東京都写真美術館「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」

20世紀のドキュメンタリー写真を代表する写真家W. ユージン・スミス。ジャーナリズムの枠を超え、写真の芸術的可能性を探る試みに満ちた「ロフトの時代」に焦点を当てる日本初の展覧会

公益財団法人東京都歴史文化財団

公式サイト:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5095.html

W. ユージン・スミス 〈私の窓から時々見ると…〉より 1958年 東京都写真美術館蔵 ©1958, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith

このたび東京都写真美術館は、20世紀のドキュメンタリー写真を代表するアメリカの写真家、W . ユージン・スミス(1918–1978)の個展を開催いたします。

アメリカ・カンザス州ウィチタに生まれたスミスは、母親の影響で幼少期より写真に親しみ、地元紙『ウィチタ・イーグル』での活動を経て、1940年代から本格的に報道写真に取り組むようになりました。第二次世界大戦中にはグラフ雑誌『ライフ』の特派員として沖縄やサイパンなどの激戦地を取材。戦後も同誌を中心に、〈カントリー・ドクター〉、〈慈悲の人 シュヴァイツァー〉、〈水俣〉など、人々の生活に密着した作品を次々に発表し、複数の写真と短い解説文を組み合わせて物語を紡ぐ「フォト・エッセイ」の第一人者として確固たる地位を築きました。

1954年に『ライフ』誌を退いたスミスは、ニューヨーク・マンハッタンのアパート、通称「ロフト」に移り住みました。そこは、セロニアス・モンクやマイルス・デイヴィスをはじめとするジャズ・ミュージシャン、サルバドール・ダリや抽象表現主義の画家たち、ロバート・フランクやダイアン・アーバスなどの写真家まで、時代を担う多彩な芸術家が集う場となり、頻繁に行われるジャム・セッションや交流の様子をスミスは写真に収めました。

この時期の作品は、従来のジャーナリズムの枠を超え、写真の芸術的可能性を探る試みに満ちています。本展では、「ロフトの時代」とその前後の作品を中心に紹介し、報道写真家としてだけでなく芸術家としてのスミスの姿に光をあて、その作品を新たな視点から再考する機会とします。本展が、スミス作品の新たな魅力を発見する場となり、あわせてスミスが目指した報道と芸術の融合に触れていただければ幸いです。

展示構成と主な出品作品

イントロダクション

第1章 偉大な都市

〈ピッツバーグ〉シリーズ

第2章 ロフトの時代

〈私の窓から時々見ると…〉、〈ロフトから〉、〈ジャズとフォークのミュージシャンたち〉、センター・フォー・クリエイティブ・フォトグラフィー、アリゾナ大学よりデジタル借用したW. ユージン・スミスアーカイブ収蔵資料

第3章 Let Truth Be The Prejudice

〈慈悲の人 シュバイツァー〉シリーズをはじめとした、ロフト時代以前の過去シリーズ

第4章 水俣─報道と芸術の融合

〈水俣〉シリーズ、アイリーン・アーカイブ収蔵資料

左・中央:W. ユージン・スミス 〈私の窓から時々見ると…〉より 1958年 東京都写真美術館蔵 ©1958, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith 右:W. ユージン・スミス 《セルフ・ポートレイト》 1957年頃 ©1957, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith 画像提供: Center for Creative Photography, The University of Arizona: W. Eugene Smith Archive
W. ユージン・スミス 《ゴーグルをはめた鉄鋼労働者》〈ピッツバーグ〉より 1955年 東京都写真美術館 ©1955, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith
中央・右:W. ユージン・スミス 〈屋根裏部屋から〉より 1957-58年頃 東京都写真美術館 ©2026 The Heirs of W. Eugene Smith
W. ユージン・スミス 〈ジャズとフォークのミュージシャンたち〉より 1962年頃 東京都写真美術館 ©1962, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith
W. ユージン・スミス 《無題(水俣湾での漁猟) 》〈水俣〉より 1972年 東京都写真美術館蔵 ©Aileen Mioko Smith
W. ユージン・スミス 《無題(認定患者の遺影を持つ親族たち) 》〈水俣〉より 1972年 東京都写真美術館蔵 ©Aileen Mioko Smith

展覧会のみどころ

1.ロフトの時代に焦点を当てた日本初の展覧会

第二次世界大戦の取材で注目され、その後『ライフ』誌等で数々のフォト・エッセイを発表したユージン・スミス(1918–1978)。晩年に手がけた〈水俣〉シリーズでも広く知られています。本展は、スミスがニューヨーク・マンハッタンの通称「ロフト」で過ごした時期に焦点を当てます。1954年に『ライフ』を離れたスミスは報道写真から距離を置き、巨大都市に向き合った〈ピッツバーグ〉(1955–56年)を撮影した後、1957年からロフトに移り住みました。ジャズ・ミュージシャンや画家、写真家が集ったロフトは、スミスが実験的な撮影や新たな表現を追求した拠点でした。本展では、これまで断片的に扱われてきたロフト期前後の作品群を体系的に提示し、スミスがジャーナリズムの枠を超えて自身の写真表現をいかに拡張したのか、その全体像に迫ります。

2.ロフトで育まれた表現の転換 ― 「記録」から「表現」へ

ロフトでの生活と制作は、スミスの写真観を大きく変えた時期でした。窓から見下ろすマンハッタンの街並みや、芸術家たちの交流など、日常の断片を観察し続けた経験は、スミスの視点を報道的な出来事の「記録」から、時間を超えて本質を浮かび上がらせる芸術的な「表現」へと押し広げました。本展では、センター・フォー・クリエイティブ・フォトグラフィー、アリゾナ大学(Center for Creative Photography)に収蔵されているW. ユージン・スミスアーカイブの資料を元に、当時スミスが書き残した言葉やスケッチ、新聞の切り抜きが貼りめぐらされていたロフトの壁を、ロフトで流れていた音楽とともに展示室に再現し※、スミスの思考の軌跡をたどります。

※アイリーン・美緒子・スミス(アイリーン・アーカイブ)、サム・スティーブンソン(ドキュメンタリー作家)監修

3.ロフトから広がる視線 ― ジャズ、ニューヨーク、スミスが見つめる日常

かつては自ら取材先へ赴いて撮影していたスミスは、ロフトでは窓の外に広がる光景を受動的に見つめ、日々を写し取りました。「第2章 ロフトの時代」では、マンハッタンの街並みを定点的に記録した〈私の窓から時々見ると…(As from My Window)〉や、生活空間を撮影した〈ロフトから(From the Loft)〉など48点で構成します。〈ジャズとフォークのミュージシャンたち(Jazz and Folk Musicians)〉では、セロニアス・モンクなど、ロフトで繰り広げられるジャズ・ミュージシャンたちのセッションを、ブレやボケ、強いコントラストといった実験的手法で捉え、音の躍動や緊張感を視覚的に表現しています。本章では、ロフトで撮影された当時のスミスとアーティストたちの映像も紹介します。

4.スミス自身が構成した展覧会「Let Truth Be The Prejudice」

10年以上におよぶロフトでの制作を経て、スミスはジャーナリズムへと回帰します。自ら企画・構成した回顧展「Let Truth Be The Prejudice」(1971年、ジューイッシュ・ミュージアム、ニューヨーク)は、ジャーナリズムの「真実性」への懐疑と、報道に携わる写真家としての責任を提示した重要な試みでした。写真とテキストを併置する構成により、鑑賞者に深い思索を促すものとなり、スミスはフォト・エッセイの理念を自ら再構築しました。当時展示された約600点のうち約500点を当館が所蔵し、本展ではその一部を再現してスミスの思想の核心に迫ります。

5.〈水俣〉で結実する「報道と芸術の融合」

「Let Truth Be The Prejudice」展を経て、スミスは「報道と芸術表現は本来切り離せない」という自身の写真観をあらためて確信し、〈水俣〉シリーズの制作に取り組みます。本展の第4章では、社会の現実に深く寄り添う報道性と、ロフトで培われた芸術的感性が交差する代表的シリーズ〈水俣〉を紹介します。また、ロフト期晩期からスミスと共に「Let Truth Be The Prejudice」展準備に携わり、スミスと共に水俣を撮影したパートナーであり、本展企画協力者であるアイリーン・美緒子・スミス氏を迎えた全3回のシンポジウムを開催し、作品と背景に多角的に迫ります。

会期中は、シンポジウム(全3回)やギャラリートークなどの関連イベントを開催します。また、W. ユージン・スミスを敬愛するジョニー・デップが自ら製作、主演を務め、日本でも大きな話題となった『MINAMATAーミナマター』を本展会期中(4月下旬~5月初旬予定)に1階ホールで上映します。

開催概要

展覧会名[和] W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代

展覧会名[英] W. Eugene Smith and New York: The Loft Era

会 期  2026年3月17日(火)– 6月7日(日)

主 催  東京都、東京都写真美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)

企 画  室井萌々(東京都写真美術館 学芸員)

会 場  東京都写真美術館 2階展示室

     東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

     Tel 03-3280-0099 URL http://topmuseum.jp

開館時間 10:00 – 18:00(木・金は20:00まで)

休館日  毎週月曜日 ※ただし5月4日(月)は開館、5月7日(木)は休館

観覧料  一般700円(560円)、学生560円(440円)、高校生・65歳以上350円(280円)

     ※( )は有料入場者20名以上の団体、当館映画鑑賞券提示者、各種カード会員割引料金

     ※中学生以下及び障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料

     ※第3水曜日は65歳以上無料

     ※3月17日(火)~4月5日(日)は、ウェルカムユース2026キャンペーンで18歳以下無料

本展はやむを得ない事情により内容を変更する場合があります。

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会社概要

URL
https://www.rekibun.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都千代田区九段北4-1-28  九段ファーストプレイス8階
電話番号
03-6256-9967
代表者名
堤 雅史
上場
未上場
資本金
-
設立
1982年12月