トラック輸送DIは44.1 景況感の厳しさ続くも輸送量は前年の水準を維持、2024年問題への対応続く
トラック輸送業界の最新景況レポート(2024年12月)
建設、運輸、医療などの業種において、これまで猶予されていた時間外労働の上限規制の適用が2024年4月よりスタートし、供給能力やサービスの低下が危惧される、いわゆる「2024年問題」から8カ月余りが経過した。
運送業界においては、2019年度と比較して2024年度は輸送力が14.2%不足するといった試算[1]結果もあることから、輸送能力の低下により「モノが運べなくなる」可能性が強く指摘されていた。加えて、長年続く過当競争による価格転嫁の遅れやしづらさ、燃料価格の高騰、ドライバーの高齢化、小口輸送の増加などによって、トラック輸送事業者を取り巻く環境は厳しくなることが予想されていた。
そこで帝国データバンクでは、トラック輸送業界についてTDB景気動向調査で算出する景況感をはじめとした各種データや取り巻く環境の変化について分析した。
[1] 経済産業省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」(2023年8月)内のNX総合研究所の試算より
<調査結果(要旨)>
-
仕入単価DI69.5、雇用過不足DI66.5 燃料費の高止まりや人手不足の影響が直撃
-
2024年4~8月期の輸送量、前年同期と同水準を維持
[1] 各種DIはそれぞれ0~100までの数値で表す。現在の景況感を示す「景気DI」は50を基準にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味する。「仕入・販売単価DI」および「時間外労働時間DI」は50を基準にそれより上であれば前年同月から「上昇・増加」、下であれば前年同月から「低下・減少」を意味する。「設備投資意欲DI」は50を基準にそれより上であれば前月から「高まった」、下であれば前月から「後退した」を意味する。
「雇用過不足DI(正・非)」は50を基準にそれより上であれば「不足」、下であれば「過剰」を意味する
[2] トラック輸送事業者は、「一般貨物自動車運送」「特定貨物自動車運送」「貨物軽自動車運送」などを含む
※調査機関:株式会社帝国データバンク
仕入単価DI69.5、雇用過不足DI66.5 燃料費の高止まりや人手不足の影響が直撃
TDB景気動向調査で毎月算出している景況感をはじめとする各種DIをみると、2024年11月時点のトラック輸送事業者の景況感を示す景気DIは44.1と全産業の景気DI(44.4)を0.3ポイント下回り、「良い」「悪い」の判断の境目となる50を5ポイント以上、下回る水準だった。
また注目する点として、仕入れ価格の状況を把握する仕入単価DIは69.5、正社員の人手不足状況を表す雇用過不足DI(正)は66.5と高い水準を示しており、燃料価格の高騰やドライバーなどの人手不足の影響が経営を直撃している様子がうかがえた。 一方で、時間外労働時間DIは47.7と前年同月から減少した。
また、厚生労働省による2024年における月間の所定外労働時間[3]をみると、平均27.3時間/月(対象:2024年1~9月)だった。2023年(平均28.7時間/月)と比較すると1時間以上減少しており、直近10年間で最も低い水準となり、法令順守の動きがみられた。
2024年4~8月期の輸送量、前年同期と同水準を維持
輸送量の動向をみると、貨物営業用自動車[4]の輸送量は、2024年4~8月で計10.5億トン。前年同期(計10.3億トン)と比較すると2.0%増加しており、過去5年間で高い水準を維持していた。また、大手3社の宅配貨物の取り扱い個数[5]においても同様の傾向が表れ、2024年4~8月は計19.2億個で前年同期比1.3%増だった。
前述の通り、道路貨物輸送業の時間外労働時間は減少傾向にあるなかでも、輸送量はBtoB、BtoCともに前年度から同水準以上を維持している。人手不足が深刻な状況のなかで、各社が輸送効率の向上に取り組んだことが分かる結果と言えよう。
配送効率向上のための企業の取り組みとして、パレット輸送や中継輸送の実施、車両の大型化や共同配送など輸送システムの見直しなども行われている。さらに、適正な運賃設定が荷主の理解を得て徐々に進んできているといった声も聞かれる。
2024年4月以降、極端な輸送能力の低下には至らず、事前に危惧されていたような輸送力不足に陥ることなく、例年並みの輸送量を維持していることは、トラック運送事業者ならびに荷主企業の努力の結果と言えよう。しかしながら、依然として燃料費の高止まりや深刻な人手不足など業界を取り巻く環境は厳しい。業況改善に向けては、さらなる輸送の効率化や自動化などを推進し、安定的な物流機能の確保に取り組む必要がある。
[3] 厚生労働省「毎日勤労統計調査」より、常用労働者数5人以上の道路貨物運送業を対象
[4] 国土交通省「自動車輸送統計月報」より、貨物営業用自動車の輸送量は、普通車、小型車、特種用途車及び軽自動車を対象
[5]ヤマト運輸の「宅配便」、SGホールディングスの「飛脚宅配便」、日本郵便の「ゆうパック」の合計
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像