患の原因となる「老化細胞*¹」に着目して研究を進めてきました。2021年には、老化細胞に特徴的に発現する「老化抗原*²」を標的とする老化細胞除去*³ワクチンを世界に先駆けて開発し、動物モデルにおいて加齢関連疾患を改善できることを報告しました。

その後、アルツハイマー*⁴病への応用研究を進め、アルツハイマー病モデルにおいても、老化細胞除去ワクチンが病態および認知機能を改善する可能性を示す結果を得ています。 今回のLEAP*⁵研究では、これらの成果を基盤として、アルツハイマー病の脳内に蓄積する病的な老化細胞を選択的に除去することによる治療効果とそのメカニズムを明らかにするとともに、ワクチンや抗体などを用いた新たな治療法の開発を進め、将来的な臨床応用を目指します。

【本研究のポイント】

・アルツハイマー病の脳内に蓄積する「病的な老化細胞」を新たな治療標的として研究

・老化細胞を選択的に除去するワクチン・抗体による新しいアルツハイマー病治療法を開発

・従来のアミロイドβやタウを直接標的とする治療とは異なるアプローチから、将来の臨床応用を目指す

【採択事業の研究開発概要】

課題名 : 老化抗原を標的とした新規免疫療法によるアルツハイマー病の革新的治療戦略の開発

代表者 : 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 主任教授 南野 徹

実施予定期間 : 令和8年10月(予定)~令和12年度末(中間評価による選外課題は令和10年度末で終了)

背景

アルツハイマー病は、高齢化に伴って患者数が増加している認知症の主要な原因疾患です。近年、アミロイドβを標的とする治療薬が実用化されるなど治療は大きく進歩していますが、病気の進行にはアミロイドβやタウだけでなく、慢性的な神経炎症や脳内の免疫環境の変化など、複数の病態が関与すると考えられています。一方、加齢や様々なストレスによって生じる「老化細胞」は、細胞分裂を停止するだけでなく、炎症を引き起こす様々な物質を分泌し、周囲の組織機能を障害することが知られています。近年、こうした老化細胞が脳にも蓄積し、神経炎症や神経変性疾患の進行に関与する可能性が注目されています。

南野教授らの研究グループは30年以上にわたり、細胞老化と加齢関連疾患の関係について研究を進めてきました。2021年には、老化細胞に特徴的に発現する老化抗原を同定し、これを標的とする老化細胞除去ワクチンを開発しました。このワクチンによって、免疫反応を利用して老化細胞を選択的に除去しうること、その結果、動脈硬化や糖尿病など、様々な加齢関連疾患の改善が得られることを Nature Aging 誌に報告しています。

当時の研究では、アルツハイマー病を含むその他の加齢関連疾患への応用が今後の課題として位置づけられていました。今回のLEAP採択により、この構想をアルツハイマー病の新たな治療法として発展させる研究を本格的に進めます。

内容

本研究では、アルツハイマー病の脳内で増加する病的な老化細胞に着目します。アルツハイマー病では、アミロイドβの蓄積に加えて、脳内の免疫を担う細胞の機能変化や慢性的な神経炎症など、複数の病態が複雑に関与しています。研究グループは、こうした病態の一部に細胞老化が関与し、脳内に蓄積した病的な老化細胞が周囲の細胞に悪影響を及ぼすことで、神経炎症や神経機能障害をさらに進行させる可能性があると考えています。

研究グループはこれまでに、老化細胞に特徴的に発現する老化抗原を同定し、この抗原を標的とする老化細胞除去ワクチンを開発してきました。2021年の研究では、このワクチンによって誘導される免疫反応により老化細胞が選択的に除去され、慢性炎症や複数の加齢関連病態が改善することを明らかにしました。

さらに、その後の研究から、アルツハイマー病モデルにおいても、老化細胞除去ワクチンによって病的な老化細胞を標的とすることで、アルツハイマー病の病態や認知機能を改善できる可能性を示す結果を得ています。

今回のLEAP研究では、これらの成果をさらに発展させ、アルツハイマー病において病的な老化細胞がどのように蓄積し、神経炎症や神経機能障害、認知機能低下に関与するのかを詳しく解析します。さらに、病的な老化細胞を除去することによって、これらの病態がどのように改善するのかを明らかにし、老化細胞を治療標的とする科学的根拠の確立を目指します。

そのうえで、これまで培ってきた老化細胞除去技術を基盤として、病的な老化細胞を免疫の力で選択的に除去するワクチンおよび抗体治療の開発を進めます。有効性と安全性を詳細に評価し、ヒトへの臨床応用に適した治療候補の確立を目指します。実際のLEAP計画でも、ワクチンと抗体について有効性、安全性、製造性を比較し、臨床開発に進める候補を選定することを研究目標としています。

従来のアルツハイマー病治療では、アミロイドβやタウなどの異常タンパク質が主要な治療標的とされてきました。本研究は、それらを直接標的とするのではなく、アルツハイマー病の進行に関与する病的な老化細胞そのものを治療標的とするという新たなアプローチです。病的な老化細胞を選択的に除去することで、神経炎症を含む病態の悪循環を抑え、アルツハイマー病の進行を抑制する新しい疾患修飾治療の確立を目指します。

今後の展開

本研究を通じて、病的な老化細胞を標的とするという新たなアルツハイマー病治療の概念を確立し、臨床応用へつなげることを目指します。将来的には、老化細胞除去ワクチンや抗体のFirst-in-Human(FIH)試験*⁶へと発展させ、これまでとは異なる作用機序に基づく新たな疾患修飾治療の実現を目指します。さらに、老化細胞はアルツハイマー病だけでなく、様々な加齢関連疾患の発症・進展に関与することが明らかになりつつあります。今回の研究で確立する「病的な老化細胞を選択的に除去して疾患を治療する」という戦略を、将来的には他の加齢関連疾患へ展開することで、老化そのものを標的とした新しい医療の実現につなげることが期待されます。

図:老化細胞除去ワクチンによるアルツハイマー病治療の想定作用機序

アルツハイマー病の脳内では、病的な老化細胞が蓄積し、炎症性因子の分泌などを介して神経炎症や神経機能障害に関与すると考えられています。本研究では、病的な老化細胞に特徴的に発現する「老化抗原」を目印として、ワクチンや抗体により免疫系を介してこれらの細胞を選択的に除去する治療法の開発を目指します。病的な老化細胞を除去することで、神経炎症などの病態の悪循環を抑制し、神経機能を保護することによって、最終的に認知機能低下を抑制することが期待されます。

用語解説

*1 老化細胞: 加齢や様々なストレスによって細胞分裂を停止した細胞。体内に蓄積すると、炎症を引き起こす物質などを分泌し、周囲の組織の機能に影響を与えることがあります。

*2 老化抗原(Seno-antigen): 老化細胞の表面などに特徴的に発現する分子。本研究では、こうした分子を目印として病的な老化細胞を免疫系に認識させ、選択的に除去する治療法の開発を進めます。

*3 老化細胞除去(セノリシス): 体内に蓄積した老化細胞を選択的に除去すること。加齢関連疾患に対する新しい治療戦略として研究が進められています。

*4 アルツハイマー病: 認知症の主要な原因となる神経変性疾患。脳内へのアミロイドβやタウなどの異常タンパク質の蓄積に加え、神経炎症など様々な病態が関与すると考えられています。

*5 LEAP: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業において、将来の医療応用につながる革新的な研究成果を実用化へ橋渡しすることを目的とした研究開発制度。参考URL:https://www.amed.go.jp/program/list/16/02/001_leap.html

*6 First-in-Human(FIH): 試験開発した治療法を初めてヒトに投与して安全性などを評価する臨床試験。

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本社所在地
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代表者名
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上場
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設立
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