高速鉄道車両の基本仕様を定めた規格がUIC の優秀出版賞を受賞しました~日本の新幹線の技術仕様を反映させた国際的な業界規格「IRS 60660」の発行~
〇JR東日本は海外鉄道事業におけるビジネス販路の拡大のため、鉄道にかかわる国際規格や業界規格へ日本の技術を盛り込むなどの標準化活動を行っています。その一環として、国際鉄道連合(以下、UIC(※1))が発行する業界規格(以下、IRS(※2))へ、日本の新幹線の技術仕様を反映させる取り組みを行っています。 〇このたび「IRS 60660」は、UIC より優れた出版物(技術仕様書、ガイドライン、IRS)に贈られる「EXCELLENCE IN RAILWAY PUBLICATIONS AWARDS(優秀出版賞)」を受賞し、2024年10月15日に授賞式が執り行われました。JR東日本が開発・審議に関わる規格が本賞を受賞するのは2022年の「IRS 60682(※3)」に続き2回目です。 |
(※1)UICは、1922年に発足したフランスのパリに本部をおく、世界各国の鉄道事業者によって構成される国際機関です。世界84か国、218の鉄道関連団体から構成されています。円滑な国際鉄道運行を推進するため、鉄道における業界規格の開発・発行等も行います。
(※2)IRSとは、UICが開発・発行を行っている鉄道分野における業界規格です。2013年より前身の「UIC Leaflet」からIRSへの改訂作業が開始され、2023年12月の時点で230件のIRSが発行されています。
(※3)「IRS 60682」は2022年6月に発行された、高速鉄道の電力設備に特化した国際的な規格です。
1.「EXCELLENCE IN RAILWAY PUBLICATIONS AWARDS」の受賞について
・JR東日本は、鉄道にかかわる国際規格や業界規格等へ日本の技術を盛り込む、あるいは日本の技術を国際規格に一部対応させるなどの活動を行っており、このたび「IRS 60660」が「EXCELLENCE IN RAILWAY PUBLICATIONS AWARDS」を受賞しました。本賞は、2023年7月から 2024年6月までの1年間にUICから発行された出版物の中から、特に優れたものに対してUICが贈る賞であり、2024年10月15日に授賞式が執り行われました。
・本賞の目的は、鉄道運行の効率化を支援するとともに、ユーザーにとって使いやすくかつビジネスに適した出版物の発行を促進することであり、出版物としての質(わかりやすい文章構成、用語の一貫性)、ワーキンググループ内の専門家の貢献度、取り扱うトピックの先進性、鉄道運行における重要性等を考慮して受賞対象が決められます。
・JR東日本が開発・審議に関わる規格としては、2022年の「IRS 60682」(高速鉄道の電力設備に関する規格)に続き2度目の受賞となります。
【2022年10月26日プレスリリース:https://www.jreast.co.jp/press/2022/20221026_ho01.pdf】
2.「IRS 60660」について
・「IRS 60660」は、高速鉄道車両の基本仕様を定める規格です。2021年1月より、UIC 内の旅客局 都市間高速鉄道委員会の傘下となるワーキンググループにて検討が開始されました。原案は主に欧州域内の高速鉄道を対象とした内容であり、日本の新幹線方式には適合しない記述を多く含んでいましたが、JR東日本は2年以上にわたる議論を通して日本の新幹線方式の特徴や背景となる設計思想の違いを説明し、本規格に日本の新幹線の技術仕様を反映するに至りました。
・ワーキンググループ参加国は下記6ヵ国です。
日本、中国(議長)、フランス、スペイン、スウェーデン、インド
・JR東日本が中心となって「IRS 60660」に反映した日本の新幹線技術は主に下記の2つです。
(1)切替セクション方式
列車が架線の電気的な境界部(中立セクション)を通過する際、列車が無電となる時間を短くすることができる方式です。海外では中立セクションを惰行で通過するのが一般的であり、高速鉄道車両では力行(駆動力を維持した状態)しながら中立セクションに入った際、車両を自動的に惰行モードとすることなどが求められます。一方、日本の新幹線で一般的な「切替セクション方式」を用いると、列車を力行しながら中立セクションを通過することが可能であり、車両に自動での惰行モード切り替え機能を設ける必要がなく、加速に要する時間の短縮にもつながります。
(2)アクティブセーフティー
日本の新幹線は、道路との完全立体交差を実現した専用軌道や、高度な信号システムの採用などにより、衝突を未然に防止する「アクティブセーフティー」の考え方が主流です。一方、本規格の初期提案では、衝突事故対策として車両強度を確保する「パッシブセーフティー」の観点のみで車両要件が記載されていました。本規格の発行版では、日本の新幹線における考え方が適用され、「要求される安全レベルをアクティブセーフティー対策とパッシブセーフティー対策の両方を組み合わせて達成すること」「両者の組み合わせ方は各国の要件に応じて決定すること」が記載されました。
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