科学技術振興機構(JST)「AI for Science革新的研究推進事業(ARiSE)」の採択決定について
順天堂大学(学長:代田 浩之)では、このたび科学技術振興機構(JST)が公募した「AI for Science 革新的研究推進事業(ARiSE)」の戦略ターゲット型「T2」にて、研究開発課題「形態学的デジタルツイン:ヒト3D生体システムの統合AI基盤モデル」が採択されました。全国19グループが参画するオールジャパン体制で、ヒト組織の3次元形態画像とマルチモーダル情報を統合する世界初の「3D-Nativeバイオ基盤モデル」を開発し、日本のAI for Science先進国としての地位確立に貢献するプロジェクトを開始します。
研究のポイント
● 世界初の3D-Nativeバイオ基盤モデルでヒト組織の立体構造を解析
● 創薬標的探索や非侵襲画像からの疾患リスク予測など医療・創薬への展開を期待
採択の概要
プログラム名:科学技術振興機構・AI for Science 革新的研究推進事業(ARiSE)
領 域:「戦略ターゲット型T2」
課題名:形態学的デジタルツイン:ヒト3D生体システムの統合AI基盤モデル
研究開発代表者:洲崎 悦生(順天堂大学 大学院医学研究科 主任教授)
期 間:2026年10月 ~ 2029年3月 (2.5年間)
背景
生命科学の理解には、生体組織が本来持つ立体的な構造と機能を正確に捉えることが不可欠です。しかし従来の病理・組織解析は、薄い2次元切片を用いる手法が中心であり、血管や神経などの複雑な立体構造や、散在性の免疫細胞・炎症細胞分布などの情報は、切片化によって数十マイクロメートル単位で失われてしまいます。近年、深層学習を用いた「病理基盤モデル」が国際的に開発されていますが、いずれも2次元切片を前提としており、組織が本来持つ3次元的なトポロジー(連結性・分岐・浸潤など)を学習することはできませんでした。
そこで本研究チームは、ヒト組織を透明化して立体のまま観察・解析する独自技術と、世界最先端のAI技術を融合し、2次元の先へ進む「3D-Nativeバイオ基盤モデル」の開発に挑みます。組織を2次元画像の積み重ねとして事後的に扱うのではなく、立体構造そのものを学習対象とする点が、既存の病理AIとの決定的な違いです。
内容
本研究は、本学医学研究科洲崎悦生主任教授を研究開発代表者、東京科学大学の島村徹平教授を共同研究開発代表者とし、全国19の研究グループが参画するオールジャパン体制で取り組みます。
3D-Nativeバイオ基盤モデルは、次の特徴で既存の2次元AIモデルと一線を画します。
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組織を2次元切片としてではなく、立体構造・トポロジー(連結性・分岐・浸潤など)そのものを学習対象とします。
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3D組織画像・高解像度X線・空間オミクス・臨床情報を、同一の3次元座標系上に統合します。
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少数の実測データから未観測領域を生成的に補完し、能動的な実験計画と組み合わせて継続的に更新します。
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全国11拠点の「ヒト3D生体解析ローカル拠点」から大規模な学習データを収集します。
研究は、次の3つを連携させて進めます。
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標準プロトコル(SOP)の確立とデータ基盤整備:ヒト3D生体組織解析の標準プロトコルを確立し、全国11拠点の「ヒト3D生体解析ローカル拠点」に展開して、AI学習用の大規模データを収集します(Human VoxelBio Initiative)。
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3D-Nativeバイオ基盤モデルの開発:3D組織画像の自己教師学習、X線・空間オミクスとの統合、病態の動態予測までを担う複数のAIモデル群を開発します。
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第三者評価と国際ベンチマークの確立:2次元モデルとの比較により3次元化がもたらす情報利得を定量的に実証し、国際的な評価基盤を構築します。
本研究チームはこれまでに、ヒト組織の透明化技術、3D H&E染色法、および専用ライトシート顕微鏡の開発を進め、全国の病理検査室への標準プロトコル頒布体制を構築してきました(Cell誌 2014年ほか)。生体組織を立体のまま学習する基盤モデルの開発に本格的に取り組む試みは、国内外にほとんど例がありません。この点が本研究の新規性です。
今後の展開
本研究における2.5年間の目標は、「形態学的デジタルツイン」のプロトタイプ(PoC)を完成させることです。開発する基盤モデルは、がん微小病変の見落とし低減や脈管侵襲の正確な評価など、2次元では捉えられなかった診断精度の向上に貢献すると期待されています。課題となるのは、大規模な3D組織データの収集と、それを学習できる計算基盤の整備です。本研究では、全国の拠点によるデータ収集体制の構築と、最新GPU計算資源を組み合わせ並行して進めます。
本研究の研究の成果は、製薬企業と連携した創薬標的の探索や、CT・MRIなど非侵襲画像からの疾患リスク領域の高精度予測への応用が期待されます。また、開発する標準プロトコルや3D解析技術は、他の研究分野にも活用可能です。さらに、研究終了後(2028〜2030年頃)には、本研究の成果をもとにしたスタートアップの設立も計画しており、日本発の3D生体空間解析技術による新市場の創出を目指します。
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